皮膚科クリニックの開業費用と必要な自己資金

皮膚科クリニックの開業費用と必要な自己資金

当社はクリニック開業コンサルティングサービスを提供していますが、近年、皮膚科クリニックを開業したいという医師が増えており、当社でも多数のご相談をいただいています。

皮膚科は心療内科ほどではありませんが、他の診療科目と比べても比較的開業費用が抑えやすい分野です。

この記事では、特に東京都内および近郊での皮膚科開業を検討している医師向けに、実際に必要な費用と自己資金の目安をご紹介します。

最近では、開業のための費用が上がってきていますから、それを考慮した金額を述べたいと思います。

開業費用をどれくらいかけるのかによって、クリニック経営のリスクが大きく左右される場合もあるので、最後までしっかりご覧ください。

東京都内で皮膚科クリニックを開業してやっていけるのか?

東京都内で皮膚科クリニックを開業してやっていけるのか?

最近では、駅前や繁華街を中心として、たくさんのクリニックが乱立している時代です。そういった中で、「クリニック激戦地でも東京都内で皮膚科クリニックをやっていけるのか?」と不安を抱く方も多いかもしれません。

しかし、結論から言えば「やり方次第で可能」です。開業の仕方によっては、低リスクでの開業が可能です。

低リスク開業とは、患者さんを診療して得られる売上高が低くても利益が出るようにすることです。要するに、経費を最小にして利益を増やします。さらに、開業医にだけ利用できる特別な税制を活用します。

特に「ミニマム開業」を実践すれば、経費を抑え、低リスクでの開業が可能になります。加えて、美容皮膚科やアレルギー科も標榜することで、売上の増加が期待できます。

そうすることで、東京都内を含めた近郊都市部の激戦地でも、クリニックの安定経営が可能になります。

低リスク開業は「ミニマム開業」という手法を用いること

低リスク開業は「ミニマム開業」という手法を用いること

低リスク開業をするためには、「ミニマム開業」という方法で開業をします。

「ミニマム開業」は、医師優遇税制(租税特別措置法第26条)を活用し、年間売上高を5,000万円以下に抑えることを前提とした開業手法です。この制度を使えば、売上の約70%が経費として認められます。

これは開業医にだけ認められる特別な税制で、かかる経費を最小にして経営リスクを小さくしつつ、先生の手取り収入を最大化するお得な開業手法です。

医師優遇税制とは、「租税特別措置法第26条」に定められており、年間の売上高(診療報酬の合計)を年間5,000万円以下に抑えることができたら、概算経費と言って「売上高の約70%の経費がかかったと見なす」という制度です。この制度を利用することによって、売上高が5,000万円までであれば、実際の所得税負担が大幅に軽減され、最大で手取り3,000万円の実現も可能です。

5,000万円の売上高と言えば、先生が勤務医の時代に診ていた患者さんの数と比較すると、おおよそ半数です。言い換えれば、「患者さんの数を半分に減らしても十分に利益が得られる」ので、低リスクな開業方法だと言えます。

ミニマム開業での手取り収入の計算例

ミニマム開業での手取り収入の計算例

手取り収入を具体例で計算したいと思います。

仮に年間5,000万円を売り上げた場合、その経費は皮膚科クリニックですと年間1,500万円ほどかかります。医師優遇税制を活用しない場合には、その差額の3,000万円の所得を申告しなくてはなりません。ところが、医師優遇税制を活用すると5,000万円の約70%が経費として認められるわけですから、税務署には「3,500万円かかりました」と申告ができるわけです。

すると、税務署に申告する利益1,500万円に税金がかかり、500万円ほどの税金を支払ったとすると、この分の手取り収入は1,000万円となります。

さらに、実際にかかった経費が1,500万円、申告をするときの概算経費の金額が3,500万円ですから、「その差額の2,000万円を先生の手取り収入として良い」ということになります。

1,000万円と2,000万円を足したおよそ3,000万円が先生の手取り収入となるわけです。

ミニマム開業をするための3つのポイント

ミニマム開業をするための3つのポイント

ミニマム開業をするためのポイントを3つにまとめると、次のようになります。

  1. 1. 売上高を年間5,000万円以下に抑える
  2. 2. 実際の経費をできるだけ抑える
  3. 3. 集患しやすい場所で開業する

売上高を年間5,000万円以下に抑えることは、先ほどご説明したように医師優遇税制を活用するために必要になります。

実際にかかる経費をできるだけ抑えること

「実際にかかる経費をできるだけ抑えること」は、具体的には毎月かかる固定費をできるだけ安く抑えることです。固定費とは、テナントの家賃や人件費といった毎月固定でかかる経費のことです。

経費には固定費と変動費があります。固定費とは、家賃や人件費、電気代、電話代などといった、患者さんの来院数にほぼ関係なく毎月おおよそ一定でかかる費用のことです。変動費とは、患者さんの診療にかかる医薬品や検査といった費用で、患者さんの来院数に比例してかかる費用のことです。

変動費は、患者さんを診療したら必ず必要となる費用ですから、これを削ることはできません。固定費は、できるだけ低く抑えることが低リスク経営のコツです。

集患しやすい場所で開業すること

「集患しやすい場所で開業すること」は、大変重要なポイナントです。経費を抑えるということは、できるだけテナントの家賃を低く抑えることが大切ですから、「坪単価の安いテナントを選ぶことだ」と勘違いされる場合もあります。

ところが、坪単価の安いテナントは、基本的に人通りの少ない場所で集患がしにくいため、「家賃は安いが、患者さんが来ない」ということになり、本末転倒になりかねません。患者さんがあまり来ないクリニックは、これはリスクの高いクリニックと言えます。

テナントの家賃は安い方が良いことは確かではありますが、坪単価で選ぶのではなく、家賃そのもので選ぶべきでしょう。つまり、「坪単価が多少高くても集患しやすい場所で、テナントの坪数をなるべく小さく抑え、家賃の総額をなるべく抑えられるテナントを選ぶこと」です。

小さなテナントを選ぶと医療機器もたくさん置くことができませんから、開業時に導入する医療機器は必要最小限にとどめておくことです。すると、借入金も安く抑えることができるので、返済金額が低くなり、このことからも低リスク開業につながります。

皮膚科クリニックの開業費用

皮膚科クリニックの開業費用(具体的な試算)

ミニマム開業をすることを前提として、皮膚科クリニックの開業費用を算出したいと思います。

1.テナント確保のための費用

ミニマム開業で「なるべく狭いテナントを選ぶ」と言っても、患者さんの診療に必要な機能を考えると20坪程度は必要です。

テナント賃料を坪20,000円/月、共益費を2,000円/月、の20坪程度のテナントを契約しようとすると、保証金を6ヶ月と仮定した場合、テナント契約に必要な資金は下記のようになります。

前家賃:(20,000+2,000円)× 20坪 + 消費税10% = 484,000円(月額賃料)
保証金:20,000 × 20坪 × 6ヶ月 = 2,400,000円
仲介料+礼金:20,000円 × 20坪 + 消費税10% = 440,000円 × 2 = 880,000円
保証会社契約料:賃料1ヶ月分 = 484,000円

概算合計:430万円

2.内装工事費

次にクリニックの内装工事費です。クリニックのテナントは、コンクリートの壁がむき出しになっているスケルトン状態になっていることが多いです。そこに内装工事をして、皮膚科クリニックに仕上げます。

コロナ禍以来原油価格の高騰や諸物価の値上がりに伴い、建築工事全般の価格が以前の水準から見ると3割以上値上がりして来ました。そのため、20坪程度の内装工事の場合には坪単価は100万円程になることを想定しておく必要があります。

坪単価100万円 × 20坪 + 消費税10% = 2,200万円
防災工事・その他の予備費 = 200万円

概算合計:2,400万円

3.医療機器購入費用

クリニックを開業するときに、内診台やレーザー治療機、電子カルテといった医療機器等を購入します。皮膚科クリニックでは、選定するレーザー治療機等の機種によって購入価格に大きな差が出ます。できれば、格安で購入ができる新古品や中古品を購入できれば理想的です。

概算:1,600万円

ミニマム開業では、大がかりな医療機器は購入しないで、必要性を感じてから導入を検討されることをおすすめします。

4.什器備品・看板工事・開業準備その他の費用

内装工事とは別に、机や椅子・ソファーや収納棚などの家具類を購入したり、看板を設置したり、開業のお知らせをするチラシを作成したり、ホームページの製作も必要になります。そういった諸々の開業準備費用がかかります。

概算:500万円

5.運転資金

運転資金は、クリニックを開業したばかりの時期は患者さんが少ないので、少しずつ患者さんの数が増えて、損益がプラスになるまで、お家賃や人件費などを払い続ける必要があります。そのための運転資金を用意しておきます。

概算:1,500万円

6.開業コンサルタントの費用

開業の準備は、先生お一人では難しいため、開業コンサルタントの支援を受けることになります。ミニマム開業では、経験豊富な開業コンサルタントに相談することをおすすめします。

そのような専門のコンサルタントに依頼すると、ある程度の費用はかかりますが、大きな損失を事前に防いだり、事業計画のシミュレーションを何度も行ったりして、経営リスクを下げるアドバイスができます。そのように費用以上の効果が得られるので、「専門家に依頼してよかった」と思われることでしょう。

当社の開業サポート業務 一括料金:160万円(税別)

当社の開業コンサルティングは、開業後も無料で経営のアドバイスをしていますから、安心してご依頼いただけます。

テナント確保のための費用から開業コンサルタントの費用まで、これら費用の総合計は、約6,600万円となります。これらの費用は、基本的に金融機関からの借入金で賄います。

自己資金をいくら準備しておくべきか?

自己資金をいくら準備しておくべきか?

クリニックの開業方法をネット検索で調べていると、「自己資金は必要ない」と書かれている記事もあります。それは一面では事実でもありますが、当社では「ある程度の自己資金を貯めておいてください」とアドバイスしています。

条件の良いテナント物件を借りるために自己資金が必要

自己資金を貯める最大の理由は、「条件の良いテナント物件をタイミングよく借りるため」です。

開業医を目指した医師がまず行うことは、開業コンサルタントに相談することですが、具体的な開業準備に入る段階でテナント物件を探します。テナント物件探しでは、先ほどご説明したようにミニマム開業に適した物件を見つけることです。

ミニマム開業に適した物件に出会うのは、運やタイミングもありますが、理想的な物件を見つけたときはすぐに申し込みをすることが大切です。なぜなら、ミニマム開業に適した物件は、他の人も探していることが多いためです。

テナント契約は、先に入居申込書を出した人が、大家さんと交渉する権利があるわけです。そして、大家さんと契約条件についての合意ができたら契約の締結ということになりますが、その際には契約金の支払いの為の現金が必要となります。

先ほど、クリニックの開業費用の中に「1.テナント確保のための費用」という項目があり、そこでは概算合計:430万円という金額を試算しました。この金額を自己資金ですぐに支払える人が、テナント契約をすることができるわけです。

これは大家さんの立場に立てばわかることです。クリニックに入居してもらえると、安定的な収益になりやすいので、大家さんとしては「クリニックに入ってもらいたい」と考えますが、契約金の支払いを直ぐに済ませてくれる人を信頼します。

借入金でテナント確保のための費用を払えないのか?

「借入金でテナント確保のための費用を払えないのか?」とお考えの先生もいらっしゃいますが、実は難しいです。その理由は、金融機関からの融資は、申し込みから融資の実行までに3ヶ月くらいの時間がかかってしまうからです。

金融機関に融資をお願いする場合、皮膚科クリニックの事業計画を立てて、その書類を提出しますが、それと同時に融資の審査を受ける為の各種の書類や設備投資の見積もりも出さないといけません。

クリニックの内装工事や医療機器・看板工事や院内の家具なども含めて、設備投資として融資を受ける全ての見積もりも作成しないと、事業計画が立てられないからです。

そういったことで、テナント確保のための費用は自己資金として貯金しておく必要があります。

自己資金はいくらあれば良い?

当社の今までの経験からすると、ミニマム開業をする場合には、テナント契約をする資金としては500万円ほどあれば良いのですが、テナントによっては契約金が500万円を超える場合もありますので、当社では最低でも500万円、可能であれば1,000万円を用意しておくことを推奨しています。

もしミニマム開業ではなくて、一般的な皮膚科クリニックを開業したい場合であれば、自己資金は2,000万円ほどあれば余裕を持って開業準備にかかれます。

以上、皮膚科クリニックの開業費用と準備すべき自己資金について、ミニマム開業を想定して具体的に算出いたしました。開業費用の総合計は、およそ6,600万円、このうち自己資金は500万円ということでした。

当社は、低リスク開業やミニマム開業に強みのあるクリニック開業コンサルティングを行っています。東京都内やその近辺でのミニマム開業の実績は、随一であることを自負しております。

開業医となり、東京で皮膚科クリニックを低リスクで開業したいとお考えの先生は、当社の無料オンラインセミナー&個別相談会にご参加ください。セミナーでは、ミニマム開業の概要を解説しつつ、先生がどれくらいの手取り収入になりそうか、資金計画のシミュレーションも無料で行っています。また、先生の開業に対するご相談にも対応しています。

先生からのご連絡をお待ちしております。

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