【精神科の先生必見】精神科クリニックのミニマム開業を徹底解説
クリニックの開業方法には、従来型の一般的な開業方法と「ミニマム開業」と言われる開業方法がります。勤務医として精神科の医師をされている先生が、将来独立して精神科クリニックを開業するときは、ぜひミニマム開業での開業スタイルをおすすめします。
ミニマム開業をしたときのメリットは、東京都の様な精神科クリニック激戦地で、売上高が低くても黒字化しやすいということです。そのため、次のような特長があります。
- 経営リスクが低い
- 診療業務に集中しやすい
- 先生の手取り年収を大幅に増やすことができる
この記事では、これから独立開業をお考えの精神科の先生に向けて、ミニマム開業の魅力や方法、手取り年収のシミュレーション、どういった先生がミニマム開業を選ぶのか、ミニマム開業で失敗しないためのポイントなどをお伝えしたいと思います。
ミニマム開業だと経営リスクが下がる理由

クリニックを開業したときに、最大の経営リスクとはなんでしょうか?
それは、売上高が増えなくて、経費が売上高よりも多い状態が続いて、経営が赤字になってしまうことです。経営が赤字であったとしても、家賃やお給料に払うお金を用意できたら、クリニックは倒産しませんが、赤字の期間が長く続くと、やがて倒産は時間の問題となります。
利益の計算式は、次の通りです。
利益 = 売上高 - 費用
売上高を増やす方法

利益を増やすためには、売上高を増やし、費用を下げることです。精神科クリニックを都内で開業するとなると、どこで開業しても、ライバルとなる精神科クリニックが近くにたくさんあるので、ほとんどの場所は激戦地となります。激戦地では、患者さんの取り合いがあります。ですから、売上高を大幅に増やそうとしても、必然的に難しくなります。
そうした事から、郊外の精神科クリニックが無い場所での開業をお考えになる先生もいます。ところが、郊外では人口密度が低いために来院される患者さんの数がかなり少なくなります。そうした理由から、精神科クリニックは都心部の繁華街などに近い人通りの多い場所で開業するのが集患に有利となるのです。
このように集患のしやすい場所のことを、「立地条件の良い場所」といいます。
後ほど、精神科クリニックの立地条件について、詳しくご説明いたします。
費用を減らす方法

利益を増やすもう一つの方法は、費用を減らすことです。クリニックを開業するための費用には、初期費用とランニングコストがあります。初期費用の主なものは、テナントとの契約のための費用や内装工事の費用があります。
ところが初期費用をむやみに減らすことは、売上を上げにくいクリニックを作ってしまいかねませんのでよく気を付けることが必要です。利益を出すために下げるべき費用は、ランニングコストでありその中でも、固定費のことです。固定費とは、固定化された費用、つまり毎月同程度かかる費用のことです。主な固定費には、テナントの家賃、人件費、電カルその他の維持費用、水道光熱費、通信費などがあります。
精神科クリニックにかかる固定費の中で、もっとも大きな金額となるものは、テナントの家賃と人件費です。電子カルテの維持費用、水道光熱費、通信費などもある程度はかかりますが、これらの費用はあまり下げることができません。ミニマム開業では、主にテナントの家賃と人件費を、できるだけミニマムに抑えることが最大のポイントとなります。
固定費を超える売上高を生み出す
費用には、固定費の他にも変動費があります。変動費とは、患者さんを診るときにかかる費用のことで、医療用の消耗品や医薬品、検査の外注費などです。患者さんの数に応じて費用がかかるので、「変動費」と言われています。
利益 = 売上高 - (固定費 + 変動費)
一般的なクリニックでは、「粗利益 = 売上高 - 変動費」ですが、患者さんを診るための変動費がかかります。それに対して、精神科クリニックでは診療材料や医薬品などの変動費がほとんどかかりませんから、「粗利益 ≒ 売上高」となります。このことは、他の診療科目の先生からすると、かなりうらやましいことです。
さて、変動費がほぼゼロですから、次の式が成り立ちます。
利益 = 売上高 - 固定費
利益をプラスにするためには、毎月かかる固定費以上に売上高を増やせば、経営は黒字になります。患者さんを診療して、固定費よりも多く売上高を得ることができれば、その分だけ利益が増えます。
固定費が低いと低リスク

この式で、ミニマム開業の魅力をすでにお気づきの先生もいらっしゃることでしょう。ミニマム開業をすることで、固定費を低く抑えることができたら、売上高が低くても、多くの利益が得られやすいことを意味しています。
つまり、競合となる精神科クリニックがたくさんあったとしても、他の精神科クリニックでは、すでに高いテナントの家賃や人件費を払っているところもありますので、ミニマム開業をした先生の方が、安定経営を早期に達成しやすくなります。
ミニマム開業で開業医の手取り年収がアップする仕組み
ミニマム開業では、低リスクなだけがメリットではありません。先生の手取り年収を大幅に増やすことができるのです。
一般的な開業方法での手取り年収シミュレーション
一般的な開業方法での先生の手取り年収は、利益から税金や社会保険料等を引いた金額になります。
手取り年収 = 利益 - 税金等
例えば、売上高が5,000万円、経費が1,500万円かかったとしたら、利益が3,500万円となります。すると税金等が1,500万円になるので、手取り年収は2,000万円ほどになります。手取り年収が2,000万円であれば、「ミニマム開業しないで、もっと大々的に大きなクリニックを開業しておくべきだった」と考えるかもしれません。また、リスクを取って経営しなくても、勤務医を続けていた方が良いと思う先生もいらっしゃることでしょう。
ミニマム開業での手取り年収シミュレーション

ところが、年間の診療報酬の上限を5,000万円以下に抑えることで、医師優遇税制を活用することができます。その税制は、租税特別措置法第26条に記載されています。
この法律の内容を要約すると、「年間の診療報酬が5,000万円以下の場合は、税務申告のときに経費の金額をいちいち計算しなくても、売上高の約70%を経費として計上しても良く、さらに実際にかかった経費との差額を手取り収入として良い」というものです。
医師優遇税制を活用したら、例えば5,000万円の売上高だったとすると、経費は約70%ですから、「3,500万円かかりました」と申告することができます。税務署に申告する先生の年収は、1,500万円です。すると先生の手取り収入は1,000万円程になります。これが第一の手取りになります。
申告では「3,500万円かかりました」と申告しますが、実際には1,500万円しか経費がかかっていなかったとします。すると、その差額の2,000万円は、「そのまま無税で先生の手取り収入にして良い」という法律ですから、これが第二の手取りになります。
第一の手取りと第二の手取りを合算すると、先生の手取り年収はおよそ3,000万円になります。領収書をいちいち経理処理しなくても良くなり、税理士さんと顧問契約しなくても良くなりますので、そうした費用もかかりませんから、先生の手取り年収はさらに100万円ほど増える事になります。
一般的な税務申告をすると、手取り年収が2,000万円ですが、医師優遇税制を活用すると3,000万円になります。同じ売上高であっても、医師優遇税制を活用するかどうかで、1,000万円も差が出る場合があります。
手取り年収を3,000万円以上得たい場合
手取り年収を3,000万円以上得たい場合は、医師優遇税制が受けられませんから、かなりの人数の患者さんを診ることになります。
手取り年収3,000万円以上を得るための利益は5,000万円以上になります。それを得るための売上高は、8,000万円~1億円ほどになりますので、何人もの非常勤の先生を雇って、大規模な経営をすることになります。
そのような経営では、経営と集患のバランスが大切なことはもちろんのこと、すでに開業されている精神科クリニックとの差別化ができて、たくさん集患ができるような立地条件の良さや仕組み、強みなどが必要となります。
精神科クリニックを開業するならミニマム開業をおすすめする理由
このように売上高が低くても、たくさんの手取り年収を得られるミニマム開業は、精神科クリニックにとても相性が良いのです。精神科クリニックの開業を目指される先生に、ミニマム開業をおすすめする理由を、もう一度ご説明したいと思います。
精神科クリニックの競争が激化している都心が有利

山手線の駅前では、企業が多い駅を中心に精神科クリニックが増えています。まだ山手線の駅前に精神科クリニックが少ないときから開業している先生は、広いテナントを借りて、常勤のスタッフさんを雇って、高い固定費を払っているところが多くあります。
そういった精神科クリニックは、さきほど固定費と経営リスクのところでご説明した通り、患者さんがたくさん来なければ赤字になってしまいます。そのため、周りにたくさんの精神科クリニックができると経営が厳しくなってきます。すでに赤字ギリギリで経営しているクリニックも多いかもしれません。
周りに精神科クリニックが出来て、患者さんの数が減ってきたら、「小さなテナントに引っ越しをしたらいいのでは?」と考えるかもしれませんが、一度開業してしまったら引っ越しは難しいです。その理由は、出ていくのにもテナントをスケルトン状態に戻すのにお金がかかり、新しく入るところにも契約と工事の費用が掛かるので、二重で費用がかかってしまいます。
精神科クリニックが生き残るための要点は経費削減と言っても良いのですが、すでに開業済みのクリニックでは、テナントの家賃を下げることや、スタッフさんを解雇するなどのダウンサイジングはなかなかできるものではありません。
そういったことから、ミニマム開業で精神科クリニックを開業するところは、患者さんの来院数が少なくても早期に黒字化ができるので、既存のクリニックよりも有利な経営ができる様になります。
精神科クリニックとミニマム開業の相性の良さ
ミニマム開業の基本は、固定費をできるだけ安く抑えることです。安く抑えたら抑えただけ、先生の手取り年収が増えます。
精神科クリニックでは、医療機器をほとんど導入しなくても診療ができます。レントゲンなどといった大掛かりな医療機器は必要ありません。診療室と受付と待合室があればクリニックとして成り立ちます。そうしたことから、他の診療科目と比べると小さな面積のテナント物件でも精神科クリニックの開業が可能です。
面積が小さいと、それだけ家賃も安くなります。ですから、集患がしやすい場所でテナントの坪単価が高くても、お家賃が割安になり、集患のしやすさと固定費の安さが両立できる事になります。
どういった精神科の医師がミニマム開業を選んでいるのか?

精神科の医師がミニマム開業を選ぶ理由としては、クリニックの経営リスクを下げたいという理由はもちろんのこと、次のようなケースも多いです。
- 勤務医は休みが取れないので体力が持つか心配
- 子育てとキャリアを両立させたい
- 研究活動の時間をつくりたい
ミニマム開業をすることで、患者さんの来院数が少なくても黒字になるので、先生のご都合に合わせて休みを取ることもできます。その場合は、患者さんの診察を完全な予約制にしておくと良いでしょう。精神科クリニックでは完全予約での診療が可能です。
お子様の子育ての時間を取りたい場合には、学校行事の予定があらかじめわかっていたら、その日の診療を予約できないように設定しておけば良いわけです。勤務医では緊急で呼び出される先生もいらっしゃいますが、開業医ではそのようなことは起こらないようにできます。
ミニマム開業で精神科クリニックを開業するときの成功3ポイント

ミニマム開業で精神科クリニックを開業するときの成功3ポイントをご説明いたします。この3ポイントをすべて満たすことが、ミニマム開業成功の秘訣です。
- 1.開業場所は集患しやすい場所を選ぶこと
- 2.採血などは先生ができるようにしておくこと
- 3.ミニマム開業に精通した開業コンサルタントに依頼すること
1.開業場所は集患しやすい場所を選ぶこと

クリニックの安定経営の基本は、集患ができることです。集患がしやすい場所は、駅前や人通りの多い繁華街です。精神科クリニックは、人通りの多い場所にあれば患者さんが入りにくい場合もあるので、表通りの横くらいに出入り口のあるビルで開業した方が良い場合もあります。
ともあれ、基本的に集患がしやすい場所は人通りが多い場所で、看板が目立つ場所に設置できる場所です。そういった場所は、テナントの坪単価が高くなりますが、多少経費がかかったとしても、その経費以上に利益が出るのであれば、そうした費用は問題にならないことは、経営者を目指される先生であればご理解いただけることと思います。
さて、ここで家賃は、「坪単価×坪数」です。ミニマム開業では、坪数を小さいテナントを選ぶわけですから、家賃の総額は安くなります。そして、精神科クリニックは医療機器などを設置するスペースも必要ありませんので、比較的安い家賃で集患もしやすいテナントを選ぶことができます。
2.採血などは先生ができるようにしておくこと

固定費で2番目に大きなものは人件費です。人件費は、基本的に「お給料×人数」です。お給料を下げてしまうと、良いスタッフさんを雇えなくなるので、お給料を少し高めにして人数を少なくすることを基本とお考えください。
スタッフさんには、看護師さんのように専門性の高い業務を行ってくれるスタッフさんと、受付スタッフさんのように、一般的な業務を担うスタッフさんがいます。精神科クリニックでは、採血を担当してもらいたい為に看護師さんを雇うことが多いです。看護師さんは、受付スタッフさんと比べたらお給料が高くなるので、できれば受付スタッフさんだけにしたいものです。
そこで、独立開業をお考えになられた先生は、ご自身で採血ができるように練習なさってください。先生ご自身が採血できると、看護師さんを雇う必要がなくなり、固定費を減らすことができて、看護師雇用の悩みも軽減されます。
3.ミニマム開業に精通した開業コンサルタントに依頼すること

クリニックの開業を考えた時には、開業コンサルタントに支援を依頼することと思います。先生お一人で開業準備をすることは、ほぼ不可能に近いです。
開業コンサルタントと言っても、当社のような開業コンサルティングを専門としている企業もあれば、医薬品卸や医療機器メーカーの担当者が開業コンサルタントを名乗っていることもあります。
後者のようなコンサルタントに依頼すると、精神科クリニックにはあまり必要のない医薬品や医療機器を買わされることになるだけでなく、ミニマム開業のことを知らない人が多いので、開業したとしてもその後の経営がうまくいかないことも多くなります。そういった不信感から、開業準備の途中で当社にご相談いただく先生もいらっしゃるくらいです。
ミニマム開業で大事なことは、入念にシミュレーションして事業計画を立てることです。ミニマム開業での資金調達もノウハウが必要となります。ですから、経験の少ない開業コンサルタントでは力量不足になることが多いです。そして、開業コンサルタントの力量不足は、赤字経営に直結するのでご注意ください。
ここまでご説明してきたミニマム開業ですが、成功のポイントをしっかり把握し、ミニマム開業の経験が豊富なコンサルタントに依頼することをおすすめします。
当社の開業コンサルティングは、東京やその周辺都市での開業に限定していますが、ミニマム開業で精神科クリニックの開業支援を行い、すべて黒字にしてきた実績があります。先生の悩み事の相談から事業計画や手取り年収のシミュレーション、開業候補地の現地調査、資金調達、内装工事、スタッフの面接や採用などもご支援いたします。
先生が開業したいと思われるご事情を考慮し、先生にとって最適な開業を、ワンストップでご支援いたします。
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