クリニック開業後の必要経費はどのくらい?

クリニック開業後の必要経費はどのくらい?

クリニック開業資金の悩み相談Q&A

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クリニックを開業すると当然その日から様々な費用の支払いが発生します。それらはクリニックの診療活動を行うために必要となる経費なので、これを「必要経費」と呼びます。

クリニックを開業したらかかる主な必要経費として、テナントの家賃、水道光熱費、人件費、検体検査の外注費があります。他にも、医薬品や医用備品の購入費用、電子カルテの費用、医療機器のメンテナンス費用などがかかります。

クリニック開業後にかかる主な費用と相場、それらを安く抑えるためのポイントなどについてご説明いたします。

開業前の家賃について

開業前の家賃について

クリニックの事業活動を開始すると当然毎日色々な費用がかかって来ますが、実は開業前からも多くの経費がかかっています。特に大きな金額がかかる費用は家賃です。家賃の支払いは、通常は内装工事に入るタイミングから発生することが多いのです。

準備期間は家賃が無料になる物件

ごく稀には、契約後すぐに家賃が発生するのではなく、準備期間は無料で、開業してから家賃を支払うと言う好条件で契約すると言う例もあります。

そのような好条件のテナントは地方や郊外などで長い間入居者が決まらなくて、大家さんが困ってしまい、「入居してくれるなら開業準備期間中の家賃はいただかなくても結構ですので、どうぞ入居契約をしてクリニックを開業して下さい。」と言うような場合です。

飲食店や物販などの業態では集客の難しいテナントであっても、クリニックの開業を考えた場合には好立地となる掘り出し物の物件もあります。開業のためのテナント物件探しは、そうした状況の見極めが大切です。

複合商業施設の物件

もう1つの開業前に家賃が無料となる例としては、大規模な複合商業施設などの新規オープンの場合にも商業施設全体のグランドオープンに合わせて、開業してから賃料が発生すると言う条件のテナントがあります。

その点ではお得な条件と言えますが、そうした複合商業施設の場合には内装工事業者の指定があったり、「B工事」と言って入居者が工事費を負担しなくてはならない工事があったり、保証金や賃料が高額であったりなど、開院までにかかる費用が大変に高額になる場合が多くありますので、個人経営の新規開業の場合には厳しいものがあります。

そうした立地条件は集患にも大きな力を持ちますので、医療法人として十分な資金力を持ったクリニックの分院開設の場合に適して居ると言えるでしょう。

人気のある物件

また、中には駅に近い好立地でテナントが空けばすぐに次の入居者が決まってしまうような場所もあります。

一般的なテナントビルの場合には、入居者が契約を解除して退去しようと思った場合には、6ヶ月前に大家さんに解約の申入れをしなくてはなりません。大家さんは次の入居者を募集するために解約の申し入れを受けるとすぐに新たな入居者の募集を開始します。クリニックの開業場所を探して居る時には、その時点で開いて居るテナントもあれば、現在の入居者が退去する前提で新たな入居者を募集して居るテナントもあります。

人気のあるテナントの場合には、フリーレントの申し入れなどはなかなか難しいことが多くなります。

さらに人気の物件には、ほとんど同時に複数の申し込みが入ることがあります。そうした場合には、大家さんの提示する条件はそのまま受け入れる事を申し入れないと、他の人にテナント契約を取られてしまうことになってしまいます。

そうした場合の多くは、契約の翌日から賃料を支払わなくてはならなくなりますので、クリニックを開業して診療活動を開始できるまでの間の空家賃の支払いを続けなくてはなりません。そうした空家賃の支払いはどんなに短くしたとしても、開業準備のための6ヶ月間は家賃の支払いが必要となります。

開業後の費用1.テナントの家賃について

開業後の費用1.テナントの家賃について

クリニックの家賃は契約条件の通りとなりますので、当然ながら固定費として毎月の支払いが必要になります。固定費となる家賃はなるべく安いに越したことはないのですが、集患の効率を良くするためには立地条件の良い場所を選ばなくてはなりません。そうなるといわゆる坪単価が高めになることはやむを得ないことでしょう。集患しやすい立地で広いスペースのテナントを契約する場合には家賃の総額が大きくなってしまいますので、損益計算を特に注意することが必要です。

想定する売り上げで賃料の支払いが重荷にならないかどうか、開業当初の赤字の時期を乗り切れるだけの十分な運転資金を確保して居るかどうかなど、検証すべき点は多くあります。

目的とする医療機能が中途半端になってしまうような広さでは後悔することになりますが、同じスペースでも設計計画を担う設計士の能力によっても開業後の医療機能の充実度は変わってきます。

テナントビルの賃料は坪単価で比較するとわかりやすいのですが、一般的に集患効率の良い好立地ほど坪単価は高くなります。

ただ、そうした中でもここ数年の原油価格の上昇や半導体の不足と建築資材なども含めた諸物価の上昇によって、新築ビルの場合には建築コストの大幅な上昇によって、大家さんが銀行から借入る建築資金の金額が大きくなってしまったために、テナントビルの賃料設定としての坪単価も大幅に上昇してしまいました。また現在では、金利負担の上昇も懸念されています。

大家さんとしては、借入金の返済に支障がないように賃料の設定を高くするのはやむを得ないことと言えるでしょう。

一方で、建築された時期から相当な年月が経ったビルは、大家さんの借入金の返済も完了して資金的にゆとりがある場合には、近隣の相場に合わせた賃料設定をして、入居者の定着と安定的な賃料収入を望んでいますので、それほど高い賃料にはならない場合が多くなります。

いずれにしても、テナントの賃料は収入がなくても支払わなくてはならない必要経費なので、いかに効率的に使うことができるかというのが開業成功の大きなポイントと言えるでしょう。

テナント料の具体的な金額は、立地条件やテナントの広さなどによって大きくことなるので、当社開催のクリニック開業Webセミナー&個別相談会(無料)でお気軽にご相談ください。

開業後の費用2.水道光熱費の支払いはどのくらいか

開業後の費用2.水道光熱費の支払いはどのくらいか

家賃の他の固定費としては、水道光熱費があります。これらの経費は基本的には使用した数量によって支払う金額が変わってきますので、変動費とも言えるのですが、固定費として計算します。

普通に診療活動をして居る場合には、季節や気温などによって使用する数量と支払う金額が変わってくる部分はありますが、それほど大きな変動はありませんので、準固定費として見ておいたほうがよろしいと思います。20坪程度の小さなクリニックでは毎月10?15万円前後、40坪程度の大き目のクリニックの場合には20?30万円前後の水道光熱費がかかる場合が多いです。

しかし、今後は上昇していく傾向があるので、開業後の費用を計算するときに、水道光熱費の上昇分を事業計画に盛り込んでおく必要が出てくる可能性もあります。

いずれの場合にも、時間が経つことによって支払わなければならない費用なので、形になって残る様なものではありませんから、効率よく使える様に計画することが大切です。

開業後の費用3.人件費の支払いはどのくらいか?

開業後の費用3.人件費の支払いはどのくらいか?

クリニックを開業する場合には、受付事務の職員や看護師さんを雇用して働いてもらわなくてはなりません。メンタルクリニックでは臨床心理士さん、糖尿病を専門とするクリニックでは管理栄養士さんや超音波検査のできる臨床検査技師さんなどと、多様な職種の職員さんを採用する必要があります。

人件費の計算は、パート職員さんの場合は、時給と労働時間をかけたものに、手当や社会保険などを足したものです。正社員の場合は、基本給と残業代、手当、社会保険料などを足したものになります。

パート職員さんを中心としたクリニックの場合

クリニックの経営から考えるとパート職員さんを中心とした採用が、人件費の負担を抑えるためには効果的なのですが、その場合にはパート職員の方が勤務しやすい時間帯に診療時間を設定しなくてはなりません。

女性医師に多い時短開業などの場合には、院長先生ご自身が子育てや主婦として家事を行わなくてはならないために、朝と夕方の時間帯にはご自宅にいないとなりません。そのため時短開業のクリニックでは、10時から16時くらいまでの間に診療時間を設定する場合があります。この様な時間帯であれば同じ様に子育て中の看護師さんや受付事務の職員さんも、仕事と家庭生活を両立しやすくなりますので、パート勤務の職員さんを採用しやすくなりクリニックの人件費を抑えながら優秀な職員さんを採用することができます。

時短開業ですし、パートさんが中心ですので、人件費は比較的安価になります。

夕方から夜にかけて診療するクリニックの場合

一方、夕方から夜にかけての診療を行う通常のクリニックの場合には、午後の6時から7時頃までの診療時間を設定するので、繁盛して居るクリニックの場合には職員さんの残業時間も多く、帰宅時間は午後の8時から9時を過ぎてしまうこともあります。

こうした勤務形態のクリニックでは、常勤の職員さんを採用しないと遅い時間まで勤務してくれる職員さんを確保することができません。

正社員としての就職を希望する方は、一人暮らしの独身の方やシングルマザーなども多くいらっしゃいます。そのため勤務先のお給料で日々の生活を賄うだけでなく、お子様の学費や将来に備えての貯蓄も考えなくてはなりませんので、勤務する職員さんの年齢や生活環境に応じて、職員さんが無理なく勤務を続けることのできる金額のお給料や賞与を支払わないと、有能な職員さんであるほど長く勤務してもらうことが難しくなってきます。その分だけ、人件費が高くなります。

社会保険の費用負担

さらに、福利厚生の面では社会保険の加入を希望する職員さんがほとんどです。

新規開業のクリニックは基本的には個人事業に分類されますので、常勤として5人以上の職員さんが勤務する場合には社会保険の加入が義務付けられます。

新規開業の場合にはそこまで多くの職員さんを常勤で雇用することは少ないので、職員さんには医師国保や一般の国民健康保険と国民年金に加入していただくことが多くあります。すると、そういった費用も人件費にかかってきます。

職員さんの立場からすると、健康保険は負担金が3割なので特段のメリットはないのですが、将来の年金を考えた場合に国民年金の支給額があまりに少ないので、少しでも支給額の多い厚生年金に加入できることを望んでいますし、また、それらに対する毎月の支払額の半額を事業主が負担する義務を負うことから、自己負担が半分になることも大きな魅力となります。

職員さんへの処遇を手厚くすることは大変望ましいことではありますが、そうした費用を負担しても十分に経営を継続できるためには、売り上げに対する人件費の比率を25%程度の範囲で収めておくことが望まれます。

それ以上に人件費の割合が大きくなってしまうと、売上を上げることに追われてしまうという厳しい経営状況になってしまいます。

パート職員さんが求める勤務時間と人件費負担軽減について

パート職員さんの場合には、看護師さんや医療事務・臨床検査技師などといったご自分の資格を活かしながら、家計の補助になる様な仕事もしたいという希望を持ってクリニックに応募してきます。

ただ、ネックとなるのはクリニックから求められる勤務時間が、職員さんの生活パターンに合わない場合です。朝の9時から診療を始める場合には出勤時間は8時半となるのが普通です。それでも朝早い出勤の場合には早起きして家族の朝食を作って、子供さんを学校に出してから自宅近くのクリニックに勤務に出るということができるのですが、子供さんが学校から帰る時間や夕飯などの準備ができる様に勤務を終えようとすると、17時くらいに勤務を終えることが理想的です。

中には、子育ても終えてしまって遅い時間までの勤務も可能なパート職員さんもいますが、年齢的にはだいぶ上の方が多いので、体力的に不安が残る場合もあります。

パート勤務の方を採用する場合には、クリニックから近い場所に住んでいて歩いて通勤できるなどの条件が揃うと、無理のない勤務が可能となります。

特に時短開業のクリニックの場合には、パート勤務の職員さんでスタッフを揃えることで、優秀な職員さんに無理なく勤務していただきながら人件費を抑えて無理のない経営を実現することが可能となります。

一般的な診療時間を設定して居るクリニックの場合にも、午前中はパート職員さんの勤務を主体にして、午後から夜間に至る勤務の時間帯を常勤職員でカバーすることで人件費の負担を軽減することが可能となります。

開業後の費用4.検体検査の外注費の支払いはどのくらいか?

開業後の費用4.検定検査の外注費の支払いはどのくらいか?

クリニックの外注費として大きな金額となるのは、血液検査や細胞診などの病理検査を依託する臨床検査会社への外注費があげられます。こうした診療活動に伴う費用は売り上げに伴って比例して発生する費用なので、比例費や変動費と言われます。比例費が多くなるというのはそれだけクリニックの利益も多くなるということなので、歓迎すべき費用の発生といえるでしょう。

検体検査の単価は業者によって異なる

ただし、検体検査の外注費の単価というのは委託する会社によって大きく変わってきます。

クリニックで検体検査を実施した場合に請求できる保険点数というのは、検査の実施料金と検査結果を判断する診断料の両建てとなります。検査結果による診断は当然医師の業務領域ですが、検体検査自体は専門の会社に外注することができます。

検査の保険点数自体は国が定めた診療報酬制度で決められていますが、そうした検体の検査を請け負う会社はその業務を受託する料金を自由に決めることができます。ですので、委託する会社によって単価が異なるのです。

検体検査の単価が安くなった理由

検体検査自体は、かつては病院に勤務する臨床検査技師が用手法という手作業の技法で検体の反応を判定していました。現在の検体検査は多くの場合全自動のオートアナライザーという検査装置が処理をしています。こうしたことから検査の精度管理をきちんとやって決められた手順通りに検査を進めていれば、出てくる検査の結果はどこの会社がやろうとも同じ事になります。検査を依頼するクリニックから見れば、同じ結果が出てくるのであれば保険点数で請求できる金額の中から支払うことになる検査の外注費は、安いほど良いということになります。

検査会社としてはそうしたクリニックの要望を受けて、各社がオートアナライザーを導入した頃から、大量の検体を集めて処理する事で、検査のコストを低減していきながら激しい価格競争を繰り広げていく様になりました。

検査業界全体で激しいダンピング競争が繰り広げられた結果、業界全体が疲弊し始めたので、検査の業界団体で受託価格の適正化を推進する協定もできたほどです。

現在でも、規模の大きな検査会社では検体検査の装置を24時間体制で稼働させて、大量に検体を処理することで1件あたりの検査コストを削減して、利益を上げようとしています。

そのため新規開業のクリニックに対しては、初年度に保険点数の9割引以上の割引をして自社のシェアを拡張しようとする検査会社もあります。

2年目以降は通常の料金となることが一般的ですが、それでも生化学検査などの通常の検査項目は保険点数の3割から4割程度の料金で検査を受託する会社が多くあります。

検体検査業者の選び方

検査の結果が同じものであるのなら、外注する料金は安いほどクリニックの利益が上がりますので良いことなのですが、こうしたことも行きすぎると思わぬところでトラブルが発生することがあります。

検査会社が安い価格で検査を受託しても利益を上げるためには、検査業務自体は自動化を徹底することでコストを下げることができますが、クリニックから検体を集配する業務は自動化することができませんので、どうしてもこの部分の人件費にしわ寄せが来てしまいます。

集配業務の担当者をアルバイトやパートの職員さんでまかなうことで人件費は抑えることが可能となりますが、中には業務に対する責任感に問題のある人も混ざってしまうことがあって、検体を破損したり取り違えたりするトラブルを起こすこともあります。こうした間違いの起きない様に検査の外注先を決めるときには、価格だけでなく信頼できる仕事をする会社を選定してください。

クリニックを開業したらかかる主な必要経費として、テナントの家賃、水道光熱費、人件費、検体検査の外注費について、開業前の家賃を無料にできる条件、家賃の集患の関係、人件費と社会保険料、検体検査の単価などについてまとめました。

クリニック開業前の費用については、開業1年前からかかることが多いです。クリニック開業前の費用についての詳細は、まずは「クリニック開業コンサルの支援内容とは?1(開業1年前~半年前)」をご覧ください。

当社は、独立起業をお考えの医師向けに、開業支援コンサル手イングを行っています。コンサルティングの詳細は、「クリニック開業コンサルによる医院開業支援サービス」をご覧ください。また、子育てをしたい女性医師の開業については、「開業したい女性医師のためのクリニック開業コンサルティング」をご覧ください。

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