精神科クリニックの経営が黒字になる患者数の計算方法

精神科クリニックの経営が黒字になる患者数の計算方法

精神科クリニックを開業する時に、どれくらいの患者さんを診察したら黒字になるのかを計算し、把握しておくことは大切なことです。その時の患者数のことを、損益分岐点患者数といいます。

損益分岐点患者数を計算することで、事業計画の内容が妥当かどうかや、プラン通りの経営が出来そうかの判断にも役立ちます。

クリニックの経営が黒字になる患者さんの診察数の計算方法や、精神科クリニックを開業した時の試算の仕方を解説します。精神科クリニックの開業を検討している先生は、最後までご覧ください。

損益分岐点とは?

損益分岐点とは?

まず、損益分岐点について説明します。損益分岐点には、損益分岐点患者数と損益分岐点売上高があります。

損益分岐点患者数とは?

損益分岐患者数とは、クリニックが黒字になるギリギリの患者さんの診察数のことです。単位は、1日当たりの診療数で計算することが多いです。1日当たり、どれくらいの患者さんを診察したら黒字になるのかを把握しておくと、月次決算の数字を見なくても、おおよそ黒字かどうかの判断ができます。

精神科クリニックは、他の診療科目と比べて経費があまりかかりませんから、たくさんの患者さんを診察しなくても、黒字になりやすいです。

クリニックを開業した直後は、「早く黒字にしたい」と患者さんをたくさん診療したくなりますが、1週間ほどはあえて患者さんの数を低く抑えます。その理由は、先生やスタッフさんが患者さんの対応に戸惑うことがあるからです。この間にオペレーションの確認や見直しをします。1週間ぐらい経過して、オペレーションに慣れてきたら、少しずつ患者さんの予約数を増やしていきましょう。そして、損益分岐点患者数を超えるように経営をします。クリニックの黒字化の目処が立つと、とても安心できます。

さて、損益分岐点患者数に達したら、赤字ではありませんが、先生の給料はゼロです。損益分岐点患者数を超えて診療すると、それ以降の利益が、先生の年収になります。その利益とは、売上高(診療報酬の合計)から心理検査や血液検査などに必要な費用などの変動費を引いたものです。ちなみに、この利益のことを限界利益といいます。

限界利益=売上高-変動費

医療法人化すると、先生の給料は固定で決められてしまいますが、個人事業主の場合は損益分岐点を超えた後の限界利益が先生の年収になります。

損益分岐点売上高とは?

損益分岐点売上高とは、患者さんの診察を行っていくと黒字になる時の売上高のことです。患者数ではなく、売上高の金額で表した数字です。

損益分岐点患者数に診療単価を掛けると、損益分岐点売上高になります。反対に、損益分岐点売上高を診療単価で割ると、損益分岐点患者数になります。

損益分岐点売上高=損益分岐点患者数×診療単価

損益分岐点患者数は、1日当たりの患者さんの診察数で計算することが多いですが、損益分岐点売上高は1ヶ月や1年間で計算することが多いです。その理由は、月次決算や期末の決算で黒字を目指すことを指標とするからです。

ちなみに、精神科クリニックでは、患者さん1人当たりの1回の平均的な診療単価はおおよそ5,000円~6,000円程度です。

クリニックの経営が黒字になる患者数の計算式

クリニックの経営が黒字になる患者数「損益分岐点患者数」の計算式を導き出したいと思います。

まず、クリニックが得られる利益は、患者さんを診察して得られる利益の合計から、クリニック経営でかかった費用を引いた金額で求められます。

利益=売上高-経費

この利益がプラスになれば黒字、マイナスになれば赤字です。つまり、損益分岐点は、この式で利益がゼロの状態ですから、売上高とかかった経費が同じ金額の時です。

さらに、経費は変動費と固定費に分けられます。変動費とは、心理検査や血液検査などに必要な費用などで患者さんの診察数に応じてかかる経費のことです。固定費とは、テナントの賃料やスタッフさんたちのお給料といった、患者さんの数とは関係なく固定でかかる経費のことです。

精神科では、診療と言っても変動費はほとんどかかりませんし、医療機器もほとんど無いクリニックが多いですから、それらのメンテナンス費がかかりませんので、固定費も他の診療科目と比べて安くなります。

さて、売上高と経費をグラフにすると、次のようになります。

クリニックの損益分岐点

緑色の売上高は、患者さんの診察数に応じて比例して上がっていきます。オレンジ色の経費は、変動費と固定費があります。変動費は、患者さんの診察数に応じて比例して上がっていきますが、固定費は一定です。変動費は、固定費に上乗せされていますが、変動費と固定費の合計を総費用といいます。

売上高と総費用の線が交差するところが、損益分岐点です。損益分岐点の時の患者さんの診察数が、クリニック経営が黒字となる患者数となります。損益分岐点よりも売上高が低いと赤字となり、総費用との差が損失となります。反対に、売上高が損益分岐点を超えると黒字となり、総費用との差が先生の収入となります。

損益分岐点売上高の計算式は、売上高と総費用の一次関数を連立方程式にすると導き出せます。

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

損益分岐点売上高を1日当たりの売上高に変換し、精神科の診療単価で割ると損益分岐点患者数を計算できます。精神科クリニックでは、自費診療や物販をしているところは少ないですから、この式で計算した患者さんの数がおおよそ一致します。

ちなみに、「変動費/売上高」は売上高に対する変動費の割合と言えます。この割合のことを、変動費率といいます。すると、上の式は次のようになります。

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費率)

精神科クリニックが黒字になる患者数の計算例

精神科クリニックが黒字になる患者数の計算例

売上高8,000万円を目指すクリニックと、1億円を目指すクリニックの2つのパターンで、黒字になる患者数を試算したいと思います。

売上高8,000万円を目指すクリニックの損益分岐点患者数(試算)

次の条件の精神科クリニックが黒字となる患者数を試算したいと思います。

  • 売上高8,000万円/年
  • 変動費率10%(売上高8,000万円の場合は800万円)
  • 固定費2,500万円/年
  • 1ヶ月当たりの診療日数20日
  • 診療単価6,000円/人

損益分岐点売上高=2,500万円/(1-0.1)≒2,780万円

この条件のクリニックでは、1年間で2,780万円以上を売り上げると黒字になる計算です。黒字となる患者数は、

損益分岐点患者数=2,780万円/(12ヶ月×20日×6,000円)≒19.3人/日

1日当たり20人以上を診療することで黒字になる計算です。8,000万円を売り上げるためには、1日当たり56人の患者さんを診察する計算になります。

なお、この条件の精神科クリニックを個人経営される場合であれば、先生の年収は4,700万円です。

売上高1億円を目指すクリニックの損益分岐点患者数(試算)

次の条件の精神科クリニックが黒字となる患者数を試算したいと思います。

  • 売上高1億円/年
  • 変動費率10%(売上高1億円の場合は1,000万円)
  • 固定費5,000万円/年
  • 1ヶ月当たりの診療日数20日
  • 診療単価6,000円/人

損益分岐点売上高=5,000万円/(1-0.1)≒5,560万円

この条件のクリニックでは、1年間で5,560万円以上を売り上げると黒字になる計算です。黒字となる患者数は、

損益分岐点患者数=5,560万円/(12ヶ月×20日×6,000円)≒38.6人/日

1日当たり39人以上を診療することで黒字になる計算です。1億円を売り上げるためには、1日当たり70人の患者さんを診察する計算になります。この人数の診療をこなすためには、常勤の医師を雇う必要があります。そのため、人件費が大幅に上がり、固定費が高くなります。

なお、この条件の精神科クリニックを個人経営される場合であれば、先生の年収は4,000万円です。

固定費と経営リスクの関係

固定費と経営リスクの関係

クリニック経営を低リスクに経営するためには、できるだけ少ない患者さんの診察数で黒字になるようにすることです。

上記の計算例からもわかるように、固定費が上がるとたくさんの患者さんを診察しないと黒字になりにくいことがわかります。つまり、固定費をいかに下げるかが、低リスク経営につながります。

精神科クリニックでかかる主な固定費は、テナントの賃料とスタッフさんの人件費です。この2つをどれだけ下げられるかが、損益分岐点患者数を下げるためのポイントになりますが、実際の経営は計算通りにはいかないものです。なぜなら、賃料が安いテナントを選んで入居したところ、「患者さんが通いにくい場所なので患者数が増えませんでした」という結果を招き、倒産するクリニックもあるからです。

損益分岐点患者数の計算や事業計画が適切なものかどうかは、開業支援を依頼する開業コンサルタントの知識や経験によるところが大きいと思います。

先生の開業条件で事業計画のシミュレーションをします

先生の開業条件で事業計画のシミュレーションをします

これらの患者数は、あくまでも試算です。先生がどのような場所で、どれくらいの規模の精神科クリニックを検討しているのかによって、損益分岐点患者数が異なります。また、医師優遇税制(特措法第26条)を活用した開業を検討されている場合は、損益分岐点の計算方法が異なります。(医師優遇税制については、「【精神科の先生必見】精神科クリニックのミニマム開業を徹底解説」をご参照ください)

もし、先生ご自身がお考えのクリニックがあれば、開業コンサルタントに依頼すれば先生の年収などと併せて事業計画のシミュレーションをしてくれると思います。

東京都やその周辺での開業をご検討されている先生には、当社にて無料で事業計画のシミュレーションを行っていますので、当社にコンサルティングを依頼するかどうかに関わらず、当社でオンラインにて行っているクリニック開業Webセミナー&個別相談会(無料)にお気軽にお申込みください。

以上、精神科クリニックの経営が黒字になる患者数の計算方法を解説いたしました。クリニックの経営が黒字になる患者数のことを、損益分岐点患者数といいます。1日当たりの損益分岐点患者数の計算は、損益分岐点売上高を診療日数や精神科クリニックの診療単価で割って計算することができます。

精神科クリニックは、固定費を安く抑えることがしやすく、需要も増えているので、黒字化しやすい診療科目です。開業場所と売上高予測を間違わなければ、先生の年収を増やしやすいのですが、その成果は開業コンサルタントの知見や経験によります。

当社は35年以上の実績のある開業コンサルティング専門企業です。東京やその周辺都市で精神科クリニックの開業を検討している先生は、是非当社の開業コンサルティングをご検討ください。

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