小児科開業医は儲からない?利益の重要ポイントは立地条件

小児科クリニックを開業しようとする先生から、「小児科の開業医は利益が上がるのでしょうか?」とご質問をいただくことが少なからずあります。
ネット検索をして、「少子化で患者さんの数が減っている」とか「結婚しようとする若い人が減っている」といった記事もあり、「小児科クリニックの数が増えている」というような記事を見てしまうと、「小児科を開業しても利益が上がらないのかな」と感じてしまいます。小児科クリニックに限ったことではありませんが、「クリニックの倒産件数が増えている」といった記事もあります。
そういった事情はあるものの、当社にて開業支援した小児科クリニックは、すべて黒字で安定経営ができています。つまり、先生が小児科の開業医となったとしても、「経営を成功させる方法はある」と伝えたいと思います。この方法を知っていないと、いくら先生に高い志があったとしても、赤字が続いて倒産する場合もあります。
この記事では、小児科の開業医になって利益が上がるかどうかをご説明しつつ、具体的な経営方法を徹底解説いたします。小児科の開業医として独立を希望されている先生は、ぜひ最後までご覧ください。
開業医として「利益が上がる」という意味
まず、開業医として独立されるということは、「経営者になる」ということです。ですから、経営の数字について少し解説いたします。まず、「利益が上がる」と言う意味ですが、これは「経営の黒字が多く出る」ということを意味します。
利益が上がる=経営の黒字が多く出る
利益とは、売上高から経費を引いたものです。個人事業主としてクリニックを起業した場合には、1年間の利益の金額が先生の所得となります。
利益=売上高-経費
クリニックで診療を行った保険診療の報酬が、売上高の大部分となりますが、他にも自費診療や物販などもあります。ですが、小児科クリニックでは、物販はほとんどありません。ですので、利益を増やすためには、まず保険診療と自費診療を増やす必要があります。
利益=保険診療報酬の合計+自費診療報酬の合計-経費
保険診療報酬や自費診療報酬を増やす方法は、患者さんの人数を増やすことです。患者さんの人数については、後ほどご説明します。
さて、利益を増やすためには、経費を減らしても良いわけです。経費には固定費と変動費があります。患者さんを診療する人数が少なくても、経費を低く抑えることができたら、それだけ利益が残ることになります。
固定費とは、クリニックで患者さんを診療する人数に関わらず、毎月一定してかかる費用のことです。例えば、テナントの家賃やスタッフの人件費、水道光熱費、医療機器などのメンテナンス費用などです。変動費は、患者さんを診療した人数に応じてかかる費用のことです。例えば、医薬品やディスポの診療材料などです。
利益=売上高-(固定費+変動費)
ここで、「固定費と変動費のどちらも下げたい」と思われるかもしれませんが、変動費は下げることは難しいです。医薬品や診療材料などの費用を下げることは、仕入れ先を変更したとしても、あまり下げることはできません。そこで、固定費に着目するわけです。
固定費をどのように下げるのかも、患者さんの人数を増やすことと同様に、とても大切なことですので、後ほど詳しくご説明いたします。
売上の基本「患者さんの人数を増やす」

患者さんの人数を増やす方法は、「クリニックが新規開院するときの集患方法とは?」にいくつか紹介していますが、立地条件の悪い場所に開業してしまうと、残念ながらあまり効果的な方法はありません。開業後はクリニックの立地条件や患者さんの利用のしやすさが固定されているため、いくらPRをしてもホームページを改善しても、患者数を一定以上増やすことは普通は難しいです。
このことは、とても大切ですから、「小児科クリニックの患者さんの数は、立地条件と利用のしやすさで決まる」と、また「立地条件と利用のしやすさは、物件選びで決まる」と言う事をよくよく覚えておいてください。
集患がしやすい良い立地条件とは?
小児科クリニックに患者さんを集患しやすい立地条件とは、まず患者さんが多くいる場所を選ぶことです。小児科クリニックの患者さんと言えば、子どもたちです。お子さんが多い地域で開業をすることが基本です。
例えば、「小児科クリニックの数が少ないから」と言って、オフィスビルの中で開業をしたとしても、オフィスビルに通う小さなお子様はいないので、売り上げは上がりません。小さな子どもが多い地域や、新興住宅街などの地域を選んで開業することが基本となります。
どのようなテナントを選ぶべきか?

そして、「どのようなテナントを選んで開業すべきか?」ということですが、小さなお子さんを連れて診療に通う親御さんは、自転車やバギーにお子さんを乗せて通院します。ですので、自転車を駐輪させておきやすい広いスペースが有ったり、バギーが通過しやすいようにスロープがある1階が望ましいです。また、2階以上の場所であっても、エレベータやスロープがあり、テナントの前に自転車を駐輪させやすい場所を選ぶと良いです。
患者さんが入りにくいテナントに入居してしまうと、近くに入りやすい小児科クリニックがオープンしてしまったら、患者さんの多くはそちらに行ってしまう場合もあります。
そういったことで、小児科クリニックが近くにある場所であったとしても、その口コミなどを調査すると、集患しやすい良い立地条件の場所は、まだまだ多くあります。
駐輪スペースが少ないクリニックは予約制にしたら良い?
駐輪スペースが少ないクリニックは予約制にしたら、クリニックの前が自転車などで混雑することは少なくなりますから、予防接種なども含めて予約して診療を行うケースには向いています。ところが、小児科クリニックの場合は、子どもの急な発熱にも対応が求められるので、完全予約制にすることは、難しい場合もあります。
そうしたこともあり、駐輪スペースを取ることができる1階のテナントは理想的です。
ただし、集患がしやすい1階のテナントは、家賃も高くなるため、診療報酬が増えたとしても固定費が高くなって、反対に利益を減らしてしまう恐れもあります。
固定費を減らして利益を増やす方法

固定費を減らすことで、先生の利益を増やすことができます。小児科クリニックでの金額の大きな固定費は、次の2種類です。
- テナントの家賃
- スタッフの人件費
テナントの家賃と集患の関係
テナントの家賃は、患者さんの集患と大きく関係があります。「若い世代の多い団地の近くで開業したらいいのでは?」と考えることもできますが、開業直後は子どもさんがたくさん来院してくれたとしても、10年ほど経過すると子どもが成長して、来院する子どもさんが少なくなることもあります。
ですから、若い世代の多い団地の近くで、なおかつ人通りの多い場所や繁華街の近くを選ぶことをおすすめします。そして、小児科だけでなくアレルギー科といった、親御さんも子どもと一緒に診療を受けられる科目も取り入れることです。
しかし、人通りの多い場所や繁華街では、家賃は相対的に高くなりがちです。人通りの多い場所や繁華街では、クリニック以外でもカフェや飲食店などを開業しても集客がしやすくなります。そのため、お医者さん以外の人たちも「空きテナントがすぐに出たら借りたい」と考えるので、家賃も高く設定されています。
集患しやすい場所で家賃の割安なテナントを借りる方法
家賃は、どのようなテナントも一律ではなく、テナントの広さによって異なります。家賃の計算式は、
家賃=坪単価×坪数
ですから、「家賃が高いテナント」というのは、「坪単価が高くて広いテナント」です。そこで、坪単価が高くても集患がしやすい場所で、坪数のコンパクトなテナントを借りることができたら、集患ができる割に家賃を割安に抑えることができます。
クリニック開業コンサルタントが、小児科クリニックの開業支援をするときは、事業計画案を立てて経営計画をシミュレーションしますが、その内容や先生のご要望に合うテナントを見つけることが最大の課題となります。
条件の良い空きテナントを見つけたら、集患がしやすくなり、先生の利益を最大限に増やす事ができる小児科クリニックができます。
人件費を抑える方法
人件費を抑える方法の前に、クリニックの人件費がどのような式で計算できるかを見てみましょう。
人件費=給料×人数
給料は、常勤のスタッフさんは月給、パートスタッフさんは時給になります。この式から、人件費を下げる方法として安易に考えないでいただきたいことは、「お給料を最低賃金に設定する」ということです。これからクリニックを開業して大変な時期に、最低賃金で誰が働いてくれるでしょうか?
スタッフを雇うことができなければ、確かに人件費はゼロになって、先生の利益を増やす事ができますが、そのようなクリニックは人手が足りないために成り立ちません。患者さんの対応がきちんとできないために、「対応が悪い」という口コミが広がって、患者さんの来院数が減ってしまいます。
お給料は、近隣のクリニックと比べて若干高めに設定することで、優秀なスタッフさんを雇いやすくなります。
スタッフさんを雇うことは必要条件としても、人数も増やし過ぎてしまうと、人件費が高くなってしまい、クリニックの利益が少なくなります。
そこで、少ない人数でも仕事ができる様に業務の無駄を省いて、優秀なスタッフさんに働いてもらう事で、業務効率の高い小児科クリニックの運営ができるようにしておきます。すると、人件費を下げることができますので、その分を職員さんの賞与などに回すとモチベーションがあがって良い循環を生む事ができます。
医師優遇税制の活用で手取り年収を増やす

1年間の保険診療報酬の合計が5,000万円以下、なおかつ自費診療の合計が2,000万円以下であれば、個人事業主の先生は医師優遇税制が利用できます。
その医師優遇税制とは、特別措置法第26条のことで、通称特措法といいます。特措法の詳細は、「特措法とは?クリニック経営する医師だけに認められたお得な税制」をご覧ください。
この特措法を利用することで、税務申告するときにクリニックの経費は売上高の約70%として計算して、税務署に申告することができます。例えば、売上高が合計5,000万円であれば、経費がいくらかかったとしても「3,500万円かかりました」と申告できます。
この場合の先生の年収は、「5,000万円-3,500万円」ですから、1,500万円です。ここに所得税などがかかり、およそ1,000万円が手取り収入として残ります。
ところが、実際にかかった経費が1,500万円だったとしたら、申告した3,500万円との差額の2,000万円を無税で先生の手取り収入としても良いことになります。つまり、申告をして残った1,000万円の手取り収入と、特措法の利用によって残った2,000万円の手取り収入を合算した、3,000万円が先生の手取り年収になるわけです。
この詳細な計算については、「小児科医師が開業して年収を増やす方法」を参照していただくとして、5,000万円の売上高であったとしても先生の手取り年収を3,000万円にできる方法があるということです。
特措法を利用して先生の手取り年収を増やすポイントは、保険診療報酬による売上高を年間5,000万円以下に抑え、家賃や人件費などの固定費をできるだけ低く抑えることです。
以上、小児科クリニックを開業したら利益が上がるのかどうかについて解説いたしました。まとめると、「開業場所を適切に選び、固定費を低く抑えつつ、特措法を利用できたら、先生の手取り年収を大幅に増やすことができる」ということです。
小児科クリニックの開業をしたいとお考えの先生は、クリニック開業コンサルタントに依頼すると思いますが、立地条件を適切に指導してもらえ、なおかつ医師優遇税制の利用も視野に入れて支援してくれるコンサルタントをお選びください。
当社では、東京やその周辺地区での開業を検討している医師に向けて、クリニック開業支援を行っています。開業をお考えの先生は、まずは、無料のクリニック開業Webセミナー&個別相談会(オンライン開催)にご参加ください。先生がどのようなライフプランや開業を望まれているのかをお伺いして、事業計画や手取り年収のシミュレーションを無料でアドバイスしています。
開業をお考えの先生からのご連絡をお待ちしております。



