クリニックを開業する時の損益分岐点の計算方法と低リスク経営

クリニックを開業する時の損益分岐点の計算方法と低リスク経営

クリニックの開業を検討する時に、事業計画を立てて、それを元にして金融機関に融資の申し込みをします。

事業計画に記載される内容は、簡単に言うと、「どこに、どれくらいの規模の、どのようなクリニックを開業し、毎月どれくらい患者さんが増えていって、いつ黒字化し、毎月どれくらい借入金を返済するのか」を説明するものです。

それらの内容は、ほとんど数字の羅列です。その中で、「いつ黒字化し・・・」というところが、この記事のテーマ「損益分岐点」になります。損益分岐点とは、クリニックが黒字となる売上高や患者さんの診療数のことです。その売上高や患者さんの診療数を超えると、クリニックが黒字になり、下回ると赤字になります。

クリニックを開業したら、損益分岐点を上回るようにクリニックを経営していくことが求められます。

この記事では、クリニックの事業計画で立てる損益分岐点について、その具体的な計算方法、リスクの低いクリニックと損益分岐点の関係について解説いたします。

クリニック事業計画での損益分岐点とは何の数字?

クリニック事業計画での損益分岐点とは何の数字?

クリニックの事業計画を立てる時に出す損益分岐点の数字は、次の2種類の数字となります。

  1. 1.損益分岐点となる月の売上高
  2. 2.損益分岐点となる1日当たりの患者さんの診療件数

損益分岐点は、一般的には売上高で試算しますが、売上高だけだと少しわかりにくいこともありますので、1日当たりの患者さんの数で試算することもあります。先生としても、「月にいくら以上売上げてください」と言われるよりも、「1日に何人以上の患者さんを診療してください」と言われた方が、イメージがしやすいと思います。

そこで、金融機関の融資では月の売上高の損益分岐点を示しつつ、先生が損益分岐点を把握しやすいように1日当たりの患者さんの診療数も計算します。

患者さん1人当たりの診療単価は、クリニックの科目でおおよそ決まっています。例えば、精神科であればおよそ5,000円/人、循環器内科であればおよそ9,000円/人です。また、1ヶ月間でクリニックを何日間開院させるのかも、クリニックによって決まっていて、週休二日制の場合にはおおよそ20日間になります。

それらを考慮して、月の損益分岐点売上高から、1日当たりの患者さんの損益分岐点患者数を算出できます。

損益分岐点の具体的な計算方法

損益分岐点の具体的な計算方法を解説いたしますが、その前に次の式をご覧ください。

利益=売上高-経費

クリニックの利益は、患者さんを診察して得られる報酬の合計金額から、経費を引いたものです。経費とは、クリニックを経営している中で出ていく費用のことですが、大きく変動費と固定費に分けられます。

利益=売上高-(変動費+固定費)

変動費とは、患者さんを診察した時にかかる血液検査や診療材料などの費用のことです。患者さんの数に応じて変動する経費なので、変動費と呼ばれます。固定費とは、患者さんの診療察がゼロでもかかってしまう、固定化された費用のことです。例えば、テナントの賃料やスタッフさんの人件費、水道光熱費などが固定費に該当します。

固定費は、厳密には患者さんがほとんど来ないクリニックでは、スタッフさんの数を減らすといったことをするので、「変動費じゃないか」と言われるかもしれませんが、すぐに変動させることが難しいので、固定費として計算します。

患者さんを診察することで売上が上がります。売上高から変動費を引いた利益(限界利益)で、毎月かかる固定費に充てていき、その利益の合計が固定費を上回るようになると、黒字になります。

それを図にすると、次のようになります。

クリニックの損益分岐点

横軸が患者さんの診察数で、緑色の線が売上高です。売上高は、診察数に比例しています。この売上高の傾きは、診療単価によります。

オレンジ色の線は経費です。横一直線の固定費と、診察数によって比例する変動費があります。その合計が経費の金額(総費用)です。

診察数がゼロから増えていくと、売上高が増えていき、いずれ経費の金額を超える点が出てきます。この点が、損益分岐点です。その時の売上高を損益分岐点売上高といいます。

損益分岐点よりも患者さんの診察数が少ないと、売上高と経費の差額がマイナスとなり損失が出るので、クリニックは赤字経営となります。診察数が損益分岐点を超えると、売上高と経費の差額がプラスとなり利益が出るので、クリニックは黒字経営となります。

売上高のグラフと経費のグラフの一次方程式を連立方程式にすると、損益分岐点売上高を算出できる式を導き出せます。

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

この式に、固定費や変動費、売上高の数値を代入すると、損益分岐点売上高が計算できます。固定費は、クリニックの開業場所や規模、スタッフさんの人数でおおよそ決まります。売上高と変動費は、事業計画で立てる売上高と変動費を代入しても良いですし、患者さん一人当たりの診療単価とその時にかかる変動費を代入しても算出できます。

例えば、クリニックの売上高が最大1億円、その時の変動費が2,000万円、テナントの賃料とスタッフさんのお給料を合わせた固定費が3,500万円だとすると、損益分岐点売上高は

3,500万円/(1-2,000万円/10,000万円)≒4,380万円

1年間の診療報酬の合計が4,380万円以下であれば、クリニックは赤字経営となります。4,380円の売上高になると、先生のお給料はゼロですが、クリニックは黒字経営になります。先生のお給料がゼロでは生活ができませんから、先生がお給料を最低限としてどれくらい得たいのかを考慮して損益分岐点を計算します。

4,380万円の売上高の時の1日当たりの患者さんの診察数は、月20日開院し、診療単価が6,000円とすると

4,380万円/(20日×12ヶ月×6,000円)≒30人

1日当たり30人以上診療すると、黒字になる計算です。

先生が年収3,000万円を得たい場合ですと、固定費を3,500万円+3,000万円(7,500万円)になるので、

7,500万円/(1-2,000万円/10,000万円)≒9,380万円

先生が十分にお給料を得るための損益分岐点売上高として、約9,400万円を目指すと良いという計算になります。その時の損益分岐診察数は、1日当たり約65人になります。

これらの計算は、診療科目や開業場所などによって異なるため、開業コンサルタントに相談して現実的な数字で計算することをおすすめします。

リスクの低いクリニックと損益分岐点の関係

リスクの低いクリニックと損益分岐点の関係

クリニックの事業計画を立てる時は、現実に即して計画することはもちろんのこと、低リスクな経営を目指すことが大切です。リスクの低いクリニックを開業させたい時の、損益分岐点の考え方について解説します。

損益分岐点は高い方がいいのか?低い方がいいのか?

リスクの低い経営を目指す場合、損益分岐点は低い方が良いです。

なぜなら、損益分岐点の低い経営ができているクリニックは、低い売上高でも黒字になるからです。クリニックを開業したら患者さんの数は少しずつ増えていくので、開業当初はどうしても赤字経営になりますが、それでも損益分岐点が低いと早く黒字になりやすいです。

反対に損益分岐点の高いクリニックだと、患者さんの診察をたくさんこなし、売上高を多くしないと黒字になりません。立地条件の良い場所で開業したとしても、損益分岐点の高いクリニックだと、黒字化するまでに時間を要する場合もあります。

低リスクなクリニックにしたい場合は、集患がしやすい立地条件の良い場所での開業を基本としつつも、なるべく損益分岐点が低くなるように事業計画を立てることも大切です。

損益分岐点を下げるポイント

では、どのように計画を立てたら損益分岐点を下げられるのか、それは損益分岐点の計算式から導き出すことができます。損益分岐点売上高を求める式は、次の式でした。

損益分岐点売上高=固定費/(1-変動費/売上高)

損益分岐点売上高を下げる方法は、次のどちらか、もしくは両方です。

  1. 1.固定費を下げる(分子を小さくする)
  2. 2.売上高に対する変動費の割合を下げる(分母を大きくする)

1つ目は、固定費を下げて、分子を小さくする方法です。

固定費で大きな金額を占めるものは、テナントの賃料とスタッフさんの人件費です。賃料を下げるためには、賃料の安いテナントを契約することです。スタッフさんの人件費を下げるためには、なるべくスタッフの人数を少なくすることです。

しかし、賃料の安いテナントだと場所が悪くて患者さんが増えないという結果になります。またスタッフの人件費を下げ過ぎると、患者さんへのサービスが悪くなり、不評を買ってしまう恐れもあります。固定費は、むやみに下げるのではなく、マーケティングなどを考慮する必要があります。

また、テナントは一度入居してしまうと、「固定費を下げたいから」と言っても転居が難しいです。低リスクなクリニックにしたい場合は、クリニック開業前の事業計画の時に入念にシミュレーションすることが大切です。

2つ目は、売上高に対する変動費の割合を下げて、分母を大きくする方法です。

売上高に対する変動費の割合のことを、変動費率といいます。変動費率を下げるためには、血液検査や診療材料などの費用を安く請け負ってくれる業者と取引をすることです。しかし、こうした費用は大幅に下げることは難しいので、現実的にはできるだけ固定費を下げることを考えます。

ミニマム開業による低リスク経営

クリニックの開業方法の一つに、ミニマム開業という方法があります。ミニマム開業とは、できるだけミニマムな規模のクリニックの事業計画を立てて、低リスクなクリニックにする方法です。

ミニマム開業を成功させるためのポイントは、損益分岐点を下げるポイントと似ています。

  1. 1.集患しやすい場所で開業すること
  2. 2.そのような場所のテナントは坪単価が高いので、坪数の小さなテナントを選ぶこと
  3. 3.医療機器は必要最小限にとどめ、採血や医療機器の操作などは先生がなるべく行い、スタッフさんの人数を最小にすること

集患しやすい場所とは、駅前や繁華街など、通勤や買物などで通過する人が多い場所です。そういった場所でクリニックを開業すると、患者さんが利用しやすいので、集患もしやすくなります。

ところが、そういった場所は坪単価が高くなる傾向になります。テナント賃料は、坪単価×坪数ですから、坪単価が高くなったとしても、坪数の小さなところを選ぶことで、テナント賃料を低く抑えることができます。

そういったテナントでは、できるだけスタッフさんの休憩室を設けないようにしたり、医療機器の導入も必要最小限にしたりして、なるべく患者さんにご利用いただくスペースを広めにします。

すると、医療機器を操作するための常勤の看護師さんを雇う必要性も少なくなりますので、人件費を下げることもできます。

このように、ミニマム開業を目指すことで、損益分岐点を大幅に下げることができるので、黒字化しやすい低リスクなクリニックになります。

ミニマム開業についてもっと知りたい先生は、「ミニマム開業とは?メリット・デメリット」をご参照ください。

以上、クリニック損益分岐点の計算方法と低リスク経営について解説いたしました。

クリニックの開業を検討する時は、クリニックの収支を予想し、どれくらいの患者さんを診察したら黒字になるのかを、入念にシミュレーションして事業計画を立てます。患者さんを診察して売上高が増えて、黒字になる時の売上高のことを、損益分岐点売上高と言います。

損益分岐点売上高を超えて、先生のお給料も十分に得られるような患者さんが来るように、計画を立てますが、その計画が現実に即したものになっていることも、クリニックの安定経営では大切です。

当社のクリニック開業コンサルティングでは、クリニックを黒字で安定経営ができる事業計画を立てることはもちろんのこと、開業場所の選定や資金調達、内装設計、開設届、職員採用などもトータルでご支援いたします。子育てとキャリアを両立させたい女性医師でも経営しやすい、低リスクなミニマム開業も実績豊富です。

東京都や神奈川県などの周辺都市で、開業を検討している先生は、当社のクリニック開業セミナー&相談会(無料)にご参加ください。事業計画の収支シミュレーションや先生の手取り収入のシミュレーションも無料で行っています。ぜひご利用ください。

クリニック開業Webセミナー&個別相談会(無料)

一覧へ戻る