クリニックの内装工事の前にアスベストの事前調査は必須か?

クリニックの内装工事の前にアスベストの事前調査は必須か?

アスベスト(石綿)の健康被害は、よく知られたことです。医師であれば、なおさらご存じのことでしょう。

アスベストは断熱性や遮音性に優れた万能の建材として、1970年代から80年代にかけて、建築工事の際にアスベストを含む建材が大量に使用され、90年代半ばまで続けられてきましたが、平成18年(2006年)9月1日に、労働安全衛生法施行令の改正版が施行され、アスベストの使用が全面的に禁止になりました。

そして、令和4年4月1日より、クリニックの入居もそうなのですが、テナントの内装工事をするときに、その床面積が80m2を超える場合、もしくは工事費が100万円以上となる場合には、既存建物の建材にアスベストが含まれているかどうかの事前調査と報告が義務付けられました。

床面積が80m2以下の小さな居抜物件をそのまま利用する場合は別として、クリニックの内装工事行う場合は、必ず100万円を超えてしまいます。そして、医療機関の場合は、健康被害には特に配慮する必要があるため、当社ではテナント契約の前に、必ずアスベストの有無を事前に調査するようにしております。

以下、事前調査のことや、気になる事前調査の費用負担、アスベストが発見されたときの撤去費用負担などについてご説明いたします。

令和4年4月1日から、アスベストの事前調査が義務化

令和4年4月1日から、アスベストの事前調査が義務化

令和4年4月1日から、床面積が一定規模以上の建物や特定の工作物の解体や改修工事を行う前に、その建物にアスベストが使用されていないか、アスベストを含んだ建材が使用されていないかを、事前調査し報告することが義務付けられました。

クリニックの内装工事もこれに該当し、次の2つのどちらかに合致すれば、アスベストの事前調査と報告の義務が生じます。

  1. 1.内装を解体する部分の床面積が80m2以上の場合
  2. 2.内装を解体しなかったとしても内装工事費が100万円以上の場合

この条件であれば、クリニックのほとんどの内装工事が該当します。

なお、調査報告は、元請業者が厚生労働省と環境省が運営する石綿事前調査結果報告システムにログインして行います。

アスベストの事前調査とは?

アスベストの事前調査とは、解体や改修工事をしようとしている場所に、アスベストが使用されていないかの調査を行うことです。工事をするときに、誤ってアスベストが飛散して新たな健康被害を起こさないようにするために義務付けられました。

アスベストが使用されてきた方法には、アスベストを壁や天井に吹き付けたり、建材に混ぜたり、パイプに巻いたりと、さまざまなタイプがあります。

国土交通省「アスベストの飛散性・非飛散性とレベル1~3の整理」によると、撤去作業の作業レベルに応じて、3タイプに分けられています。

レベル1のものが最も飛散しやすく、撤去作業の難易度が高いものです。レベル3は撤去時に飛散しにくいものです。

国土交通省の参考資料によると、次のようになります。

  1. レベル1:石綿含有吹付け材
  2. レベル2:石綿含有保温材、 耐火被覆材、断熱材
  3. レベル3:その他の石綿含有建材(成形板等)

アスベストの事前調査では、どのレベルのアスベストが用いられているのかを、内装工事前に調査します。ここで、アスベストは直接吹き付けて使用されているだけでなく、内装建材に含有している場合もあることをご留意ください。

クリニックが入居するテナントが、前の利用者が1970年代から1980年代に入居したテナントをほとんどそのまま使用していたら、事前調査を行ったときにレベル3のアスベスト含有建材を発見する可能性が高くなります。

事前調査の内容

アスベストの事前調査は、令和3年(2021年)4月から、設計図書等の文書による調査と、目視による調査の両方を行うことが必要になりました。

実のところ、目視による調査だけでは、建材に使用されたアスベストまで調べることができません。そこで、建材の一部を検体として採取し、アスベストの分析を専門とする業者に依頼することになります。

また、事前調査を行う人は、誰でも良いわけではありません。令和5年(2023年)10月から建築物石綿含有建材調査者などの一定の要件を満たす者が行うことになりました。

詳細は、厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイト「工事の元請業者」をご覧ください。

事前調査は必須なのか?

上述したように、解体工事や内装工事をする前に、床面積や工事費によってアスベストの事前調査が必要になります。ですので、前の入居者の内装がそのまま残っている状態ですと、アスベストの事前調査が必要となります。

スケルトン物件の場合

スケルトン物件の場合

スケルトン物件の場合は、アスベストの事前調査は必要ありません。

スケルトン物件とは、建物の骨組みの状態の物件のことです。コンクリートがむき出しになっている状態ですが、そこに内装工事をしていくことで、クリニックに仕上がって行きます。

テナントビルの場合、前のテナントに入居していた方との契約が終了し、原状回復工事として内装を全撤去し、スケルトンにしてくれている場合には、アスベストの事前調査は必要ありません。

なぜなら、テナントをスケルトンに戻すときに、アスベストの事前調査がすでに済んでいるはずだからです。また、すでにスケルトンになっているので、調査でアスベストが発見されていたとしても、すでに撤去してくれています。

居抜き物件の場合

居抜き物件の場合

居抜き物件の場合は、そのまま利用することになるので、解体工事や内装工事が発生しないのであれば、アスベストの事前調査は必要ありません。

ただし、居抜き物件でも内装工事を行う場合には、工事費が100万円以上になるようであれば、アスベストの事前調査が必要となります。



アスベストの事前調査費用や撤去費用はいくら?

気になるアスベストの事前調査費用や撤去費用ですが、クリニックの開業を予定しているテナントの広さにもよることをご了承ください。

アスベストの調査費用は、25万円から30万円程度になるとお考えください。テナントの床面積が広く、アスベストの調査箇所が増える場合には、さらに高額になります。

内装工事をする前に、テナントをスケルトンに戻す解体工事をする場合の費用は、今までの経験上200万円から300万円程度です。

さらには、アスベストを天井などに吹き付けている場合のレベル1での使用が確認された場合には、プラス100万円から200万円ほど上乗せされることを想定しておいてください。

もし、事前調査でアスベストが検出されてしまっていたら、その撤去費用として100万円から200万円ほどが、解体費用に上乗せされます。アスベストの処理だけでなく、自治体などへのアスベスト撤去の申請をしたりするので、工事の日数が伸びてしまいます。

大家さんには、工事の日数が伸びてしまう分の家賃負担を免除してもらえるように交渉することも検討すべきでしょう。

アスベストの事前調査や撤去費用は誰が負担するのか?

アスベストの事前調査や撤去費用は誰が負担するのか?

アスベストの事前調査では、もちろん検査費用がかかります。そして、アスベストが検出されないことが望ましいですが、仮に検出されてしまった場合には、解体費用の他にアスベストの撤去・処分費用が別途かかります。

それらの費用を、誰かが負担して実施する必要がありますが、ほとんどの場合はクリニックの開業を目指している先生がご負担することになります。

テナント契約をした後の場合

クリニックのテナント契約をした後であれば、アスベストの事前調査費用は先生のご負担となります。また、アスベストの存在が確認された場合も同様で、アスベストの撤去・処分費用は先生がご負担することになります。

「アスベストが発見されたから、入居はしません」と言ったとしても、契約金を返金してはもらえません。

アスベストの調査費用や撤去費用を大家さんにご負担いただけるように、交渉することも可能ですが、契約した後では、入居者が払うことになってしまい、断られることがほとんどです。

大家さんにスケルトンにして頂く交渉をする

アスベストの事前調査や撤去費用を、先生がご負担しなくても良い方法は、大家さんに交渉して、テナントをスケルトン状態に戻してもらうことです。

この交渉で、大家さんが納得してくれた場合には、アスベストの事前調査費用や撤去費用は大家さんが負担することになります。

しかし、大家さんとしては、なるべくその金額を負担したくはないものです。出ていくお金を減らすことは、誰しも考えることです。その辺りは、入居がすぐに決まりそうなテナントなのか、入居が決まらずにずっと空いたままなのか、大家さんの気分なども関わってくると思います。

契約前の交渉では、大家さんから「費用を負担してくれないなら、居抜きのまま使用してくれる入居人を探す」と言われてしまい、入居を断られる可能性もあります。

人気の物件であったり、集患しやすいテナントであったりした場合には、他の入居者が決まる前にすぐに契約した方が、先生としては有利な場合もあります。テナント契約ができなければ、また物件を探すことから始めなければいけませんし、手ごろな物件がすぐに見つかるとも限りません。

まとめますと、クリニックの開業場所がテナント物件の場合、原状回復工事が済んだ状態のスケルトンであれば、アスベストの事前調査は必要ありません。しかし、居抜きで内装が残ったままの物件ですと、内装工事をする前に事前調査は必須だとお考えください。

また、事前調査でアスベストが発見された場合には、アスベストを廃棄するための高額の費用が別途かかります。また、工事期間も伸びることになります。

事前調査やアスベストの撤去費用を、大家さんにご負担いただく交渉もできますが、その場合には、大家さんから入居を断られる可能性もあります。

1日でも早いクリニックの開業を目指すのであれば、そういった費用負担も考慮しておくことが大事です。

当社のクリニック開業コンサルティングでは、クリニックの物件探しや内装工事だけでなく、アスベスト調査についてもご支援いたします。クリニックのスムーズな開業を目指されている方は、ぜひ当社にご相談ください。

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