心療内科・精神科クリニックの開業で失敗しないコツ

心療内科・精神科クリニックが急増中

新型コロナウイルスの影響で心療内科・精神科クリニックの患者が増加

心療内科・精神科クリニックが急増中

2020年に始まった新型コロナウイルスの拡散によって、これまでの社会の仕組みが完全に覆されてしまいました。ウイルスの感染を恐れて人や物の動きが止まり、経済が停滞することによって多くの企業が深刻な打撃を受けて、世界中で企業の倒産や失業が蔓延するという厳しい状況の三年間を過ごしてきました。

日本でも、2023年の3月からはようやくマスクの装着義務が緩和されて、入学式や卒業式なども従来の形式で行われるようになってきました。

このようなパニックとも言える三年間が、社会生活に及ぼした影響は計り知れない物があります。そうした状況が医療環境にも大きな変化をもたらすことになったのはいうまでもありません。

コロナ禍で一番患者さんが増えたのが、心療内科・精神科を標榜するメンタルクリニックです。社会活動の停滞と失業による経済的な不安が多くの人を精神的に追い詰めた結果、心の病気を発症する人が後を絶たなくなってしまったのがこのコロナ禍の三年間と言えるでしょう。

従来から開業していた心療内科・精神科クリニックの場合には、患者さんが少なかったクリニックにも新患が増えて経営的に順調になったところが多くありました。開業歴が長い心療内科・精神科クリニックの場合には、初診の予約を取れるまでに数ヶ月先でないと無理なクリニックもあり、実質的に新期の患者さんの受付を断っているクリニックも出てきました。

心療内科・精神科クリニックの増加

そうした心療内科・精神科クリニックの患者増の波に乗って、クリニックをチェーン展開している幾つかの医療法人は、ターミナル駅の目立つ立地のビルに沢山の診察室を備えた、大規模な心療内科・精神科クリニックを開院するようになりました。また、これまで心療内科・精神科とは関係のない診療分野で、美容整形の様に自費診療を中心としていたクリニックなども、分院開設などの形で大きな設備投資のいらない心療内科・精神科クリニックの開設に乗り出す様になってきました。

こうした世の中の流れの中で、現在心療内科・精神科のクリニックの新規開設が急増している状況です。

心療内科・精神科クリニックの開業で失敗しないコツとは?

この様な心療内科・精神科クリニックが急増している状況の中で、これから心療内科・精神科のクリニック開業を目指している先生の中には、焦りと不安をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

多くのクリニック開業をご支援させていただいてきた経験から言えることは、「このような状況でも失敗しないコツがある」ということです。それは開業の場所と資金とタイミングを大切にするという事です。この3つの要素についての詳細は、「クリニック開業で失敗しないために必要な3要素」をご覧ください。

これから心療内科・精神科のクリニック開業を目指している先生に、新規開業で失敗しないコツを、次の3つの具体的な内容に絞ってお話いたします。

  1. 1.立地条件にこだわること
  2. 2.内装は心が落ち着き安心できる雰囲気が大切であること
  3. 3.院長自身が採血できると経営がとても楽になること

心療内科・精神科クリニックは立地条件にこだわること

心療内科・精神科クリニックは立地条件にこだわること

心療内科・精神科のクリニックを開院しようとする場合に、まず始めに押さえなくてはいけないポイントとして、「クリニックが分かりやすく入りやすい場所にある」ということが大切です。

対象とする患者さんのための立地

クリニックの看板などで精神科を標榜しているからといって、街中のクリニックに精神病の患者さんが大勢通院してくるということではありません。

近年、景気後退や新型コロナ、物価高の影響などによる職場環境の激変や、人員整理・離職・倒産などといった問題が発生しています。それまでごく普通の日常生活を送っていた人にも、適応障害やうつ病などのメンタル面での問題を発症する患者さんが増加してきました。

クリニックの開業を考えるなら、増加している患者さんを対象とする事で、クリニック経営は成功しやすくなります。

始まりは心の症状もからだの症状も軽い状況の変化から始まりますので、その様な変化が感じられた場合に、すぐに相談に行かれる分かりやすい場所にクリニックを開院していることが理想的です。

高齢の親御さんの認知症を診てもらうということも、今は一般的です。ストレスの多い今の社会では、誰もがカウンセリングを受けたいという気持ちから、心療内科・精神科クリニックに通院する可能性が高くなっています。

そういったことからも、分かりやすく入りやすい場所にクリニックがあることが大切です。

心療内科・精神科に通う患者さんの動向の変化

昔は、経済的な困窮や家庭の事情などから心の病気を発症する患者さんが多く、生活保護を受けていたり仕事にもつけない人や、躁状態や薬物中毒などで問題を起こす人もいたために、精神科に通院するのは後ろめたいという気持ちがありました。そのため、心療内科・精神科のクリニックを開業する際に、患者さんがクリニックに入るのを知り合いに見られない様にするために、裏通りの雑居ビルなどに開業場所を選ぶということが多かった様です。

ところが現在の心療内科・精神科クリニックでは、患者さんの主流は生活水準が高く高学歴で知的レベルも高い患者さんが多くなっています。そうした人たちの多くは心療内科・精神科クリニックに通院することを、一般的なクリニックへの通院や治療と同じレベルで考えており、ご自身は「心療内科を受診する」「メンタル面での相談をしに行く」という意識を持っています。

クリニックの標榜と診療は精神科であったとしても、患者さんの受け入れは心療内科がメインである様にして、患者さんが分かりやすく便利な場所に、心療内科・精神科のクリニックを開院することです。すると患者さんの数が増えやすくなります。このように、対象とする患者さんの動向に合わせた立地で開業することが、クリニックを成功させるコツです。

心療内科・精神科クリニックの内装は心が落ち着き安心できる雰囲気が大切

心療内科・精神科クリニックの内装は心が落ち着き安心できる雰囲気が大切

最近では心療内科・精神科で開業する医師にも、雰囲気の良い内装のクリニックを作るという意識が増えてきました。

心療内科・精神科クリニックの増加

心療内科・精神科クリニックの増加はこの20年くらいの間に見られてきた現象です。

精神疾患は現代病とも言われ、患者数は年々増加傾向にありましたが、コロナ禍の中で児童から高齢者に至るまでのあらゆる年代で一気に心療内科・精神科に受診する患者さんが増加してきました。

かつての精神病院は統合失調症などで自傷・他傷などの問題行動を起こす人に対して、閉鎖病棟への入院隔離療養を主体とした社会防衛的な政策がとられてきました。要は「社会生活の中で危ない人は精神病院の中に入れておこう」という政策です。戦後の貧しい時代にはこうした社会的な背景が大きくて、昭和30年代から国が積極的な低利融資の制度を作り、全国で精神病患者の収容施設としての精神病院の新設を促進してきました。

その結果、全国で多数の精神病院が開設されて、多くの精神病患者が入院治療をするという状況になりました。

その後の社会環境の安定化と高度成長の時代を経験することによって、精神疾患の内容にも質的な変化が起こり、精神病患者の隔離を目的とする収容施設から認知症などの家庭や地域で受け入れ先のない人を収容する「社会的入院」という側面が大きくなってきました。

そこで、「地域社会を防衛する」という精神病院の収容施設の役割が変わってきたということもあり、政府は入院施設の統廃合や削減を進めて、精神疾患の治療を通院で対応する施設の拡充を進めることになりました。

こうしたことから、現在の様に通院型の心療内科・精神科クリニックが多くなってきました。

かつての精神病院の雰囲気を求めるドクターの問題点

今も、病院に勤務する精神科の医師が開業を考えた場合に、かつての入院治療を主体とした病院の外来診察室の雰囲気を、新規開設のクリニックに思い浮かべてしまうドクターがいます。

以前開業相談を受けてお話ししたあるドクターは、「精神科のクリニックはマンションの一室で机と電話があればそれでできるから、心療内科・精神科のクリニックを開業するのに設備投資は必要ない。」という考え方を持っていました。

そのようなクリニックに、生活水準が高く高学歴で知的レベルも高い患者さんが来てくれるでしょうか?

システム的な経営を真似したいドクターの問題点

また、心療内科・精神科クリニックをチェーン展開している医療法人などは、駅前に大きなスペースでたくさんの診察室と心理士さんのカウンセリング室を備えて、流れ作業的に効率良く多くの患者さんの診療をこなして、大きな売り上げを上げています。そこで働く医師からの開業相談を受けた時に、「とにかく効率よく多くの患者さんをこなして大きな売り上げを上げているので、自分もその法人がやっているシステムをそのまま真似して開業したい」というお話をしておりました。

たしかに今の保健医療制度の中では、そうしたやり方でたくさんの売り上げを上げているクリニックもありますが、非常勤医師も含めて多くの医師が入れ替りに診療にあたるという体制は、患者さんにとって如何なものかという疑問も湧いてきます。

心が落ち着く雰囲気の内装で評判のクリニック

心の病気をもって相談に来る患者さんには、待合室含めてこころを落ち着けてリラックスできる空間を提供することがまず何よりも大切なことと言えます。クリニックによっては、アロマを焚いているところもあります。

10数年前に地方で心療内科・精神科クリニックを開業されたドクターは、「都心の外資系のホテルに来た様な雰囲気を持つクリニックにしたい」ということをご希望され、当社にて開業支援させていただき、その夢を実現する様なクリニックを完成することができました。

患者さんやそのご家族からの評判も上々で、先生の人柄もあって一度来院した患者さんは他のクリニックに転院することがなくなりました。待ち時間が長くなっても雰囲気の良いクリニックで待つことに抵抗なく、予約時間の前からクリニックに来院して待合室でくつろいでいるという人もいるようになりました。

心療内科・精神科クリニックでは他科のように、高額の医療機器に対する設備投資がいらないことから、クリニックの内装と雰囲気の良い家具の配置などに費用をかけることができます。患者さんに心地よい空間を提供することが心療内科・精神科クリニックの開院を成功させるコツです。

院長自身が採血できると経営がとても楽になる

採血の経験が少ない心療内科・精神科のドクター

院長自身が採血できると経営がとても楽になる

これまで多くの精神科の医師の開業をサポートとして来た経験から、研修医の時以来、注射や採血の経験がないというドクターが多くいました。精神科という診療科の特徴から、患者さんとのお話が中心で薬物血中濃度などの測定が必要な場合には看護師さんが採血をするということが一般的でした。

大学病院に勤務する看護師さんの中にも、注射・採血の業務を行わないという理由から、長年そのような仕事のやり方を続けていると、看護師さんでも注射や採血ができなくなってしまいます。

クリニックの開業相談にお見えになる精神科の先生方の多くは、「時々採血も必要となるので看護師さんを雇っておきたい」という考えを持っているようです。

キャリアの長いベテランの精神科医であるほど、採血や注射の手技から遠ざかっているので、看護師さんの手を借りたいという気持ちになるのでしょう。

採血のためだけに看護師を雇ことは経営の無駄が大きい

心療内科・精神科クリニックを新規開業する場合には、受付医療事務のスタッフと臨床心理士さんの勤務が必要となりますが、他科のように看護師さんがいなくては診療ができないということはありません。ご承知のように看護師さんはいつも売り手市場なので、看護師さんを採用する場合には人件費がかなり増加してしまうことになります。

ドクターが病院に勤務していた時には医師の役割はオーダーを出すことであり、看護師さんが採血や注射をすることが当たり前でしたが、その時の看護師さんの人件費は経営者である病院が支払っています。

ところがいざ開業するとなると、当然雇用するスタッフの人件費の全てを院長先生が支払うことになります。

開業当初は患者さんも少ないのですが、それでも受付には2名程度のスタッフを置いておかないと業務が回って行きません。言ってみれば新規開業のクリニックは、極めて業務効率の悪い状況で、スタッフを雇わざるを得ない状態です。そうした時に、たまに必要となる採血のために人件費の高い看護師さんを雇用するということは、開業時の赤字を増やす大きな原因ともなります。

院長自身が採血できると人件費が大幅削減になる

そこで早期に経営を安定させるために必要なことは、院長自身が採血をできるように練習することです。開業を思い立ってから開業が実現するまでには普通一年くらいの期間を必要とします。時間は十分にありますので、研修医に戻ったつもりで開業までの準備期間中に採血の練習をしてください。

このように開業直後は、不要な人件費を払う必要がなくなるようにすることが、心療内科・精神科の新規開業を成功させるコツです。

患者さんの数が増え、院長が忙しくなって採血をしている時間がなくなるぐらいになってから看護師さんを雇っても遅くはありません。

心療内科・精神科クリニックを開業させて失敗しないための具体的なポイントとして、立地条件、内装、採血について述べてきました。他にも失敗しないためのポイントがあり、「心療内科・精神科医院開業を支援するクリニック開業コンサルティング」でご紹介しています。ご参照ください。

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