勤務医を辞めたいと思った時の注意点と開業準備

勤務医を辞めたいと思った時の注意点と開業準備

今更ながらですが、勤務医の労働環境が大変に過酷であることはよく知られているところです。

大学病院などでは、昨今言われている働き方改革の流れの中で、研修医や若手のドクターなどには過重な勤務にならないような配慮がされているのですが、病院内でしなければならない仕事の量が減っているわけではありません。そのため、若手の仕事量が減っている分は中堅どころのドクターが負担しなければならなくなって、ますます労働環境が悪化するという事態を招いています。

開業を希望する医師の相談を受ける中で、そのような状況から解放されたいという先生が少なくない割合でいます。

今回は、勤務は過酷であっても医師としての仕事と生活の安定を保証された勤務医の生活から、退職して開業しようと思った時の注意点と開業準備についてお話しします。

クリニック開業を成功させるための3要素とは、場所と資金とタイミングです。これらを開業の具体的な準備に入る時に真剣に考える事が重要です。

でも、「なんとなく開業を目指している」とか、勤務医としての仕事に限界を感じ始めて、「いずれ開業したい」と思い始めた時にするべきことがいくつかあります。

その中で一番大切なことは、ご自分の医師としての財産を作っておくことです。

この財産というのは、お金のことではなく、次の3点です。

  1. 1.医師としてのスキル
  2. 2.銀行融資がスムースに行われるための準備
  3. 3.患者さん獲得のための準備

こうした、勤務医のうちに築いておきたいお金以外の財産について解説いたします。

1,医師としてのスキル

医師としてのスキル

まず、絶対的に必要なことは、医師としてのスキルです。

開業してクリニックの院長となれば、診療の責任を全て一人で負わなくてはなりませんので、医師として一人前の技量を持っていることはもちろんですが、その場合でも常に研鑽を怠らないことが大切です。

独立起業する人に求められるスキルの高さとは?

一般企業に勤務する人たちが独立起業する場合には、その会社の中でもトップクラスの実力があって初めて独立起業を目指すのが普通です。

それでも、企業の中でトップクラスだと認められた実力だけでは、厳しい一般社会の中では通用しないことが多いです。その証拠として、独立起業した人の中では、1年以内に半数が廃業して、5年以内に8割が廃業して、10年経っても残っているのは全体の1割程度というのが相場です。

そのような世間一般の独立起業は、時代の流れの中で求められることが常に変化して行く状況にありますので、同じ人であっても時代のニーズにマッチしている起業であれば成功するし、そうでなければ廃業しなくてはならない厳しい状況に直面することになります。

この流れは、クリニックを開業する医師にも来つつある兆候にあります。

開業した医師にも求められる患者対応とスキルの高さについて

また、開業して成功するためには、実力だけでなく、患者対応も成功するための大きな要素になります。

世間一般の状況と比べると、医師のスキルというのは、例えてみれば料理人のスキルに似たものがあるようです。

飲食店がたくさん並んでいる繁華街でも、美味しいお料理を出すお店には行列ができますが、不味い料理しか出て来ないお店には二度と行きたいとは思いません。

開業医のスキルもこれに近いことが言えます。

特に歯科・眼科・耳鼻科・皮膚科・小児科など、医師の治療スキルが患者さんにも良く分かる科目では、下手な治療しかできないクリニックには、「あそこは腕が悪い」という噂も広がり、患者さんが寄り付かなくなってしまいます。

一方で、高齢者の慢性疾患を対象とするような内科系のクリニックの場合には、少し事情が変わってきます。高齢者の疾患は、主な病状に短期間の変化が表れにくいためです。病状の適切なコントロールを継続するためには、医師の指導を素直に受け入れてもらえるような雰囲気作りが、治療成績に大きく影響してきますので、患者さんに寄り添う優しい対応が大切です。

このように、ご自身がどのような分野の診療科目なのかによって、求められるスキルが異なります。

ともあれ、どのような診療科目であろうとも、良い結果を出せることを最優先として医療技術を研鑽しておくことが最も大切な準備と言えるでしょう。

2.銀行融資がスムースに行われるための準備

銀行融資がスムースに行われるための準備

次に、銀行融資がスムースに受けられるような準備をしておくことが、理想的なクリニックを開業させるための財産になります。

クリニック開業の資金調達は銀行融資が一般的

クリニックの開業準備をスムースに進めるためには、必要な資金調達を予定通りに進めていくことが重要です。

開業資金の大半は銀行融資による資金調達が一般的です。これまで開業支援をしてきた中で、ごく少数ですが開業に必要な資金を全額自己資金で賄う先生もいました。しかしながら、そうしたことはあくまでも例外で、基本的には銀行借り入れで開業資金の調達をする必要があります。

銀行はどのようなドクターに融資してくれるのか?

銀行が開業資金の融資を行う場合、貸したお金をきちんと返してくれるという保障が必要となりますので、安心して資金を融資できる相手かどうかという判断を行います。そのために、銀行はまずは開業希望の先生に対する身上調査を行います。

先生の住宅ローンを始めとして、車のローンや、クレジットカードの支払いなどの、様々な金融情報がCICという信用情報機関に登録されています。それらの情報を銀行は調査するのです。

こうした登録機関の情報にローンの滞納や、サラ金などからの借り入れがないということが、先ず融資を受けるための前提条件となります。

節税対策をしているドクターへの融資について

多くの先生方が、不動産会社から節税対策としての投資用マンションの購入を勧められた経験があると思います。

中には、何軒もの投資用マンションを購入したり、ニュースで報じられたようなシェアハウスの投資話に乗って数億円のローンを組んでしまった先生もいます。

勤務医として毎月安定した収入がある場合には、こうした投資用不動産の購入も一定の節税効果があるかもしれません。給与収入に対する節税ができるということは、結果的に投資物件が赤字経営となっているために所得が減っているので、支払う税金も減額されているということです。

給与所得という安定収入がある状況では、このようにすでに赤字経営に陥っている個人事業主であっても、それなりに生活は続けられます。しかし、独立開業した場合にはこれまでの勤務医時代の安定した給与収入がなくなります。

そのような状況で、赤字経営の投資マンションを持っている場合には、創業のリスクに加えて、不動産の赤字経営に補填する資金が必要となる可能性があります。仮にそうなった場合は、融資した資金の返済もおぼつかなくなるために、銀行の審査では「融資の対象外」という判断をされてしまい、融資が下りなくなってしまいます。

1,000万円程度の自己資金を貯める

また、銀行から融資を受ける際には、少なくとも1,000万円程度の自己資金を持っているということも大切な前提条件となります。医師としてのそれなりのキャリアと収入があって、ある程度の預金がないと、本人にお金を管理する能力がないと判断されてしまうことになって、融資を受けることが難しくなってしまいます。

開業支援をする会社の中には、資金がなくても開業できるということを宣伝しているところもありますが、あまりお勧めできません。

独立開業を目指して経営者となったら、自分の給料のことを考える前に、テナントの家賃や人件費・借入金の返済など、色々な支払いをきちんと済ませるということが経営の大前提となります。

そのためにも、開業して利益を上げるという以前に、しっかりとお金の管理ができるような生活をしておくことが大切です。

それなのに開業するのに自己資金がないという生活をしているということは、「そもそもそのような人は開業すべきではないのではないか」というのが、コンサルタントとしての正直な感想です。

銀行からの融資を得るためにも、税金をしっかり払って、内部留保として少なくとも1,000万円位は貯めるようにしてください。

3.患者さん獲得のための準備

患者さん獲得のための準備

クリニックを開業したら、多くの患者さんに来てもらえることが、クリニック経営の安定につながります。そのためにも、病診連携で患者さんを獲得するために大切な準備があります。

成功確率が高いクリニックの開業方法「病診連携」とは?

病院勤務でたくさんの患者さんを診療しているドクターは、ご自身の売り上げが大変大きくて病院経営に貢献している場合でも、契約で決まった金額の給料しかもらえません。独立開業を考えているドクターの中には、そのことに不満を持っている方も少なからずいます。

金銭的な問題は抜きにしても、勤務医が少ないことから長時間の労働に体力の限界を感じて、退職して開業をしたいという医師もいます。

そうした場合に成功の確率が高い開業方法として、これまで病院で診ていた患者さんを連れて開業するという、病診連携を前提とした開業形態があります。

当社でも、できる限り病診連携の実現をお勧めしています。

病診連携でも失敗してしまうクリニックとは?

ここでよく言われることなのですが、病診連携を目指して勤務していた病院の近くで開業したものの、「案に相違して思ったほど患者さんがついてこなかった」という先生のお話を聞くことがあります。

それはご自分の実力を過信して、ただ勤務先の病院の近くで開業しただけで、患者さんは誰もついてこなかったということなので、言ってみれば当然の結果でもあります。

なぜ、病診連携でも失敗してしまうクリニックがあるのでしょうか?

病院勤務の医師が開業を考えるときに、これまで経験したことのない数多くの手続きを踏まなければなりません。

クリニックを開業する場所選びや開業の申請、内装工事など、開業準備で行ういずれのことも極めて専門性の高いものばかりです。これまで勤務医としての生活しか経験してこなかった医師にとっては、初めて直面することばかりなので、何を基準にどう判断してどのように決断しなくてはならないか、知らないことだらけです。

そこで多くの医師が開業セミナーを受けたり、医薬品卸や医療機器メーカーなどが行う開業支援を受けて開業への準備作業にかかることになります。

ところが、開業コンサルと名乗ってはいるものの、実態は大手企業の営業部隊の一環として、開業に関わる関係業者を集めてドクターに紹介するだけの、御用聞きのような支援なのです。このように会社を寄せ集めた場合の支援では、ほぼ全てのことを開業する医師が決めて、関係業者への指示をしなくてはならなくなってしまいます。

そうした開業準備を経験した多くの医師が、「開業準備はとても大変だった」と言います。落下傘開業でこれまでの勤務先との連携を考えない場合はまだしも、勤務先で診ている患者さんを連れて開業しようと準備している場合には、さらに開業の難易度が上がります。開業準備が具体的に進んでいくに連れて、そちらの方が忙しくなってしまい、勤務先で本来すべき診療業務がだんだんおろそかになってきます。そうすると、患者さんからの評判が下がってしまい、開業後の集患に支障が出てしまうのです。

クリニック開業準備と病診連携の失敗しやすさとの関係

特に、内装工事が始まったり、医療機器の選定や契約をしなくてはならなくなってきた開業の数ヶ月前くらいになると、次々と大きなお金の支払いが決定していくので、「万一開業が失敗したらどうしよう」という不安が大きくなってきます。そういった不安を抱えながらも、今更引き返すことができないというジレンマを抱えて、色々な業者さんへの指示を続けしながらも、心の中では開業に対する希望よりも失敗してしまった場合の不安がいっぱいに広がっていってしまいます。

こうした心理状況の中では、毎日の診療にも身が入りません。開業のための業者さんとの打ち合わせの為に、勤務時間中でも不在となることが多くなり、余計に患者さんからの評判が悪くなってしまいます。

ご自分の開業準備のために、患者さんの診療や病院の勤務がおろそかになったりした場合、たとえその先生が勤務していた病院の近くで開業したとしても、ついてきてくれる患者さんがいるでしょうか。

もともと患者さんが病院にかかるというのは、病院のブランドを信頼して来院するのですから、主治医が退職すれば後任の医師に診てもらうことに抵抗はありません。

病診連携成功のポイントは「病院勤務をおろそかにしないこと」

以前の主治医が開業したときに、患者さんが主治医についていこうという気持ちになるのは、「病院のどの医師よりも親身になって診療をしてもらっていた」という気持ちがあるからではないでしょうか。また、病院に勤務するスタッフにしても、自分の開業のためにいい加減な勤務態度で、周囲に迷惑をかけているような医師には、「開業していなくなってホッとした」という気持ちになるのではないでしょうか。

これでは、病院スタッフは「開業した後に病院の患者さんを紹介してあげたい」という気持ちもなくなって、病院連携など上手くいくはずもありません。

病診連携で安全な開業を成功させたいと思った場合にこそ、目の前の患者さんに真剣に向き合って、退職する最後の日まで病院勤務をおろそかにしないことが開業準備の大切なポイントとなります。

どのような開業コンサルタントに依頼するのか?

どのような開業コンサルタントに依頼するのか?

これらのことから、相談すべき開業コンサルタントの資質が見えてきたことと思います。それは、一言で言えば「開業準備から開業後までのあらゆることに精通し、一貫したアドバイスや実務支援をしてくれるコンサルタント」です。

当社の開業コンサルタントは、長年の経験と実績によって、開業準備から開業後までのあらゆるアドバイスや実務支援をしています。

「勤務医を辞めて、クリニックを開業したい」とお考えのドクターは、ぜひ当社の開業コンサルティングをご利用ください。

とは言え、まずはコンサルタントとの相性や「本当にトータルでサポートしてくれるのか?」という見極めも大事です。

当社では無料のWebセミナー&相談会を随時開催しています。そこでは、人生設計や開業準備など、さまざまなご相談にも対応しています。

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