開業医へのインタビュー

物件探しから始めて3ヶ月。患者さんのために間に合わせた開業 橋本クリニック(児童精神科、精神科、心療内科) 橋本大彦先生

橋本クリニックは、以前所属していたクリニックの廃院に伴い、急遽開業されたクリニックです。
行き場のない患者さんへの処方期間も考えて、開業までの準備が限られる中、短期間で物件の選定から設計・内装、開業までを約3ヶ月という短期間で成し遂げることができました。

突然の廃院の決定

先生は開業する以前は、クリニックで診療していらっしゃったのですね?

はい。ある大学の事業として「発達センター」が2009年4月に始まり、私がセンター長として運営していました。
そこは、主に成人の発達障害の方のカウンセリングだけを行うことを目的としていましたが、業務の中で処方や診断書作成の必要性が高くなりました。
そこで、2010年5月からクリニックが併設されて、そこの運営と診療もやるようになりました。

センター長であり、クリニックも運営していらっしゃったのに、開業をすることにした理由は何でしょうか?

センター長といっても、実際は名前だけでした。
他に専任で勤めている大学の仕事がありましたので、センターは客員教授で無報酬でした。もともと私が頼まれたのはもっと軽い話でして、そこに至るにはややこしいいきさつがあるのですが、それはともかくとして、センターだけでなくクリニックでも表に出ているのが私で、世間からは私が開業したように見えていたようです。
同窓や旧知の先生方に会うと、「ご開業おめでとうございます!」と言われてしまうくらいでしたから(笑)。

ところが、半年も経たないうちに、そのセンター、クリニックの廃業が決まり、本当に困りました。
もともと受け皿が非常に乏しい分野なので、患者さんが、廃院後の通院先探しに苦労されるのは明らかで、道義的責任を考えると開業を検討せざるを得ないなと思いました。

突然の告知ということだったのでしょうか?

そうですね。翌年(2011年)3月末で切れる賃貸借契約の件で、大学と不動産会社がいろいろ交渉しているんだけれど、難しい状況にあるらしいという話は(2010年)9月末頃に耳に入ってきましたが、私は詳細を知る立場ではありませんでしたから。

それでも万が一廃院になったときを考えて、(2010年)10月下旬には日本政策金融公庫に行って話を聞いています。
このときは融資実行までにかなり時間がかかるということでしたので、自分での開業は断念して先輩の診療所の片隅を使わせてもらうことなどを考えていました。

開業までのタイムリミット ~開業を間に合わせるために~

オクスアイはどのように知ったのですか?

政策金融公庫の話で開業は無理かなと思っていたのですが、他に無担保無保証の開業ローンがあるのかなと検索していたら、偶然オクスアイさんのホームページを見つけたんです。
これが(2010年)11月初旬でしたね。それで、たまたま電話したら、休業日なのに電話口にオクスアイ社長の金村さんが出られてびっくりしたのを覚えています。二日後にはお会いして、喫茶店で簡単なシミュレーションまでやっていただきました。

オクスアイ以外に開業について相談したのでしょうか?

廃院が確定しないうちに、あちこちに相談はできませんでした。
オクスアイさんが、「無理」と言っていれば、他社を当たったか、診療を継続する他の方法を模索していたでしょう。
廃院確定後は、他社に相談する時間的余裕はありませんでした。それに、オクスアイさんからは、(2011年)3月保健診療開始も必ずしも不可能ではないと言われたので、4月開始なら大丈夫だろうと思って全面的に信頼してお任せしてしまいました。

物件を探すところからのスタートはかなり厳しいスケジュールだったのではないでしょうか?

去年(2010年)の11月20日前後だったと思いますが、2011年1月一杯で廃院の方針が伝えられました。そこから具体的な話が始まりました。
1月末に廃院になるとして、最長90日処方の薬が切れる4月には開業する必要がある、それを可能にするようにオクスアイさんが考えたスケジュールに遅れないように物件を決める必要がありました。

これまで通院されていた方の利便性を考えて、物件はそれまでのクリニックのある渋谷駅周辺に絞り、金村さんと一緒に10ヶ所程度の物件を一気に見て回りました。
クリニックとして適した物件であるのはもちろん、再開発の予定の有無など、いろいろな要素を加味して候補を決めて、諸条件を詰めてもらって(2010年)12月下旬に契約を結びました。そのときは、契約書ができるまで、まだかまだかと落ち着きませんでしたが、今思うとこれでも十分早く契約出来たのだろうと思います。

開業の準備はスムーズに進みましたか?

物件の賃貸借契約の内容を詰めるのと並行して設計を進め、内装工事は(2011年)1月中旬から始まって2月上旬には終わり、保健所への届け出などを2月中に済ませ、予定通り4月から保健診療ができました。
結局、物件探し開始から開業届までで、年末年始をはさんできっちり3ヶ月でした。他社と比較した訳ではありませんけど、オクスアイさんにお願いして、結果として大正解だったと思います。

ここまで短期間ができたのは、オクスアイさんがクリニックの設計を自前でやられているというのが大きかったと思います。
自前ということでいえば、(2011年)3月末までの住宅エコポイント制度のせいで、吸音材・断熱材として使うグラスウールが国内で入手できなくなるという問題も生じましたが、JIS規格のものを自社で輸入して対応してくれました。

クリニックをつくっていく中で、気を付けたことはありますか?

物件に関しては、家賃や広さなど基本的な事もありますが、駅からの距離、建物入り口の段差の少なさ、階段でもアクセス可能なフロア、24時間利用可能なビルということでしょうか。
また、発達障害の診療が多いので、心理室と学習支援の部屋を広めに確保しています。
それと、最近のクリニックは内装に凝るところもありますが、このクリニックは私の好みでとてもシンプルにしています。
実は凝る時間もなかったんですが(笑)。

準備途中で起きた3月11日の大震災

開業前に震災がありましたね。開業準備に影響はありませんでしたか?

ハード面はすべて新規に揃えたので、部分的には影響がありました。
(2011年)3月中旬までに納品されるように手配済みだったものは予定通り納品されましたが、震災直後に発注したものの中には4月下旬まで納品されないものもありました。でも、診療所の基本的機能に必要な物品は3月末までに整いました。

大きなトラブルは特になかったということですね?

はい。阪神淡路大震災の被災経験もあり、本棚などの倒壊防止はしっかりしてありましたし。
ただ、ラジオと電池がなくて震災直後の停電時に一人でいた職員が情報難民になるというミスはありましたが・・。

それより、職員も私も、「ちゃんと開業できるのか」という、精神的なプレッシャーを強く感じていたと思います。原発の問題も起きて、何があるかわからないという中でしたから。

停電のおそれもあったので、電子カルテの非常用電源を確保するために、関西にある実家近くのホームセンターで発電機などを買ってきたり、無停電電源装置を手配したり、不測の事態への準備は進めました。

クリニックを経営するということ

開業して2ヶ月が経とうとしていますが、現在のクリニックの状況はどうですか?

相談室の防音パネルを張る作業がようやく済んで、やっと落ち着いた感じです。
前クリニックからの継続も新規初診も、お陰様で今のところ予定通りです。

開業して何か変わったことはありますか?

自分自身の心の持ち様が変わったような気がします。
例えば保険制度について、私と職員の財布に直結するのでかなりシビアな気持ちで見るようになりました。我ながら現金なものです。(笑)

他にも、自分自身で労働基準監督署や職業安定所に行って雇用関係の手続きをしたり、就業規則を作ったり、とやっていると、今更ではありますが、精神科の臨床にほんの少し厚みがでたような気がします。

今後開業する先生方にもしアドバイスをするとすれば、どのようなことがありますか?

私は、予期せぬ開業で時間がなくて全くできなかったのですが、内装などはできるだけショールームに行って、現物を見て納得してから仕様を決めるべきだということです。
たとえば、パーティションの防音仕様について、オクスアイさんがメーカーの営業マンを現場に呼んで私も交えて相談して仕様を決めたのですが、提案されたもので施工したら声が筒抜けで、結局手直しすることになりました。
その際、初めてそのメーカーのショールームに行ったら、いい防音機能を持った製品があって、オクスアイさんと一緒に「なんだあ、こんなのあったんだ」と、顔を見合わせるというようなことがありました。

もう一つは、ある程度の患者さんを引き継げると、精神的にかなり楽になるということです。収入面は当然のこと、事情のわかった方が来てくれることで心の余裕が生まれます。職員も、人となりのわかった人がいいのは当然です。

それと、オクスアイさんにほとんどお任せで進めるのもいいですが、今はネットで簡単に情報が入手できるので、少しは自分で調べて、自分の城らしく作って行くプロセスを楽しむのもいいと思いますね。

インタビューに答えてくださったのは

■橋本クリニック

3階32坪。以前所属していたクリニックの近辺を開業場所として希望し、3ヶ月という非常に短い期間で物件の選定から開業まで至ることができた。

所在地
東京都渋谷区
開業年月
2011 年4 月
科目
児童精神科・精神科・心療内科
開業の特徴
新規開業
ホームページ
橋本クリニックホームページ

■橋本大彦先生プロフィール

1987年
東京大学医学部医学科卒
1994年
与野中央病院常勤医
1997年
東大病院精神神経科教務職員、同助手
2001年
同講師・外来医長
2002年
名古屋大学大学院医学系研究科児童精神医学分野助教授
2003年
同医学部附属病院親と子どもの心療部助教授
2005年
藍野大学医療保健学部作業療法学科教授
2011年
橋本クリニック開設

精神神経学会、生物学的精神医学会、児童青年期精神医学会、神経回路学会などに所属

コンサルタントより一言

先生がご希望する開業時期に間に合うことができ、ほっとしているというのが素直な感想です。
期限がある中で震災も起こり、落ち着かない面もありましたが、まずは先生の新たなスタートにご協力できたことを大変嬉しく感じます。
常に患者さんやスタッフさんの事を考えていらっしゃる思いやりのある先生で、クリニックの経営についてもしっかりとした理念をお持ちです。
今後もますますのご活躍を期待しております。

まずはお気軽にお問い合わせください。