クリニック経営で失敗する理由は何か?

クリニック経営で失敗する理由は何か?

クリニック経営の悩み相談Q&A

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資金繰りは、入ってくるお金と出ていくお金のバランス

クリニック経営で失敗する理由は、資金繰りです。資金繰りで赤字が続いて、資金が尽きてしまって失敗します。

資金繰りは、入ってくるお金と出ていくお金のバランスです。入ってくるお金は、集患の多寡によります。出ていくお金は、初期投資の費用返済とランニングコストです。

ランニングコストは切りつめても金額が小さいので、コントロールすべきものは集患と初期投資の費用返済です。そして、集患と初期投資の費用バランス如何によって、クリニックを開業する前に成否が決まっているようなものなのです。

このコラムでは、クリニックを開業予定のドクター向けに、クリニック経営で失敗する理由の大きな要因である、集患と初期投資の費用が決まる、次の3つのポイントについてのご説明をします。

  1. 1.開業場所の失敗
  2. 2.事業計画と資金調達の失敗
  3. 3.内装工事の失敗

そして、それらの失敗を招く原因である開業コンサルタント選びの失敗についてもご説明いたします。

クリニック開業は未知の連続

クリニック開業は未知の連続

クリニックの新規開業を目指して様々な準備に取り掛かる際には、誰しも成功を目指して開業の成功方法に関する情報を集めることでしょう。

ところが『岡目八目』という言葉がある様に、自分自身の開業の失敗理由はなかなかわからないものです。

皆様もご経験はないでしょうか。例えば先輩や同僚が開業を目指して色々な準備をしているときに、「なぜ失敗しそうな方法を取るのだろうか?」と思われたことはないでしょうか。開業コンサルタントのような第三者としての立場にあれば、なおさら開業の当事者よりも事の成り行きや真相、また利害得失などを正しく判断できるものです。

開業準備は様々な未知の未来に対する判断と決定の連続になります。それはそれまでの勤務医としての生活の中で経験してきた判断とは質的な違いが多くあります。つまり、開業を前提とした色々な判断はご自分の預金や開業のために借り入れした資金から、大きな金額の支払いが伴うということです。

これまでの暮らしの中で使って来た金額と比較すると、全ての支払いが一桁大きな金額となりますので、そうした大金の支払いが次から次に続くことによって、「開業が失敗して大きな借金が残ったら大変なことになってしまう」と言う、強迫観念が頭をよぎることがあります。

開業場所が決まるまでの間は、具体的な開業準備がスタートする前なので、いろいろな判断を冷静に進めて行くことが出来て居る先生でも、その同じ人がいざ大きなお金の支払いが始まってくると、人が変わったようになる場合があります。

それは、これまで見ていた開業して成功すると言う夢が、開業後の先が見えない不安感から冷静な判断ができなくなってしまい、開業準備を進めているのにも関わらず全ての行動が後ろ向きになってしまい、結果的に自らの判断が開業の失敗を招いてしまうと言う皮肉な結果になってしまうことになります。

大手開業コンサルの実情と弊害

大手開業コンサルの実情と弊害

そうしたことを招いてしまう大きな原因の1つに、いわゆる『大手の開業コンサルタント』が行なっている開業支援があります。

医薬品卸や調剤薬局・医療機器メーカーなどの、大きな会社が開業コンサルティングを行なっている例は数多くありますが、大手の開業コンサルティング会社と言うものは現実には存在しません。それぞれの大きな会社はそれらの本業で大きくなった会社なので、開業コンサルティングで大きくなった会社ではありません。

会社が大きいということは、その会社の本業で他社よりも優れているのであって、そうした会社が行う開業コンサルティングは、本業の利益をより大きくしたいための営業活動の一環として行われるからです。

開業コンサルタントの業務は、コンサルタントの経験値でありまた幅広い知識と技術力が集約されてこそ大きな力を発揮して、開業成功という結果をもたらすものであると言えます。

残念ながら大手企業の行う開業支援では、担当する職員にそのような技術と経験をもった開業コンサルタントは存在しないことが実情です。

そうした大手の企業が行う開業支援では、マニュアルに沿った開業手順に応じて必要な専門業者を集めて、専門家集団という建前で開業コンサルティングと称していることがほとんどです。経験値も技術力もなく、クリニック創業の道筋も開業成功の定石も示すことはできません。そうなると開業するドクターは何でも自分で決めていかないといけないので、不安が先に立って、失敗を恐れるあまり何事にも後ろ向きの判断をして、結果的に効果的な投資ができなくなってしまい、開業はしたものの経営が失敗する大きな原因を自ら作ってしまうことになります。

以下に、開業失敗に繋がる判断の具体例に関して説明いたします。

開業場所選定に失敗する理由

家賃が安い場所を選ぶと?

開業場所選定に失敗する理由

これまで病院勤務の関係で縁のなかった場所で、ゼロから患者さんを集めるという場合、「せっかく開業するのであればクリニックの中に色々と必要なスペースを盛り込みたい」という気持ちから、開業場所として求めるテナントの面積が大きくなりがちです。

良い場所で大きな面積のテナントを求めれば、当然賃料の総額は高額になってしまいますので、「そんなに多額の家賃を支払うのか」と怖くなってしまい、同じくらいの面積で家賃の総額が安い場所を選んでしまいがちになります。

そもそもテナントビルの賃料というのは、土地の価格に比例して設定されます。土地の価格というのはその土地が持つポテンャルに比例して決まって来ます。

例えば銀座の土地の価格が高いのは、高額の商品やサービスを求めるお客様に沢山来ていただける場所だからです。

その場所で店舗を構えたり事業を起こすことで、大きな所得が得られやすいため、土地の価格が高くなるのは当然のことと言えるでしょう。必然的にそうした土地に立つテナントの家賃も高額になって来ます。

テナント料が高いからと言って諦めてはいけない

でも、ここで勘違いをして欲しくないのは、「テナント料が高いからと言って諦めてはいけない」ということです。テナントの賃料が高くなってしまうことから経営に不安を持ってしまい、せっかくの良い場所を諦めてしまうと言うことは、坪単価の相場が高い場所で希望する広さを求めたいということが原因です。

そうしたことから、同じようなスペースのテナントで家賃の総額が少ない場所を選んでしまうことがよくあります。それはテナント賃料の坪単価が安い場所ということになります。坪単価が安い場所ということはその場所の持つポテンシャルが少ない集客力の弱い場所ということになり、こうした場所を選ぶことによって家賃は安くなったとしても、患者さんが来院する人数は少なくなってしまいクリニックの売り上げも上がりにくく、期待した利益が上がらないか赤字になりやすい場所で開業してしまったことになります。

坪単価が高いテナントの有効活用

一方、テナントの坪単価が高くなったとしても小さなスペースを有効活用することで、ポテンシャルの高い場所で多くの患者さんを集めて開業を成功させることが可能となります。

そのためには職員さんの更衣室や休憩室さらには院長室などといった二次的な用途のスペースを切り捨てて、売り上げを上げることに専念した診療スペースをコンパクトにまとめあげて、予約システムやweb問診などの最新の機能も取り入れて、小さなスペースで高い効率を発揮できる場所を選んで開業するという工夫が必要となります。

開業資金の借入に失敗する理由

開業資金の借入に失敗する理由

開業資金の借入を成功させるためには、あくまでも正当な方法をとることが一番大切です。

『自己資金がゼロ円でも開業できる』という謳い文句で開業支援を宣伝している会社もありますが、現実にそのような事をしようとすると色々な部分で無理が生じてきます。

金融機関が第一に見る預貯金

第一に、都市銀行などのまともな金融機関の審査基準では、事業を創業するために銀行から資金の借り入れをする際の最低条件として、「借りたお金を責任を持って返せる人かどうか」ということが見られます。

その判断基準として金銭管理がきちんとできていて、まともに貯金をしているかどうかということが見られるのです。

医師の給与が高額であるということは、世間一般の誰もが知っていることです。もちろん融資の審査を行う銀行員も分かっていますので、医師としてのキャリアが10年以上あり、開業を考えているのであればそれ相応の預貯金があって当然だと思われます。

開業したい医師の中には住宅を購入し、頭金の支払いや家具などを購入したために、手元に現金がほとんどないという場合もあります。

そうした預貯金の使途がしっかりとしていれば、預貯金が資産としての不動産に代わったという事なので金銭管理や、融資した資金の返済がきちんと行われるかどうかという事を心配することはなくなるでしょう。

ところがさしたる理由もなく、貯金がないという場合には、金融機関から「入ったお金をすぐに使ってしまう浪費癖がある」と判断されてしまうことになります。

当然のことながらそうした人に事業資金を貸し付けすることは、返済が滞るリスクが高いと見なされて融資の決定をしてもらうことが難しくなって来ます。

次にみられる事業計画

次に、融資を受けるためには銀行に事業計画と設備投資に必要となる、内装工事や医療機器など各種の見積もりを提示して審査を受けることになります。

以前、開業支援を依頼されたドクターから、「知り合いの税理士さんが融資の申し込みを手伝ってくれる」と言っているので、「必要な資料を揃えて欲しい」という依頼がありました。

その税理士さんに会って話をしてみると、「設備投資に関する内装工事や医療機器などの正確な見積もりを出してください。」と言われました。

それは開業の場所が決まったばかりで、まずは開業資金の調達を行わなくてはならないという時です。これから内装工事の設計を始めて電子カルテや医療機器の選定も始めようという時に、半年先でないと結論の出ない数多くの設備投資の正確な見積もりを出して欲しいというムチャ振りです。

また、「事業計画を作るには厳しい状況を克服していくような熱意のこもった事業計画を作って、銀行の融資担当者に共感してもらえるようなものにしなくてはならない。」というようなことを言っておりました。

そこで、「この税理士さんは本当にクリニック開業の進め方や融資の受け方を知らない素人だな」ということを強く感じました。

そもそも税理士さんの職務は、税法に定められた手順で税務申告を適法に行うことです。また税理士さんは税務の専門家として国家資格を持って居ますので、税務申告に関しては独占して業務を行い、税務署の調査が入ったときに追徴金を恐れる経営者からは頼りにされる存在です。ところが、多くのドクターが税理士さんに「新規事業の創造性や事業計画の立案を求めてしまう」という勘違いをされているのです。

世の中には創造性のある税理士さんも居るかも知れませんが、本来業務として創造性があってはいけない税務申告を生業とする税理士さんに事業資金の融資をサポートしてもらうことが、資金調達の際の失敗の大きな原因となります。

クリニックの内装工事に失敗する理由

クリニックの内装工事に失敗する理由

クリニックの内装工事は開業資金の中で、設備投資の大きな部分を占めることになります。一般の診療科目では医療機器を取り揃える予算と同じくらいの金額になりますし、メンタルクリニックなどのようにさしたる医療機器が不要とされる様な診療科目では設備投資の大部分を占めることになります。

ところがこうした建築工事に関して、ほとんどのドクターは初めて経験することなので、どのような人に頼めば良いのかわからないというのが本音だと思います。

内装工事に無知なコンサルタントに依頼した場合

医薬品卸会社や調剤薬局などのコンサルタントに開業支援を依頼した場合には、担当者からクリニックの内装工事の経験があるという工事業者を何社か紹介されて、コンペ形式で価格の安い業者に決めるということが一般的です。

一般的なクリニック開業セミナーでそのように解説していたり、開業の指南本などにもよくその様なことが書かれています。

後ほどご説明しますが、コンペ形式で価格だけや、デザインの雰囲気だけで内装工事業者を決めてしまった場合、後で取り返しのつかないことになってしまうことがあるのです。

内装工事の知識がないのであれば、価格やデザインだけで施工業者を決めるべきではありません。

コンペ形式で決めてしまう理由

確かに長年の事業経験があって、多くの内装工事を発注した経験のあるドクターであれば、コンペ形式であっても各社の提案や価格が発注者の意に沿ったものであるかどうかを判断することも出来るでしょう。

例えば、デパートで既製品のスーツを買おうとした場合に、同じ様な見た目のスーツであっても一着数万円から十数万円の価格の違いがあります。それは生地や縫製の仕方仕立ての良さの違いが価格の違いに現れてくるからです。

オーダーメードのスーツの場合には、イージーオーダーであれば数万円で仕立ててもらえるものから、銀座の老舗のテーラーなどでは数十万円の価格の違いがあります。

海外のVIPが仕立てるスーツは一着数百万円の価格となるものも珍しくありません。

ところがそうしたスーツを写真に撮ってみると大きな価格の違いがあるにも関わらず、見た目にはそれほどの違いは出なくなってきます。

しかしながら価格の違いは明らかに着心地やシルエットの違いとなって、価格の違いがそうした製品の価値の違いとなって現れています。

こうしたスーツの様な良く使用している製品には、多くの人がその価格と価値の関係性を理解できて価格の安い製品はそれなりの商品であって、価格の高い製品はその価格に見合った価値があることを理解しています。

日常生活の中でそうした製品に接していることで、価格と製品の関係性をよく理解できるのですが、クリニックの内装工事となると生まれて初めての経験であり、大きな費用がかかるにも関わらず、何を判断基準として誰に依頼してどのように進めて良いかということもわからずに、不安の中で開業準備を進めていくことになります。ですから開業支援業者のいうままに、コンペ形式で価格の安い業者に内装工事を発注してしまう場合が多くなってしまいます。

内装工事は設備投資として大きな割合を占めますので、安い価格を提示してくれる工事業者さんに発注したいという気持ちはよくわかります。

安さとデザインだけで決めてしまった場合に考えられるデメリット

ところが、判断の基準を価格の安さで決めてしまった場合には、これが大きな間違いの元となることがほとんどなのです。

そもそも、そうした内装業者さんを紹介してくれる開業支援会社自体が、建築のことや内装工事に関する知識がありませんので工事業者の良し悪しを判断する能力がありません。営業上のおつきあいや関係会社の紹介でクリニックの工事を経験したことがあるということで、開業するドクターに紹介することになります。「あとはドクターの自己責任で業者さんを選んでください」ということです。

以前、当社に開業支援や内装工事の設計業務を依頼して頂いた先生から、「ホームページで宣伝しているデザインが気に入った内装会社があるので、デザイン面でコラボしてくれないか」というお話があったので、そちらの会社の方に来ていただきお話しをしたことがありました。

そちらの会社は内装工事のデザインから施工まで、住宅のリノベーションや飲食店、アパレルなどなんでもこなして、最近は美容皮膚科や歯科医院などもデザイン性の高いクリニックを得意としているというお話でした。

確かにホームページも凝ったデザインで、そこで紹介されている作品例も見た目がキラキラした感じのデザイン例が紹介されていました。

そこまでは良いのですが、そちらの社長さんが当社に来て盛んに強調することは、「うちは安いです。コンペをしても相見積もりをとってもうちは価格の安さでは負けません。」という安さを盛んに強調して、デザイン面でのコラボに来てもらっていたお話から、これまで当社で先生と進めていた設計計画も含めて、全て価格の安い自社に請け負わせて欲しいという雰囲気で話を進め始めました。

これには呆れてしまったのですが、当社も長年クリニックの内装設計と工事を専門に行って来たことから、工事の価格の安さを売りにしている工事業者の内情もよく知っています。

安さを売りにする工事業者の内情

「当社は安さが自慢」その業者は要注意

同じ建築資材や材料を使って同じ職人さんが施工する場合には、安くするにも限度があります。

いくら安いことが売りだといっても、本当に赤字になるような低価格で工事を行う施工会社は有りません。

工事の請負価格が安かったとしても、そこから利益を出すための工事を行うことになります。価格の安さを売りにしている業者さんは、安い材料や型遅れの設備機器を使ったり、経験の浅い職人さんを使って日当を安くしたり、目に見えない部分の工事を省くなど粗製濫造の工事を行うことで採算を取っているのです。

飲食店やアパレルなど一般店舗の内装は、その時代に合わせて集客力を高めるために早ければ3?4年くらいで定期的にリニューアルをします。そのため、店舗の内装工事を専門とする会社は、「施工した内装が5年くらいもては十分だ」という考え方で工事を行っていることが多く有ります。

クリニックは少なくとも20年もつ内装工事を

ところがクリニックの場合には、定期的なリニューアルなどはほとんど行いませんので、少なくとも20年くらいはビクともしない内装工事を行わなくてはなりません。

そのような長持ちするクリニックを作る為には、上質な建築資材と正規のルートで購入したメーカーの保証のある建築設備を使い、目に見えない部分にも経験のある職人さんが丁寧に十分な手をかけた工事を行わなくてはなりません。

そうした内装工事をしたクリニックは長い期間安定して使うことができますので、結果としては大変お得な設備投資になります。

一見同じように見える内装工事も、安い価格で請け負った業者さんが作ったクリニックが安普請になることは当然と言えるのですが、一旦作ってしまった内装はやり直しが効きませんので、安物買いの銭失いという結果になってしまいます。

クリニック経営で失敗する理由について、開業場所の失敗、事業計画と資金調達の失敗、内装工事の失敗の3点について詳しく解説しました。また、その根本原因として、本業を別に持つ大手開業コンサルタントに依頼してしまうことの危うさを述べました。

クリニックを開業し成功させるための秘訣も同時に伝わったことと思います。

クリニック開業コンサルタントを選ぶときは、開業に関するあらゆる知識や情報に精通し、全体を把握できるコンサルタントに依頼すべきです。また同時に、当社では、全体を把握するコンサルティングをご提供していると自負しています。

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開業を検討しているドクターからの、お早目のご連絡をお待ちしています。