ミニマム開業をするときの開業準備スケジュールは?準備内容と要点


勤務医の先生が、色々なご事情で勤務医を辞めて開業医になろうとした時に、当社では様々なご相談をお受けしています。
当社の開業コンサルティングでおすすめしている開業方法は、ミニマム開業です。
ミニマム開業とは、医師優遇税制を活用して年間の売上高(診療報酬の合計)を5,000万円以下に抑え、かかる経費を最小にして経営リスクを小さくしつつ、先生の手取り収入を最大化する開業手法です。クリニックの診療科目にもよりますが、先生の手取り収入を最大3,000万円くらいにもできます。
ミニマム開業による年収については、「医師がミニマム開業をしたときの年収はいくらになるか?」をご参照ください。
この記事では、ミニマム開業をするときの開業準備スケジュールと準備内容、その要点をご説明いたします。クリニック開業の全体的な流れを把握したい方は、ぜひご覧ください。
開業医になることを考えたとき
ミニマム開業をするかどうかに関わらず、開業準備を行うタイミングは、開業医になることをお考えになったときです。低リスクな開業を実現するためには、資金や集患のための準備が必要となりますので、早めに開業コンサルタントにご相談されることをおすすめします。
ミニマム開業の支援に知見と実績のある開業コンサルタント探し

ミニマム開業をするに当たり、先生が今まで経験したことのないような様々な準備が必要となります。小規模なクリニックであったとしても、開業コンサルタントに依頼しないで先生お一人で開業までこぎつけることは大変難しいことです。
また、ミニマム開業は、一般的な開業とは異なり、特殊な知見が必要になりますから、ミニマム開業に精通した開業コンサルタントに相談すべきことは、言うまでもありません。
開業コンサルタントに、サポートを依頼するかどうかは別として、「開業を思い立ったとき」が初めに相談するタイミングです。
開業を思い立ったときが、例えば開業の3年前だったとしたら、「少し早いのではないかな」と感じるかもしれませんが、それでも3年前に相談しておいた方が良いです。その理由は、早めに準備をしておくことで、先生ご自身の人生計画をじっくりと考えられることや、開業に必要な資金やスキルを蓄えておくことができるので、それが開業した時のクリニックの安定経営にもつながるからです。
開業コンサルタントとの面談による人生プラン検討

ミニマム開業をお望みになる先生の多くは、「子育てとキャリアを両立させたい」とか「医師の仕事以外にも研究や好きな活動をしたい」、「体力が無いので休みを多く取れる開業をしたい」といった、一見すると片手間の開業をする様な感じに見えて、経営的にやっていけるかどうか疑問になるようなご要望もあります。
開業コンサルタントに相談する際には、先生ご自身の人生計画や理想とするワークライフバランスと照らし合わせながら、どのような開業をすべきかといったアドバイスを受けながら、人生設計やクリニックの事業計画を立てていきます。
ここで立てる事業計画は、資金調達をするためのものではなく、おおよその収支をつかみ、どの様にしたらご自身の理想を実現できるかをシミュレーションするためのものになります。資金調達をするための事業計画は、テナント契約が決まってからで大丈夫です。
人生設計を立てた中で、「ミニマム開業が適切だ」という結論に達すれば、ミニマム開業の準備を進めていくわけですが、開業のベストタイミングというものがあります。例えば、子育てをしながら開業をしたいとお考えの女医さんであれば、お子様が小学校に上がるとか、受験を終えたタイミングに合わせるといった感じで開業を計画することも良いと思います。
ある程度の開業資金の蓄え

また、開業をするに当たり、ある程度の開業資金を蓄えておいた方が良いので、その資金ができるまで、しばらく待つこともあります。開業資金は銀行などの金融機関から融資を受けることが基本ですが、テナントを借りるときに手持ちの資金ですぐに契約できた方が、条件の良いテナントが出てきた時にも確実に借りることができるからです。
良いテナントが見つかるかどうかはご縁というところもあります。一般的に、テナント契約は先に申し込みをした方が優先されます。運よく良いテナントに巡り会えたら、手持ちの資金で速やかにテナントを確保することが大切です。
ミニマム開業をするときに準備しておいた方が良い金額は、開業場所にもよりますが、テナント契約に必要な資金としてはおおよそ500万円ほどです。その他にどれくらいの貯蓄があれば良いのかは、開業コンサルタントからアドバイスさせていただきます。
それ以上貯めて、「借金しないで開業したい」という方もいらっしゃいますが、できれば自己資金はいざというときのためになるべく手をつけないで置いておき、借入金を基本にしてクリニックの開業を計画した方が良いです。
開院1年前~半年前
開業1年前というのは、いよいよ本格的に開業に向けて動き出すときです。
ミニマム開業に適したテナント物件探し

最初に行なうことは、開業場所としてのテナント物件探しです。開業コンサルタントといっしょにテナント物件を探しますが、条件の良いテナント物件を見つけることはご縁とタイミングです。運よく良いテナントが見つかったとしても、別の人が先に契約をして取られてしまうこともあります。
そういったこともあり、当社の開業コンサルタントがテナント物件を探すだけではなく、先生ご自身でも気になる物件があれば、お知らせいただくことでコンサルタントと一緒に幅広く探していただいた方が良いわけです。良さそうなテナント物件を見つけたら開業コンサルタントにご相談ください。
開業コンサルタントが確認をして良さそうだと思ったものについては、先生とご一緒に実際にテナント物件の内見をして開業場所としての評価を行います。
テナント物件を実際に見ることで、ネットで写真を確認したときとは異なり、クリニックとして法規に適合しているか、電源や空調設備などが適合しているか、看板を効果的に取り付けられるかなどといった細かな情報が判りますし、不動産会社の担当者やオーナーさんに確認もできます。また、テナント物件の周りの街並みや雰囲気もつかめるので、集患に適した場所かどうかもわかります。
当社のコンサルタントは内見した時に大まかなレイアウトなどの提案もできるので、実際に開業をする際のイメージもつかめると思います。
テナント物件の場所によって、ミニマム開業が本当に低リスク開業となるのかどうかが決まるので、開業コンサルタントの知見や経験が試されるところです。
ミニマム開業をすることに適したテナント物件の基本的な条件は、「クリニックの開業場所でほぼ決まるクリニックの経営リスク」をご参照ください。
テナント物件の契約前に必要な確認

テナント物件の契約をする前に、必要な確認事項があります。その主なものとしては、
- 1.給排水の位置とエアコンの増設
- 2.火災報知器などの消防設備
- 3.診療に必要な電源容量
クリニックは消防法上の「特定用途」という範疇に入るので、テナントとして入る物件には、一般的なオフィスビルよりも厳しい規格の防災設備がビル全体に必要となります。そのような設備が備え付けられていない物件に入居すると、消防検査で合格が出ませんから、クリニックを開業できません。消防設備がクリニックの開業に適合していない場合には、入居する先生がその設備工事費を負担することが契約書の中に記載されているので、多額の工事費用が追加でかかってしまうことがあります。
電源容量も同様です。整形外科や呼吸器内科・美容皮膚科などの大きな電源を使用する診療科目の場合には、単層200Vの大きな電源を必要とします。こうした大きな電源は一般的なテナントには装備されていない場合が多いです。そういった場合の電源の追加工事も多額の費用がかかる場合が多くあります。中にはビル全体の電源容量が不足していて、いくら費用をかけようとも入居するテナントに必要な電源を確保できない場合もありますので、事前に良く検証することが必要です。
このような建築関係の知見を持った開業コンサルタントを選ぶことで、テナント契約時には思いもしなかった大きな支出を防ぐことができます。医薬品卸や医療機器メーカーの担当者による開業コンサルティングをお願いすると、このような設備のことを知らなくて、後で大規模な工事費用がかかってしまったり、開業の許可が降りなかったりする場合もあるのでご注意ください。
テナント物件契約後の事業計画立案

テナント物件の契約を終えたら、金融機関から資金調達をするための事業計画を立てます。資金調達のための事業計画には、開業場所や開業時期、必要な経費はもちろんのこと、「金融機関からいくら借りて、どれくらい患者さんが来院されるようになり、経費がいくらかかって、毎月いくら返済していくのか」といったことも書かれた、経営計画が網羅された企画書のことです。
ミニマム開業をするときには2種類の事業計画を作成します。1つは、先生ご自身の人生プランを考慮したシビアな事業計画です。もう1つの事業計画は、金融機関にとって融資をしたくなる様な魅力的な事業計画です。
先生によっては、「体力が無いので、開業当初は午前中だけ開業をして、その他は休みたい」という方もいらっしゃいます。そういった開業ですと、金融機関からすると「もっと働いて沢山の売上を上げて融資した資金を返済してほしい」と言われることは当然です。そのようなことで、金融機関にはしっかり働いて返済することを基本とする事業計画を立てておくわけです。
ミニマム開業での事業計画は、開業から月々の売上高(診療報酬)が毎月増えていって月々最大400万円程度になるように計画を立てます。月々400万円の売上高ですと、一般内科などで診療単価を6,000円くらいとした場合に、毎日の平均患者数は35人程度となります。
資金調達

事業計画ができたら、金融機関に融資の申し込みをします。クリニック開業専用の融資もあるので、正しく事業計画が立てられていれば、たいていの場合は断られることは有りませんから、ご安心ください。
断られるパターンとしては、次のようなパターンがあります。
- 先生が多額の借金をしている
- 事業計画の内容が現実的ではない
後者は、当社の開業コンサルティングをご利用いただけましたら問題ございません。前者については、先生によるものですから、ご注意ください。
先生が多額の借金をするよくあるケースは、節税と称して不動産投資をしている場合です。借金が多いと、それ以上の融資が受けられない場合もあるので、開業を検討されている先生からご相談を受けた場合には、最初に確認させていただいています。
開院半年前~3ヶ月前
テナント物件が決まったら、半年後に開業となります。最初は内装工事の設計から始まります。
内装工事

テナントの内装工事の設計と施工は、当社の専門スタッフにて対応しています。
先生方はクリニックを作るに際して色々な要望を持っていますが、ミニマム開業ではスペースが限られているので、基本は患者さんのためのスペースを優先して確保することが必要です。
具体的には、待合室の広さを大きめに取ることが大切です。院長室やスタッフの部屋は、売上を生み出さない二次的なスペースになりますので、出来る限り無くしていくことを考えます。
また、後ほどご説明いたしますが、内装設計をするときに、クリニックの開設届をスムースに受理してもらうために保健所と消防署との事前協議も必要になります。
このように、内装工事をするためにはミニマム開業特有のノウハウが必要ですので、当社のようなクリニックの内装設計にも知見の高い開業コンサルタントにお任せいただくことで、開業計画もスムーズに進みます。
近隣の開業医へのご挨拶
内装工事をしている間に、近隣の開業医にご挨拶をして回ります。ご挨拶先によっては、煙たがられる場合もありますが、あまり気になさらないでください。
開院3ヶ月前~1ヶ月前
スターティングスタッフの募集開始

クリニックの内装を開始する前のタイミングでスタッフの募集を開始します。クリニックの工事中の日曜日に、面接をクリニックで行うことになります。
募集やクリニックでの面接の立会い、応募者に対する質問やスタッフとしての良し悪しを見分けるポイントといったことは、開業コンサルタントが面接に同席してアドバイスするのでご安心ください。
医療機器の準備や各種申請
クリニックの内装が出来上がったら、医療機器を搬入して準備します。ミニマム開業では、スタッフさんは非常勤で勤務してもらい人件費を極力抑えることが基本なので、急にお休みした場合のことも考えて、先生が医療機器の操作や受付の業務なども覚えておくことも大切です。
開設届に関連する各種の申請については、区役所や市役所、保健所、消防署などに先生が提出しなくてはならない書類がたくさんあります。具体的には、次のような書類の提出が必要です。
- 医師免許証の写し・テナント契約書写し(共に開設届の際に原本提示必要)
- 履歴書
- 臨床研修修了登録証写し
- 保険医登録票写し
- クリニックの平面図
- 建物の配置図
- クリニックへの案内図
- 施設基準申請書
- テナントビルの土地建物の登記簿謄本
- 医療安全管理指針
- 院内感染対策指針
- 医薬品業務手順書
- 医療機器保守点検計画
- 個人情報保護方針
- 院内掲示(開設者・診療時間・管理医師)
- 検体検査業務日誌(院内検査がある場合)
- 診療用放射線設置届(X線設置の場合)
- 防火管理者講習修了証
- 防火管理者選任届
- 消防計画書
それらの書類作成のサポートもコンサルタントが致しますので、ご安心ください。
開院1ヶ月前
医薬品や消耗品などの準備

開業1ヶ月前になると、医薬品や消耗品などの準備をします。
電子カルテの準備
開業1ヶ月前になると、電子カルテのセッティングも必要になる時期です。電子カルテには、オンプレミス型とクラウド型があります。どのような電子カルテを選べば良いのか、スタッフさんへの電子カルテのトレーニングをどうしたら良いのかについても、開業コンサルタントがアドバイスいたします。
ミニマム開業では、電子カルテの受付操作方法やレセプトのオンライン請求の行い方なども、先生ができるようにしておくと、スタッフさんの急なお休みがあっても困らなくなります。
キャッシュレス決済システムの導入
最近のクリニックでは、現金決済が少なくなってきています。開業1ヶ月前になるとカード決済やモバイル決済などの端末を受付に設置します。
ただごく稀にですが、どうしても現金払いでないと嫌だという人もいますし、カード決済をした後で返金をしなくてはならない場合もあるので、そんな時のためにある程度の現金も準備しておいた方が安心できます。
開院2週間前
スタッフのトレーニングと開業準備
開業2週間前になると、オープニングスタッフに対する院内でのトレーニングと細々とした備品や消耗品などの取り揃えを行います。受付や看護師さんが業務を行うために必要な消耗品などは、スタッフさんに準備してもらうことが効果的です。
スタッフの雇用契約についても、開業コンサルタントがアドバイスしますので、ご安心ください。
ミニマム開業では、採用するスタッフは扶養控除の範囲で勤務を希望する人が中心となりますので、基本的なシフトは先生が決めて、急なお休みによる勤務予定の変更などはスタッフ同士で調整してもらう様にしてください。そのためにはクリニックのLINEグループを作って勤務シフトを共有しておくことが効果的です。
内覧会の準備と開院チラシの配布
開院の直前になりますと、内覧会の準備を行います。内覧会は集患にとって大切なイベントですから、どのようなチラシを作成したら良いのか、内覧会でお越し下さった方への記念品の内容や、お客様への対応方法などもサポートいたします。
開院1週間前
患者さんの来院を想定したロールプレイイング

開院1週間前には、患者さんが来院されたときの対応を、ロールプレイングします。当社のコンサルタントが患者さんの役をやり、受付から診察・検査・お会計までのクリニックの一連の業務を繰り返しロールプレイングして開院本番に備えます。
内覧会の開催
開院前の日曜日には院内の内覧会を行います。内覧会では、先生は来院された方にご挨拶して、スタッフさんに院内のご案内を担当してもらってください。先生は診療の相談などを多くの人に均等にできる様に注意して、なるべく多くの方々とお話しするようにしてください。その際に診療の予約を取るようにすることも大切です。
内覧会では、採用したスタッフさんにはなるべく全員に勤務してもらえるようにしてください。
開院当日
開院当日は、あまり多くの患者さんを受け入れないようにしてください。最初のうちは、スタッフが慣れていないので、たくさんの患者さんを受け入れてしまうと、対応にまごついてしまって、患者さんに不愉快な思いをさせてしまうことがあるからです。
できれば、患者さんの数を1時間に1人程度に抑えます。
クリニックを予約制にしておけば、患者さんの数を事前にコントロールすることができます。
以上、ミニマム開業をするときの開業準備スケジュールと準備内容、その要点をご説明いたしました。
低リスクなミニマム開業を実現して、失敗しない安定経営を目指す場合の、開業コンサルタント選びのポイントもいくつかご説明いたしました。開業コンサルタントの選び方については、「勤務医をしながら開業準備を進めるためのコンサルタントの選び方と活用方法」もご覧ください。
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