精神科クリニックは開業しやすい?開業資金と失敗しない開業のポイント

東京やその近辺で精神科クリニックを開業したいと考えている先生の中には、「激戦地では開業が難しい」と考えている方が多いと思います。

実際に、先輩医師が開業をされて、「開業は大変だ」と言われているかもしれません。

確かに、2026年4月からは、東京都心の17区が開業規制地域に指定されて、クリニックの開業に」制限がかかりつつあります。

しかし、35年以上の開業支援をしてきた経験から申し上げると、「精神科クリニックの開業は、この記事で解説する内容をしっかりと理解すれば、まだまだ成功しやすい診療科」だと言えます。

以下、精神科クリニック(心療内科クリニック)を開業して、安定経営を実現するための方法を解説します。説明する内容は、精神科クリニックとしての一般論的な方法となるため、先生ご自身の個別の希望を実現したいと言う相談は、開業セミナー&個別相談会にご参加ください。

また、当社では精神科クリニック開業コンサルティングを行っています。こちらのページでは、精神科クリニックを開業して成功するためのポイントや事例を説明しています。併せてご覧ください。

2026年6月時点での開業規制の状況

2026年6月時点での開業規制の状況

まず、2026年4月から始まった開業規制について解説いたします。すでにご存じのことと思いますが、開業規制とは、都市部に医師や医療施設が集中しているために、地方の医療過疎地域が増えてしまい、全国で均一な医療サービスが受けられない状況を是正しようとして生まれた法律です。

こうした政策の具体的な施行方法については、各県で地域医療計画を策定する事になっていますが、都市部における『外来医師過多区域』で開業しようとする医師には新たな規制が導入されました。

現在、東京都で外来医師過多地域として指定されている市区は、「千代田区・中央区・港区・文京区・台東区・新宿区・中野区・杉並区・目黒区・世田谷区・渋谷区・品川区・大田区・豊島区・北区・板橋区・練馬区」の17区だけです。これらの区では、開業を希望する月の6ヶ月前には事前相談が必要とされているのですが、その具体的な手続き方法に関して、現時点では国からの具体的な指示は、保健所や厚生局などの現場にはまだ何もありません。

「すぐに精神科クリニックを開業したい」と考えている先生は、今のところ開業規制によって開業できないということはありません

しかし、今後1年後、2年後とどうなっていくかは予想ができません。開業規制がどのように変わっていくのか、当社としても常時チェックしています。

もし、当社のメルマガに登録いただけましたら、2~3ヶ月に1回程度の頻度で、開業規制の状況を報告しています。情報を手に入れたい方は、お問い合わせフォームにてご登録いただけます。

精神科クリニックを開業するのに必要な「開業資金」とは?

精神科クリニックを開業するのに必要な「開業資金」とは?

精神科クリニックを開業するためには、いろいろな準備が必要です。もちろん、そのための費用も必要です。開業資金には、次の2種類の資金を準備します。

  1. 1.設備資金(初期費用)
  2. 2.運転資金

設備資金の用途と目安となる金額

設備資金とは、クリニックを設立するまでにかかる費用です。設備資金は、次のようなことに使います。

  • テナント契約の費用(敷金や保証金、仲介手数料など)
  • 内装工事費用
  • 医療機器や医薬品などの費用
  • 什器やパソコンなどの費用
  • 電子カルテや予約システムなどの費用
  • スタッフを雇用するための費用
  • 各種の申請などの費用
  • ホームページや看板・チラシ・名刺などの広告宣伝のための費用
  • 開業コンサルティングの費用
  • 内覧会の費用

これらの金額を具体的に述べることはできませんが、精神科クリニックでは4,000万円ほどかかり、これくらいの金額が適正な金額です。そのうちの半分程度が、内装工事費になります。他の診療科目では、レントゲン装置などの医療機器を必要とするため、初期費用が1,000万円~3,000万円ほど追加で必要になります。

具体的な金額として細かく記載できない理由は、テナント契約の費用は開業場所の相場や物件の広さによって大きく変わります。また、内装工事費も、広さによっても異なりますが、現在では世界情勢の問題から建築資材が高騰しているため、内装工事費も上がり続けています。また、ホームページの費用は、クリエイターさんによって金額が大きく異なり、20万円ほどの廉価で制作してもらえる場合もあれば、デザインや写真撮影、SEO対策などもしっかり行って100万円以上かかる場合もあります。

後ほど解説しますが、精神科クリニックの設備費用は「4,000万円ほどに抑えた方が安定経営がしやすい」ということで、理想を追求して高額な初期投資になってしまうよりは、上限を決めて開業を計画していくことも必要です。

運転資金の用途と目安となる金額

運転資金とは、開業後に経営が黒字化するまでにかかる費用を補填するための資金です。また、患者さんの診療は保険を使うため、売上高の約70%が健保組合からの支払いになりますが、入金が2ヶ月ほど後になるので、その間の費用を賄う資金も必要となります。

一般的に、保険診療の報酬が入金する時期は2ヶ月ほど後になります。診療報酬の約70%の売上の支払いが2か月後になりますので、その間の運転資金が必要となるのです。

クリニックは、開業当初から黒字化することは稀で、少しずつ患者さんが増えていき、損益分岐点を超えてから黒字化します。黒字化しても、保険診療の売り上げの入金が2ヶ月ほど後なので、それまでに支払いが必要な費用を、運転資金から出して、クリニック経営を続けていくわけです。(損益分岐点売上高や損益分岐点患者数の計算方法は、「クリニックを開業する時の損益分岐点の計算方法と低リスク経営」をご覧ください。)

運転資金で支払う費用には、次のようなものがあります。

  • テナント家賃
  • スタッフの人件費
  • 水道光熱費
  • 医薬品・診療材料などの変動費
  • ホームページの運用を含めた広告宣伝費

開業資金はすべて金融機関から調達すること

開業資金はすべて金融機関から調達すること

開業資金は、銀行などの金融機関からの融資で賄うことが基本です。

先生によっては、将来の開業に向けて自己資金を沢山貯めている方もいらっしゃり、「設備資金の4,000万円をすべて自己資金で賄いたい」と言われる先生もいます。それだけ貯めているということは素晴らしことですし、借入金をしなくても良いことは経営の安定にもつながると思います。

ところが、クリックを開業するということは、先生が経営者になるということですから、想定外の事態が生じた場合には全ての責任をご自分でとらなくてはなりません。患者さんが計画通りに来なかったり、先生が病気や事故で休診する事になってお金が入ってこなくなってしまう場合もあります。万一その様な状況になった場合には、手持ちの資金が潤沢にあるほど事業の安定性を担保することができます。そのために手持ち資金はできるだけ手をつけないで、開業資金を借入で賄うことが必要になるのです。

また、事業活動の基本として、借入金の返済を続けながら事業活動の利益を確保していくことが求められますので、その様な経営ができない様な事業であれば初めからやらない方が良いと言うことです。

クリニック経営に限らず、どのような事業でも最初は経営が厳しいものです。自己資金も含めた運転資金が十分にあるうちに、早期に経営を軌道に乗せて黒字にできる様にする事が大切です。そのために、当社では開業資金は全額を金融機関からの融資で賄うことをおすすめしています。

もちろん、当社の開業支援では、借入金の返済をしっかりできるように、入念なシミュレーションを繰り返して適切に事業計画を立てているのでご安心ください。

自己資金がゼロ円だと問題ですか?

クリニックの開業に必要な資金は、自己資金を使わずにすべて借入金から賄うことをお伝えしましたが、自己資金がゼロ円だったとすると、これも問題があります。その理由は、立地条件の良いテナント物件とのタイムリーな契約が難しくなるからです。

精神科クリニックの開業準備のスタートは、開業コンサルタントに相談することから始まります。次に開業候補地のエリアから空テナントを探し、良い物件が見つかったら契約をします。テナント契約をしたら、そこから半年後に開業となります。

ここで、テナント契約をするときに敷金や礼金、仲介手数料などの費用が必要となります。「この資金も借りて支払えば良いのではないか?」と思われるかもしれませんが、金融機関からの融資が実行されるのは、テナント契約を終えてから2ヶ月後くらいになります。その間、大家さんが支払いを待っていてくれたらいいのですが、立地条件の良いテナントであれば大家さんからは、「契約金を先に支払ってもらえる人に貸す」と言われます。

つまり、自己資金として手持ちの現金がないと、立地条件の良いテナント物件を見つけたとしてもタイムリーに契約することができなのです。立地条件の悪いテナントですと、患者さんの集患が難しくなり、安定経営が難しくなる場合が多いです。そういったことで、ある程度の自己資金を用意して、契約に必要な費用を立て替えて支払えることが必要になります。

外来医師過多区域での開業であれば1,000万円、その他の都心から離れた場所であれば500万円以上は準備しておいた方が良いと思います。

融資が受けられたら、立て替え払いしておいた資金を、先生の手元に戻し、それを経営が安定するまでの保険として予備の運転資金にしてください。

精神科クリニックを安定経営するためのポイント

精神科クリニックを安定経営するためのポイント

精神科クリニックを安定経営するためのポイントは、次の3つになります。これら3つをすべて満たすことで、開業後に安定経営ができます。

  • ランニングコストできるだけ低く抑えること ⇒ できれば医師優遇税制を活用すること
  • 立地条件の良い場所で開業すること
  • 運転資金は十分に用意すること

【ポイント1】ランニングコストをできるだけ低く抑えるための準備をする

クリニックを経営していく中で、毎月かかる費用がランニングコストです。次の項目が固定費として大きな金額を占めます。

  • テナント家賃
  • 人件費

テナント家賃は、テナントを借りるときに契約した金額が毎月かかります。坪単価が2万円のテナント物件で30坪のところを借りると、毎月60万円の費用がかかります。また、契約の更新時には更新手数料もかかります。ですから、なるべく家賃の低いテナントと契約する方が得策です。

次に人件費です。人件費には、給料として支払う分と社会保険料などの費用がかかります。「従業員数が少なければ社会保険に加入しなくても法的には問題ない」と思われるかもしれませんが、雇用の条件を良くしておかないと、職員さんの求人募集のときに苦労することになります。

人件費を安く抑える方法は、できるだけ人を雇わないことです。例えば、クリニックを予約制にして、受付のパートスタッフを1人だけにして、採血などは先生ご自身で行うことです。採血をするために、看護師さんを雇う事になったら、それだけ人件費が増加することになります。

できれば、先生自身で採血ができるように、開業準備中に練習しておいてください。そして、診療に支障のない範囲で、できるだけランニングコストを低く抑えられるように事業計画を立てることが大切です。

【ポイント2】開業場所はできるだけ立地条件の良い場所を選ぶ

開業場所を選ぶポイントは、なるべく立地条件の良い場所を選ぶことです。立地条件の良い場所とは、集患しやすい場所であることと、適切な広さをもつ物件であることです。

ポイントは駅前の繁華街のような人通りの多い場所を選ぶことです。また、精神科クリニックを利用する人の多いオフィス街のある駅前も理想的です。

そういった場所のテナントを借りる場合は、賃料が高くなりがちですが、テナント賃料を抑えながらも集患がしやすいことを優先してください。なぜなら、テナント賃料がいくら安くても、集患がうまくできなければクリニックの経営は成り立たないからです。

しかし、良いテナントでも賃料が高すぎてはランニングコストが上がってしまうため問題です。

そこで、多少賃料の坪単価の相場が高かったとしても、広さがコンパクトな物件を選び、費用の割に集患がしやすい場所を選ぶことをおすすめします。

立地条件で、開業後の成否が決まると言っても過言ではありませんから、当社の開業コンサルティングでは特に立地選定に力を入れて、先生と協力して入念に開業の場所探しをしています。候補地が見つかったら、コンサルタントといっしょに街並みやテナントを見て、立地条件が良いかを最終判断するようにしています。

【ポイント3】運転資金は十分に準備する

運転資金とは、クリニックが開業した後に、黒字化して診療報酬が振り込まれるまでの資金繰りを賄うための資金のことでした。この資金は、できるだけ多く十分に準備しておくことが大切です。その理由は、現金が毎月減っていくと、資金繰りが心配になって経営に対する不安感が大きくなってしまうからです。

おおよその目安は、毎月支払う固定費の12ヶ月分あれば良いと思います。固定費とは、患者さんの数がゼロであったとしてもかかる費用のことです。主には、テナント賃料や人件費、水道光熱費などになります。それらの合計金額の12ヶ月分あれば安心できます。

金額にすると、おおよそ1,500万円ほどです。他の診療科目であれば、医療機器を扱う看護師さんの人件費も必要となり2,000万円以上あると安心ですが、精神科クリニックは他の診療科目とくらべて軽装備で開業しやすいと言えます。

開業資金は借入金からすべて賄うことが基本ですが、先生が準備した自己資金を念のため予備の運転資金として置いておき、いざというときのために備えておくことをおすすめします。

当社の開業コンサルティングでは、立地条件の良い開業場所を入念に選定し、経費削減をして先生の手取りが最大化され、資金調達しやすい事業計画を立てる開業準備をサポートしています。

医師優遇税制の活用

個人事業主としてクリニックを開業する先生が、手取りを最大化するために欠かせないものが、医師優遇税制の活用です。

個人クリニックでは条件が満たされると、特別措置法第26条を活用した医師優遇税制が受けられます。この税制は、個人クリニックにとってとてもお得な税制です。

この税制を活用することで、精神科クリニックの開業医であれば、手取りを毎年3,000万円にすることが可能だからです。年収ではなく、税引き後の手取りが3,000万円です。この手取りを年収に換算すると、約5,000万円相当になります。

特別措置法第26条の要約

特措法第26条の制度を要約すると次の通りです。

  • 個人事業主であること
  • 年間の売上高が、保険診療で5,000万円以下、自由診療で2,000万円以下であること
  • これらの条件が満たされて、税務署に申告すると概算経費が認められ、実際にかかった経費との差額を手取りとできる

概算経費とは、領収書を一枚ずつ集計しなくても、「売上高の約70%を経費として認める」というものです。例えば、保険診療報酬が1月~12月で5,000万円だったとすると、そのうちの7割、約3,500万円を経費として申告して良いと言う制度です。

特別措置法第26条を活用したときの手取り計算(試算)

保険診療報酬が1月~12月で5,000万円だったとすると、そのうちの約3,500万円を経費として申告できます。

しかし、精神科クリニックでは普通そこまで多くの経費はかかりません。テナントの賃料とスタッフさんの人件費などを合わせても1,500万円ほどに抑えることも可能です。そうすると、概算経費3,500万円と実際にかかった経費1,500万円の差額2,000万円には所得としての申告は必要ありませんので、無税で先生の手取り収入となります。

そして、税務申告では売上高5,000万円から概算経費3,500万円を引いた金額1,500万円が税務申告での年収となりますので、そこから税金と保険料などを差し引いたときの手取りが約1,000万円となります。

ここで、差額分の手取り2,000万円と年収の手取り1,000万円を合わせた3,000万円が、先生の手取り収入となります。

医師優遇税制を活用しない一般的な開業で、手取り3,000万円を得るためには、売上高が8,000万円~1億円ほど必要ですしから、医師優遇税制を活用することをおすすめします。

売上高5,000万円で医師優遇税制を活用したときと売上高1億円のクリニックでの手取り比較

特別措置法第26条を活用して手取りを増やすためのポイント

特別措置法第26条を活用して手取りを増やすためのポイントは簡単です。概算経費と実際にかかった経費の差額分が手取り収入となるわけですから、実際にかかる経費をなるべく低く抑えることです。

先ほど、精神科クリニックを安定経営するためのポイントのところで、テナント家賃と人件費を低く抑えることを解説しましたが、まさしく安定経営を目指すことが、特別措置法第26条を活用して手取りを増やす方法と同じ結果になります。また、概算経費で税務申告ができるようになるので、領収書を取っておいたり入力作業をしたり、税理士さんと顧問契約したりする必要もなくなりますので、さらに経費を浮かせることができます。

このようにできるだけ経費がかからないようにして、医師優遇税制を活用して手取り収入を最大化する開業方法のことを、「ミニマム開業」といいます。ミニマム開業については、「【精神科の先生必見】精神科クリニックのミニマム開業を徹底解説」をご参照ください。

医師優遇税制で手取り収入が増えるため、すでに競合となる精神科クリニックが近隣にあったとしても、経営を有利に運ぶことができます。

以上、精神科クリニックは開業しやすいかどうかを解説いたしました。精神科は、これらの内容を駆使することで、とても開業しやすい科目だと言えます。診療点数の見直しがあり、開業規制が始まった都内でも、まだまだ多くの需要があり、効率の悪い経営をしているクリニックが多いため、医師優遇税制を活用することで、十分に手取り収入を増やした安定経営をすることができます。

東京や神奈川、千葉、埼玉などの関東圏にて、精神科クリニックを開業して手取り収入を増やしたいとお考えの先生がいらっしゃいましたら、ぜひ当社までご相談ください。当社では、オンラインで無料にて開業セミナー&個別相談会を定期開催しています。

先生からのご連絡をお待ちしています。

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