開院後に後悔しないクリニック設計のポイント

クリニック設計の専門家はとても少ないです。

長年の夢である、開業の場所や土地が決まりますと、いよいよ具体的な準備が始まります。

資金の手当てくらいまでは、銀行や税理士さんなどにも手伝ってもらいながら、なんとなくご自分で進めているなー、と言う感じがすると思いますが、いよいよクリニックの施設造りの段階になりますと、先ずは建築設計という極めて技術的で高度な理科系の作業を開始することになります。

この段階になりますと、具体的な作業は専門家である建築設計士に依頼することになります。
一級建築士の資格を持った設計士さんを初め、内装工事のデザイナーさんも沢山居ます。

ところが、クリニックの設計を熟知した設計士はとても少ないです。

それは、医院設計というマーケット自体がとても小さいので、普段は住宅や店舗などを含めて色々な分野の設計をしていかないと仕事が続かないと言う事が原因です。

結局は、「依頼があれば何でもやりますよー、クリニックの設計もしたことがありますから、おまかせ下さい。」

と言う設計士さんが大多数を占めています。

ご自身のことを考えてみて下さい。

研修医の頃には各科をローテイトして、医師免許があれば全ての分野に亘る診療をしても良いはずですが、そんなことの出来る人はどこにも居ません。

専門分野は長年研鑽した医師でないと、まともな診療は出来ないはずです。

それは建築士に限らず、どの分野の仕事でも同じ事です。

経験豊富な設計士であれば、先生に対するヒアリングの中で、クライアントの意向を正確に把握して、それを具体的な形に結びつける為の設計が開始されます。

でも、依頼先がその様な設計士さんで無かった場合、

『先生のご希望をおっしゃって下さい。その通りに設計してクリニックを造りますよー』

と言う事で、先生の言うとおりに図面を書いてくれます。

先生ご自身が、何度もクリニックを造った経験があり、ご自分の体験の中から設計士に的確な指示をする事が出来れば問題は起こらないのですが、初めて開業するのでクリニックの設計に関する本を読んでにわか勉強を始めるのがほとんどです。

発注者も、設計士も何が必要とされるのかと言う事を、良く知らない者同士がクリニックの設計を始めますと、当然のことですが、後で後悔することが沢山出て来ます。

でも、一度造ってしまったものは作り直すことが出来ません。

大きな費用を掛けるクリニックの設計と建築には十分に注意したいものです。

後悔しない為に、設計の希望と指示はより具体的に行うこと

先生方から、よくある希望の出し方は次のような感じです。

1、診察室2つ(机、ベッド)
2、待ち合い(15人以上待てるような)
3、受付
4、処置室(ベッド2つ、吸入器用の椅子 2つ)
5、更衣室兼スタッフルーム
6、院長室兼書庫
7、レントゲン室
8、トイレ2つ(患者さん用とスタッフ用)
9、パスボックス
10、洗濯機を置くスペース

この様な感じですと、設計図に具体的なイメージに落とし込むことがなかなか困難です。

理想とするクリニツク造りのためには、各室に必要な設備に関して、下記の様に具体的に希望
をまとめておくことが肝心です。

1、診察室の机のサイズ、診察台のサイズ、書庫などのサイズ数量。

2、電子カルテの使用場所と活用方法。

3、玄関に風除室を設けるかどうか。(1階で40坪以上のスペースが有れば造った方が良いです。)

4、X線室、機種によってサイズが違いますが、一般撮影であれば 2,000×3,000 が基本です。
高圧撮影と低圧撮影では準備する電源とコストが大きく変わりますので、メーカーと機種の想定もしておく必要が有ります。

5、当然のことながら、患者トイレは車いす対応とする。
出来れば男女別のトイレが望ましいです。

6、扉の有効開口に関して、患者さんが利用する扉の有効開口は800が基本です。
このサイズであれば車いすの通過が出来ます。
職員だけが利用する扉は、特に大きな物品の搬入がなければ700あれば大丈夫です。

一般の住宅などを専門に設計する設計士の場合、医療器機や医院の内部動線に関する知識は皆無
ですので、先生から具体的に使用方法を説明する必要があります。

また、電話・FAX・ネット・院内LAN・患者呼出マイク・セコムなど、光回線をどの様に利用する
かと言う事に関する指示も必要となります。

医療器機などの詳細に関しては、メーカーの担当者から説明をさせれば大丈夫ですが、院内の
設備をどの様に使いたいのかと言う具体的なイメージは、先生から設計士に伝えておく必要が
有ります。

設計業務をスムースに行うためには、必要な希望を事前に与えることがとても大切です。

それをどの様に組み合わせるかは、設計士の仕事になります。

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