近隣に競合クリニックができても黒字を出し続けられるクリニック開業方法

近隣に競合クリニックができても黒字を出し続けられるクリニック開業方法

クリニックが黒字になるかどうかは、患者さんの来院数にかかっています。来院数がどれくらいになるかの予測は、地域に患者さんの需要があるか、競合しそうなクリニックが存在するかどうかを調べて行います。もし同じ診療科目のクリニックが存在していたら、診療圏が被らないように少し距離を取って開業をし、お互いに利益の取り合いをしないようにすることが基本です。

ところが、こちらが新規開業をした後は、別に新規開業をしてくるクリニックをコントロールすることはできません。場合によっては、目と鼻の先に同じ診療科目のクリニックが新規開業をしてくることもあります。その典型例が歯科医院と言えますが、最近では、チェーン展開しているクリニックなどが同様に増えてきました。

このように、近隣に競合クリニックができてしまったら、基本的に患者さんの取り合いが始まり、その勝敗は後から開業したクリニックの方が有利になります。なぜなら、新規開業する医師は、開業コンサルタントのアドバイスを受けて地域の既存クリニックの経営を分析し、どのようにしたら自院が繁盛するかを検討して事業計画を立てているからです。

近隣に競合クリニックが増えてしまったら、古くから開業しているクリニックは患者が流れてしまい、たいてい赤字に陥ってしまうため、何らかの対策が求められます。しかし、対策が難しい場合が多いです。なぜなら、その対策は開業前に検討しておかなければならないことだからです。

このコラムでは、近隣に同じ診療科目のクリニックができて、患者さんの数が減ってしまったとしても、黒字を出し続けられるクリニックの開業方法を解説します。

患者数が半減したら利益はどれくらい減る?

患者数が半減したら利益はどれくらい減る?

まずは、近隣に競合クリニックが出現して、自院の患者数が半減したら、利益はどれくらい減るのかを試算したいと思います。直感的には、売上高が半減するのだから、利益も半減するように思われたかもしれませんが、実は利益は激減してしまいます。

利益の計算式

利益は、売上高から経費を引いたものです。売上高とは保険診療報酬や自費診療等の合計です。患者さん一人ひとりを診療して、その合計金額が売上高となります。その売上高から経費を賄い、利益がプラスとなれば黒字、マイナスとなれば赤字です。

経費には勘定科目がいろいろとありますが、大別すると「固定費」と「変動費」に分けられます。固定費とは、毎月もしくは毎年といった具合に定期的に固定でかかる経費のことで、テナント賃料、スタッフさんの給料や社会保険料、水道光熱費といったものです。固定費は、患者さんがまったく来院してくれなくても毎月固定でかかってしまう金額です。

変動費とは、患者さんの診療をしたときにかかる経費のことです。例えば、診療材料などのディスポ製品であったり血液検査などの外注費などが変動費になります。したがって患者さんが来なければ、費用は発生しません。すると、利益は、次の式になります。

利益=売上高-(固定費+変動費)

損益分岐点の詳細は「クリニックを開業する時の損益分岐点の計算方法と低リスク経営」をご参照ください。

売上高が半減したときの利益

売上高が年間1億円のクリニックで試算したいと思います。年間1億円の売上高のクリニックでは、固定費はおおよそ5,000万円、変動費はおおよそ1,000万円です。そのときの利益は、

利益=1億円-(5,000万円+1,000万円)=4,000万円

売上高が半減すると5,000万円、固定費は患者さんの来院数に関係なく同じ金額のままですから5,000万円、変動費は患者さんの来院数が半減するので500万円です。そのときの利益は、

利益=5,000万円-(5,000万円+500万円)=△500万円

ここで「△」はマイナスを意味します。売上高が1億円のときの利益は4,000万円でしたが、売上高が半減すると利益は2,000万円に半減するのではなく、△500万円と実に4,500万円も減ってしまいました。

これと同じように多くの固定費がかかっているクリニックは、近隣に同じ診療科の競合クリニックが出現し、患者さんの来院数が半減してしまったら、クリニックはたちまち赤字に陥ってしまうことになります。

黒字体質のクリニックを開業する方法

患者さんの数が減ってしまっても黒字を維持する事ができるクリニックを開業するためには、どのように事業計画を立てたらいいのか、その考え方を説明します。その前に、損益分岐点売上高について解説します。

損益分岐点売上高の図と計算式

患者さんが来院してくれて、売上高から変動費を引いた利益が積み重なり、その利益が固定費を上回るようになれば、黒字になります。ちなみに、売上高から変動費を引いた利益のことを限界利益といい、限界利益が増えていって固定費と同じ金額に達したところを損益分岐点といいます。図にすると、次のようになります。

クリニックの損益分岐点

損益分岐点売上高の計算式は、

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

例えば、売上高が年間1億円のクリニックがあったとします。そのときの固定費が年間5,000万円、変動費率が10%だとすると、損益分岐点売上高は5,560万円です。年間5,560万円を売り上げることができたら、クリニックが黒字になります。

損益分岐点の図をご覧ください。損益分岐点売上高が低ければ、少ない患者数でも黒字になります。反対に、損益分岐点売上高が高いと多くの患者さんを診療しないと黒字になりません。損益分岐点売上高が低いクリニックが、黒字体質のクリニックであると言えます。

黒字体質のクリニック開業を計画する方法

黒字体質のクリニック開業を計画する方法はコスト削減

黒字体質のクリニック開業を計画する方法は、損益分岐点売上高を下げることです。損益分岐点売上高の計算式をご覧ください。損的分岐点売上高を下げる方法は、分子の固定費を低く抑えることと、分母の変動費率(変動費/売上高)を小さくすることです。変動費率を下げることは、仕入先を変えることが基本となりますが、それでも大幅に下げることはできません。ポイントは固定費です。

クリニックの固定費として大きな金額がかかるものは、

  • テナント賃料
  • スタッフの給料

この2点です。テナント賃料は、入居時に決まってしまいます。入居してしまったら上がることはあっても、転居しない限り賃料を下げることはできません。そのため、テナント物件選びは慎重に行う必要があります。必要以上に広いテナントを借りてしまったら、競合クリニックが出現したときに後悔することになりかねません。テナント物件の選び方については後述します。

スタッフの給料を下げる方法は、診療時間を日中にシフトして子育て中の方が働きやすい職場環境にして、扶養控除の範囲内でパート勤務してくれるスタッフさんを中心にすることです。出来れば先生が採血や医療機器の操作もできる様になれば、時給の高い看護師さんを雇う必要もなくなります。そして、予約制にする事で業務量を均一化すれば、業務量に応じたムダのないスタッフの配置を実現する事ができます。

先生によっては、高額な医療機器を導入したいと考えている方もいらっしゃいますが、高額な医療機器は必要最小限に留めておき、必要性を感じてから導入を検討するようにします。開業当初からいくつもの高額な医療機器を導入してしまうと、それだけ借入金の返済額が大きくなり、医療機器を設置するスペースが必要になることからテナント賃料も高くなり、医療機器を操作する看護師さんを雇うことになります。そうなると、固定費が増大して、赤字体質に陥りやすいクリニックになってしまいます。

もうお分かりのように、いったん開業をしてしまったら黒字体質のクリニックに転換することは大変に難しいです。ですから、開業前にどのような事業計画を立てるのかが、開業の成功にはとても大切なのです。

立地条件の良いテナント物件の選び方

立地条件の良いテナント物件の選び方

クリニックにとって立地条件の良い場所とは、次の2つを満たすことです。

  • 集患がしやすい
  • 事業規模に合った広さ

絶対条件は集患ができること

テナントの間違った選び方は、「坪単価の安いという判断基準でテナントを選ぶこと」です。坪単価の安いところを選ぶことは必ずしも悪いとは言えませんが、坪単価の安さだけで決めてはいけません。その理由は、「坪単価の安い物件は、集患が難しい場所である可能性が高いため」です。

クリニックの収入源はすべて患者の診察から得られます。いくら坪単価の安いテナントに入居したとしても、患者さんの来院数が増えなければ、クリニックが黒字化して利益を出すことができません。

坪単価の高さ、安さは何で決まるのかは、需要と供給で決まります。空きテナントを探している人が多く、空きテナントが少ない場合は、少々高くても入居したいという人が多くなります。そのようにしてテナントの坪単価が決まります。そして、多くの起業家が空きテナントを探す場所と言えば、繁華街などの人通りが多く、集客がしやすい場所です。そういった場所は、クリニックに限らず空きテナントを探している人が多くなり、坪単価が高くなります。

ですが、クリニックは集患ができないと維持できませんから、多少坪単価が高くても集客ができることを優先すべきなのです。

坪単価が高くても坪数が小さいと賃料を抑えられる

坪単価の高い場所は集患しやすいのですが、テナント賃料が高くなりがちです。固定費が高くなればそれだけ高リスクな開業になるため、テナント賃料は安く抑えたいです。そこで、できるだけ小さな面積のテナントを選ぶことです。賃料の計算式は、

賃料=坪単価×面積

つまり、面積が小さければ毎月の賃料を抑えることができ、しかも集患がしやすい場所なので、安定経営を目指すクリニックにとって優良物件となります。そのような物件の良し悪しの判断は、当社のような開業コンサルタントにご相談ください。

どのようにしたらパートスタッフのみで運営ができるのか?

どのようにしたらパートスタッフのみで運営ができるのか?

クリニックの固定費で多くかかる費用にスタッフさんの給料があります。給料を下げる方法は、安い給料を支給するようにするのではなく、スタッフさんの人数をできるだけ少なく運営できるようにすることと、できるだけ常勤スタッフを雇わずにパートスタッフのみで運営することです。

給料を低く設定しない理由は、スタッフさんの採用のときに優秀なスタッフの応募を増やすためです。

パートスタッフさんだけで運営する方法の一つは、診療時間を10:00~16:00くらいの間に設定することです。すると、子育て中のママさんをパートスタッフとして採用しやすいからです。

「こんなに短い診療時間だと利益が出ないのではないだろうか?」と思われるかもしれません。ところが、「ミニマム開業」と言われる極力固定費を抑えた手法で開業することで、たくさんの手取り収入を得ることができるようになります。

ミニマム開業については、「ミニマム開業とは?メリット・デメリット」をご覧ください。

どのような事業計画を立てるべきか?

どのような事業計画を立てるべきか?

ここまで述べてきたことをまとめると、黒字体質のクリニックを開業するためのポイントは次のようになります。

  • テナントは集患がしやすい場所で坪数の小さな物件を選ぶ
  • スタッフはできるだけパートのみにする
  • 高額な医療機器は必要性を感じてから導入を検討する

これらのことを取り入れた事業計画であれば、近隣に競合クリニックができて患者さんの数が一時的に減ったとしても、黒字化を維持しやすいです。2026年4月から始まった開業規制とは関係の無い地域で開業する場合でも、「競合クリニックが少ないから安心だ」と考えず、開業前の事業計画を立てるときから考えておく事が大切です。

すでに開業をしてしまって赤字になってしまったクリニックは、まずは経費削減を考えることが先決です。経費削減方法については、平井公認会計士事務所のコラム「クリニック経営が赤字のときの対策(経費削減編)」が参考になります。

さて、これから開業をしようと考えている先生で、ご自身の診療科目で、安定的で早期に黒字化しやすい方法や、低リスクで多くの手取りを得られる開業方法について知りたい先生は、当社にて定期的にオンライン開催している、クリニック開業セミナー&個別相談会(無料)にご参加ください。

先生からのご連絡をお待ちしています。

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