開業に失敗する歯科医院の特徴は?成功のためのポイントも徹底解説

勤務医としてしばらく働いたのちに歯科医院を開業する歯科医師は多くいますが、歯科医院を取り巻く経営環境は年々厳しくなっています。開業に失敗して廃業する歯科医院の数は増加傾向にあることから、開業をためらう歯科医もいるでしょう。

では、開業に失敗する歯科医院にはどのような特徴があるのでしょうか。今回の記事は、歯科医院の基本情報から、開業に失敗する歯科医院の特徴を具体的に解説します。

1.歯科医院を取り巻く環境

近年、歯科医院の数はコンビニの数より多くなってきています。
都市部である東京や大阪などは特に歯科医院の数が多く、競争が激化しています。

これに伴い、開業に失敗する歯科医院の数も年々増加傾向にあり、このままでは歯科医師を目指す方の数も減少する可能性があります。
ここでは、医院数と開業率の観点から歯科医院を取り巻く環境についてお伝えします。

1-1.歯科医院の数

平成28年度に発表された厚生労働省の調査結果によると、日本全国の歯科医院の数は約6万8,000件にのぼります。
同時期のコンビニの数が各社合計で約5万7,000件であることから、歯科医院の数の方がコンビニの数よりも約1万件多いことがわかります。
実際に、東京や大阪などの大都市においては、街中を数十メートル歩くだけで何度も歯科医院の看板を目にすることがあります。

歯の治療は重要であるため、歯科医院の数が多いことは患者側にメリットがあります。
しかしあまりに数が増えると、経営がうまくいかない歯科医院は廃業を余儀なくされる可能性が出てくるでしょう。

出典サイト:厚生労働省「平成28年(2016)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/16/dl/gaikyo.pdf

1-2.歯科医師の開業率

同じく平成28年度に発表された厚生労働省の調査結果によると、歯科医師法にもとづき届け出をした歯科医師の数は全国で104,533人です。
そのうち診療所開設者数(法人の代表者数を含む)は59,482人であるため、歯科医師の約60%が歯科医院を開業していることとなります。

歯科医師の半分以上が自ら歯科医院を開業するか、親の跡を継いで開業医として働いています。
医師の開業率が約30%であることを考慮すると、歯科医師が開業する割合は、医師が開業する割合と比較して倍近くあることがわかります。

2.歯科医師が開業する理由

歯科医師の中で勤務医ではなく開業医になる人が多い理由は、大きく分けて3つあります。

  • 勤務できる職場が少ないため
  • 独立志向の人が多いため
  • 開業医の方が高収入を目指せるため

同じ医療の仕事であっても、通常の医師と歯科医師とでは、仕事の内容だけでなく取り巻く環境も違ってくるようです。
以下、それぞれ具体的に解説します。

2-1.勤務できる職場の数

医師の場合、大学病院や総合病院、クリニックなど勤務できる医療機関の種類が多いです。
保健所や保険会社、製薬会社や老人介護施設など、医療機関以外の場所で働くこともできます。

一方で歯科医師の勤務先は、基本的に歯科医院であることが多く、歯科医院以外の勤務場所は医師に比べて極めて少ないと言う現実があります。
したがって、キャリア形成のために職場を変えるケースが少なく、大学卒業後一度はどこかの歯科医院に勤務するものの、数年後に開業するケースが多いです。

2-2.独立志向

歯科医師の多くは大学の歯学部を卒業すると、いずれかの歯科医院に勤務しながら自分の技術を磨きます。
次第に実力がついてくると、診療の仕方や使っている機材などにこだわりが生まれ、自分が納得のいく診療を追求した結果、開業に至るケースもあります。
独立志向を持った歯科医師が多いといえるでしょう。

2-3.収入の問題

中央社会保険医療協議会が平成29年に発表した医療経済実態調査によると、勤務医の場合の歯科医師の年収は、勤務している病院の規模によっても変わりますが、約598万円です。

歯科医師の収入は、同程度の学歴を持つ会社員の年収と比較すると、決して良いとは言えないでしょう。
また、歯科医師の勤務先はほとんどが小規模な歯科医院であり、年齢に応じた昇給制度が設けられていないことがしばしばあります。
そのため、給与の額に不満をもつ歯科医師も少なくありません。

勤務医に対して、開業医の場合は自分の頑張り次第で収入をあげることができます。
開業医の中には年収2,000万円以上を稼ぐ人もいるため、高収入を目指して開業する場合が多いです。

3.開業に失敗する歯科医院の特徴

平成28年に発表された厚生労働省の調査結果によると、歯科医院の年間開業数が1,720件であるのに対し、廃業数は1,739件と、開業数を若干上回っています。
残念ながら歯科医院の経営に失敗し、その結果廃業に至る数が増えているということです。

ここでは、開業に失敗する歯科医院の特徴をいくつか紹介します。

3-1.経営ノウハウがない

歯科医師は大学の歯学部で6年間専門的な知識を学び、卒業後はいずれかの歯科医院に勤務します。
開業を見越して専門的に経営を学ぶ歯科医はほとんどおらず、歯科医院の経営ノウハウを身につけることがないまま開業に至るケースが多いです。
歯科医院経営は決して容易ではなく、財務の知識やマーケティングの知識、従業員の教育方法などさまざまなノウハウ・スキルが必要です。
たとえ医学的な知識は豊富であったとしても、これらの経営に関するノウハウがなければうまく経営できず、開業しても失敗する可能性が高いでしょう。

3-2.事前調査が不足している

歯科医院の開業を成功に導くためには、事前にさまざまな調査を行う必要があります。
例えば歯科医院を開業する場所に関して、周辺の住民世帯数やライバル医院の動向、1日あたりの通行人の数などをしっかりと調査分析したうえで、決定する必要があります。
飲食店などのお店を新規出店する際には通常行われる現地調査が、歯科医院を開業する場合にはあまりなされていません。
事前の調査不足が歯科医院の開業に失敗する要因ともなっています。

3-3.事業計画書がない

一般的に新しくビジネスを立ちあげる際には、事業計画書を作成します。
ビジネスのコンセプトを練り、来客数を予測し、人件費や設備費用、年間や月間の収支計画を立て、これからの経営の指針にします。
また、金融機関から融資を受ける際には事業計画書が必要になるため、通常は時間をかけて事業計画書を綿密に作成します。

歯科医院を開業するにあたり、この事業計画書をきちんと作成しないまま開業に至るケースが多々あります。
ビジネスの明確な計画を立てないまま過剰な設備投資を行った結果、運転資金が不足して廃業に至るケースもあるため注意が必要です。

4.失敗しないためのポイント

開業に失敗する歯科医院がある一方で、開業に成功して安定した医院経営を行なっている歯科医院も数多く有ります。
歯科医院の経営を上手に行うためには、医療に関する知識以外に押さえるべきいくつかのコツがあります。
ここでは、開業に失敗しないための方法をいくつか紹介します。

4-1.患者との信頼関係

成功している歯科医院は、患者に対して誠実に向き合い、患者からの信頼を集めています。
そのような医院には、考え方を一方的に押し付けず、患者の意思を尊重しながら思いやりを持って接している歯科医師が多いと言えます。
治療の際はきちんと方針を説明し、不安を取り除くことが大切です。

4-2.スタッフとのコミュニケーション

スタッフとのコミュニケーションがきちんと取れており、信頼関係が成立している歯科医院は成功しています。
歯科医院の経営は決して一人ではできません。
開業を成功させるために歯科衛生士や歯科技工士、受付スタッフなど従業員同士で連携を組み、意見や成果が反映されやすい職場を目指しましょう。

4-3.経営者としてのスキル

歯科医師としてのスキルを磨き、高度な専門性を身につけることはもちろん基本です。
しかし、歯科医院の経営を成功させるためには、経営に必要な知識を学び経営者としてのスキルも身につける必要があります。
書籍や勉強会・セミナー、コンサルティングなど経営を学べる機会は多数あります。
時間を見つけて積極的に経営に関する勉強に取り組み、歯科医院の経営に役立てることが重要となります。

まとめ

毎年多くの歯科医院が開業している一方で、過当競争により廃業に至る歯科医院の数も年々増加傾向にあります。
しかしながら、医院経営が軌道に乗り、高い年収を得ている歯科医師も多く存在します。
この記事を参考にして、今後歯科医院を開業する場合は、歯科医院の経営に必要な知識をきちんと身につけ、開業に失敗しないよう心がけましょう。

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