開業を考えたときに知っておきたいクリニックが倒産する原因

クリニックの開業をお考えの先生に、ぜひとも知っておいてもらいたいことがあります。それは、クリニックが倒産する原因です。
「そんなのは簡単だ。患者数が増えないクリニックでしょう?」や「赤字が続いたときでしょう?」と反論される方も、いらっしゃることでしょう。その通りではあるのですが、患者数が少なくても黒字になっているクリニックもありますし、赤字が続いても倒産しないクリニックもあるので、患者さんの数や赤字が続くだけでは、本当の倒産理由ではありません。
この記事では、クリニックが倒産するときはどういったときなのか、運転資金の準備や事業計画の立て方、根本原因である集患についてご説明いたします。
開業をお考えの先生にとって、とても大切なことですから、この記事の内容をしっかり把握してください。そして、東京で現実に即した事業計画を立てて、人生設計をしていきたいとお考えの先生は、ぜひ当社の開業コンサルティングをご検討ください。
クリニックが倒産するときは「経費が払えなくなったとき」

クリニックが倒産するときというのは、患者さんの数が少なくなったときでも、赤字が続いたときでもなく、経費が払えなくなったときです。経費とは、スタッフの人件費やテナントの家賃、水道光熱費といった、クリニックの経営を続ける為にかかる費用のことです。
経費が払えなくなったら、どうなるのでしょうか?
クリニックの運営を手助けしてくれているスタッフさんに、「今月の給料が払えません」と言ったら、スタッフさんは「では辞めさせてもらいます」となり、クリニックが運営できなくなってしまいます。
テナントの家賃も同様です。大家さんに、「来月の家賃が払えません」と言ったら、基本的には「では今月で退去してもらえますか?」となってしまいます。大家さんによっては、来月の家賃が払えなかったとしても、交渉をして「再来月に2ヶ月分の家賃を払ってくれたらいいですよ」と言ってくれることもありますが、家賃が払えなければクリニックを止めて出ていくしかありません。
水道光熱費も同様です。電気代が払えなくなってしまって、電気を止められてしまったら、真っ暗な部屋の中で診察をしないといけませんし、電子カルテや医療機器も利用できません。そういったクリニックで診察を受けたいと思う患者さんもいません。院内が真っ暗だと、「今日は休みなのだろうか?」と思われて入ってきてくれる人もいません。
このように、クリニックにかかる経費が払えなくなったときが、クリニックが倒産するときです。
患者さんの数が少なく、赤字が続いたとしても、経費を払うことができたら、クリニックは倒産しません。とは言え、経費が支払えるうちに患者さんの数を増やさないと、いずれ倒産することになるでしょう。
経費が払えない=運転資金が足りない

経費が払えないということは、運転資金が足りないことを意味します。運転資金とは、クリニックを経営していくために必要な資金のことです。運転資金は、基本的には患者さんを診察して得られる診療報酬から得られます。患者さんをたくさん診る事で、その利益の一部が運転資金に充てられます。
クリニックを開業した当初は、クリニックの存在が周辺の方々に認知されていないこともあり、患者さんの数が少なく、やがて少しずつ増えて行って、クリニックの収益が赤字から黒字になります。クリニックを開業当初から黒字にする方法もありますが、一般的には「患者さんの数は少しずつ増えていく」とお考えください。
患者さんの数が増えて、クリニックにかかる費用と、患者さんの診療で得られる利益が釣り合った段階で、黒字になります。その間は、赤字経営ですから、その運転資金を補填するための資金を別途用意しておかないといけません。
その資金は、先生が今まで貯めてきた預貯金から回すこともありますが、事業経営をされているわけですから、原則としては銀行からの融資で賄うことになります。
このように、どこから資金を得て、どのタイミングでどれくらい支払っていくかと言うことを、資金繰りといいます。資金繰りがうまくできればクリニックは倒産しませんが、資金繰りが行き詰まったら倒産することになります。
事業計画はクリニックの現実に即して手堅く立てること
事業計画の立て方

クリニックの開業準備で最初に行うことは、先生がどのような診療科目で、どのような地域のどのような場所に開業するべきか。どの程度の規模のクリニックを開業するべきかを、計画することです。その計画に基づいてクリニックの事業計画を立てます。
事業計画とは、経営の数字が網羅されたものです。いつどこで開業し、患者さんの数がどのように増えていって、いつ黒字になって、先生の手取り収入はこれくらいになって、毎月の金融機関の返済はこうで・・・、といった具合です。事業計画の詳細は、当社が行っているクリニック開業セミナーでご説明しています。
事業計画は、先生お一人で作ることは現実的ではありませんから、クリニック開業コンサルタントに依頼し、いっしょに作っていくことになります。その計画は、もちろん先生の人生計画から逆算して立てるべきです。例えば、「子育てと開業を両立させたい」とか「研究と臨床を両立させたい」といったご要望の先生もいらっしゃいます。コンサルタントを選ぶときは、先生の開業のご希望やワークライフバランスなどをしっかりと把握してくれて、現実に即した事業計画を立ててくれる人に依頼することをおすすめします。
もちろん、事業計画の内容は現実に即したものでないと、後で資金繰りが大変な結果になります。
コンサルタントを名乗る人物が立てた酷い事業計画例

開業実績の少ないコンサルタントや、医療機器メーカーのコンサルタントの中には、酷い人もいます。
開業をご検討されている、ある先生から「別のコンサルタントに依頼して作ってもらった事業計画を見てもらいたい」とご相談があり、確認したことがありました。その事業計画の中身は、あまり患者さんが来ないような場所で開業を予定しているのにもかかわらず、規模の大きなクリニックで、たくさんの医療機器を導入し、クリニックを開業した初月からたくさんの患者さんが来院する計画になっていました。
その先生には、「このような計画は破綻しますから、そのコンサルタントとは解約した方が良いです。」とお伝えしました。
そのような華やかな事業計画は、金融機関に持っていくと資金調達しやすい内容ではあります。計画通りにたくさんの患者さんが来てくれたら良いのですが、患者さんの数は開業場所でおおよそ決まってくるので、すぐに資金繰りが悪化し、先生が金融機関に頭を下げて、「もっと融資してください」とお願いに回ることになります。
酷い事業計画では、金融機関からの融資のほとんどをクリニックの豪華な内装や医療機器に充ててしまい、「現実的に考えて、資金繰りが1~2ヶ月しか持たない」というものもありました。
事業計画はコンサルタントに任せ切りにならないこと

クリニックを開業して患者さんの数が増えて行って黒字化するまでの期間は、一般的には早くて半年、通常は1年くらいです。開業の仕方によっては2~3ヶ月ほどで黒字化する方法もありますが、その方法は特別ですから、一般的には1年くらいは赤字でも資金繰りができるように、運転資金を潤沢に持って始めることが一般的です。
事業計画を立てるときは、基本的に「コンサルタントが立ててくれた事業計画だから安心」とか、「すべてお任せ」ということをしないで、「本当に患者さんが事業計画通りに増えていくのか」「コンサルタントの言っていることは本当なのだろうか」と疑問を持ったことは、コンサルタントに確認してみることが大切です。セカンドオピニオンとして別のコンサルタントに相談することもおすすめです。
未熟なコンサルタントが立てた華やかな事業計画で失敗する先生は多いからです。
実績のあるコンサルタントは、現実の実例に基づいて事業計画を立ててくれます。色々な質問をして行きながら、依頼したコンサルタントが信頼に足る人物なのかを見分けていくことが大切です。
クリニック倒産の根本原因は患者数と経費
患者数を増やすための方法

クリニックが倒産するときは、経費を払うことが出来なくなった時だとご説明しましたが、その経費は患者さんを診療したときの利益から支払うので、クリニック倒産の根本原因は患者さんの数が少ないことです。
開業当初に充分な運転資金を確保しておくことだけでなく、しっかりと集患をして患者さんの数を増やし、早期に黒字にしていくことが大切です。
患者さんの数を増やしていくためには、いくつかの方法があります。
- 診療科目に即した集患しやすい場所で開業する
- 専門性の高い診療科目や複数の診療科目を取り入れる
- 丁寧な診療と感じの良いクリニックを目指す
開業場所と集患の関係を正しく判断するのは、実績の豊富なコンサルタントの経験によるところが大きいです。どのような開業場所が良いのかは、「クリニックの開業場所でほぼ決まるクリニックの経営リスク」をご参照ください。
経費を低く抑える

クリニックを黒字にするためには出ていく経費を低く抑えることも大切です。近年、クリニックの経費を最小限に抑え、少ない患者数でもクリニックを黒字化できる「ミニマム開業」という手法を取り入れる先生が増えています。ミニマム開業のポイントは、
- できるだけテナント面積の小さい場所を選ぶこと
- 開業当初は必要最小限の医療機器で始めること
- 採血や医療機器の操作、受付なども先生ができるようにしておくこと
ミニマム開業と医師優遇税制を活用することで、少ない患者数でも先生の手取り収入を大幅に増やすことができます。ミニマム開業で、先生の手取り収入をどれだけ増やせるのかについては、「医師がミニマム開業をしたときの年収はいくらになるか?」をご参照ください。
以上、開業をお考えになられた先生に向けて、クリニックが倒産する原因についてご説明いたしました。
ポイントをまとめると、事業計画を立てるときは経験豊富なコンサルタントに依頼することはもちろんのことですが、資金繰りで行き詰まることがないように、運転資金を十分に用意しておくことが大切です。また、集患がしやすい場所を選定しながら、経費があまりかからないコンパクトな規模の開業もおすすめです。
もし、現在相談している開業コンサルタントの事業計画に納得できなかったり、不安に感じたりした先生がいらっしゃいましたら、当社までお気軽にご相談ください。当社では、無料のクリニック開業セミナーを開催しています。そのセミナーの中で、別のコンサルタントが立ててくれた事業計画が妥当なものなのかのチェックや、医師優遇税制を活用したミニマム開業の解説、先生の手取り収入のシミュレーションなどもしております。
競合するクリニックが多い東京やその周辺都市などで開業し、安定した経営をしていきたい先生は、ぜひ当社までご相談ください。



