クリニックの開業資金の調達方法とは?

クリニックの開業資金の調達方法とは?

クリニック開業資金の悩み相談Q&A

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第一の資金調達方法は自己資金の準備

クリニックの開業資金の調達方法は、第一は自己資金です。二番目は銀行融資です。

以下、それらの調達方法で資金調達する場合の注意点や、クリニックの開業に必要な資金の額をご説明いたします。


第一の資金調達方法は自己資金の準備

第一の資金調達方法は、自己資金の準備です。自己資金とは、自分が働いて貯金した、返済しないで良いお金のことです。

手持ち資金のないドクターによくある投資

先生方の開業相談を受ける中で、手持ちの資金がほとんど無いという先生方がいます。

そうした先生方の多くは、年齢的には40代が多く、年収としては、2,000万円以上あるものの「手持ちの資金をほとんど持って無いので、どうしたら良いでしょうか?」というご相談を受けることが多くあります。

そのドクターからよくよく事情を聞いてみると、医師としてのそれなりの生活にかかる出費もあるものの、所得税の支払いが多いことから、節税対策としての投資用マンションの購入をしているドクターが多くおりました。

なぜ節税すると資金がなくなるのか?

高額なワンルームマンションを購入すると手持ちの現金がなくなる

高額なワンルームマンションを購入してローンを組むことによって、事業所得の赤字を生じさせて税金を減らすのですが、それは同時に手持ちの現金がどんどん無くなっていくということになります。

そのようなことで、毎月入るお給料のほとんどがローンの支払いに消えて行き、手持ちの開業資金がほとんど無いという状況が生まれて来ます。

先ず、開業を考えるのであれば、「余計な借金をしないで貯金をする」と言うことが第一の開業資金調達の方法です。

節税のデメリットは、開業してからもそうです。所得税がゼロになるということは、内部留保もゼロになるということを意味します。内部留保がないと、不況に弱い経営になってしまいます。

ともあれ、すでに投資物件を購入してしまったドクターは仕方がありませんが、いずれ開業を考えるのであれば、理由は何であれ高額な買い物は避けて、開業資金を貯めるようにしてください。

自己資本のあるドクターとは?

ごく稀ですが、開業資金の全額を自己資金で賄うと言う先生もいます。派手な暮らしや散財をしないで10年以上の間、お給料の多くを貯金に回すように励んでいれば5,000万円以上の貯金を持って、開業に必要な資金を賄うことも難しくありません。

また、親御さんが事業をしていたり開業医であったりして、多額の資産があった場合には相続対策の一環として開業資金を援助してくれたり、取引先の銀行から借りて融通してくれると言う場合もあります。

そういった方であれば、圧倒的に開業がしやすくなります。

どれぐらいの資金を貯めたら良いのかは、当社にご相談いただければ無料で資金計画のシミュレーションをいたしますので、お気軽にご相談ください。

資金調達の基本は銀行融資

親御さんが開業資金を融通してくれて資金調達ができる先生もいますが、多くの場合は開業資金の大半を銀行融資で調達することになります。

ドクターの信用度調査

ドクターの信用度調査

開業資金を銀行融資してもらいたい場合に、銀行が初めに確認することは、開業を希望するドクターが借りたお金をきちんと返済してくれるかどうかを判断する、融資先のドクターへの信用度の調査です。

銀行は、貸したお金をきちんと返してもらえるかどうかを心配するものです。そのため、安定収入が見込める事業計画であったとしても、ドクターの信用度が低いと融資を断られてしまうことがあります。

信用度の調査は、CIC(指定信用情報機関)という信用情報を登録する機関の情報を利用します。CICに問い合わせ、融資を希望するドクターに借金やクレジットカードなどの金融事故の記録があるかどうかの確認をします。

こうした記録は個人情報となりますので、銀行は融資を申し込むドクターから承諾書をもらって信用情報の確認を行います。

信用度調査で引っかかる人とは?

サラ金から多額の借金をしているとか、クレジットカードの支払督促を何度も受けていたり、公共料金や税金を滞納しているとか、住宅ローンの支払いを滞納しているなどの記録があり、ブラックリストに載っているようであれば開業資金の融資を得ることは先ず不可能となります。

普通に病院の勤務医として暮らしているドクターであれば、そうした信用情報機関のブラックリストに載るようなことはないでしょう。

稀にですが、たまたま海外旅行や高級ブランド店などで、クレジットカードを使って多額の買い物をしてしまい、そうしたお買い物の引き落としの時に、銀行口座の残金が不足して引き落としができなかった例がありました。また、転勤の多い勤務医生活の中で、住民税の支払いを滞納してしまった経験のあるドクターもいました。

そのような場合にも金額の多寡にかかわらず、金融事故情報としてしっかりと信用情報に記録されてしまいます。

そうした場合でも、ケアレスミスとみなされるような少額の事故であれば情状酌量の判断をしてもらえることもあります。

購入した投資用マンションが赤字の場合の注意点

手持ち資金のないドクターによくある投資

冒頭で、投資用マンションの話をしましたが、投資用マンションを持っていても銀行融資を受けられる場合は多いです。

ただし、投資用のマンションを何件も購入して1億円以上の借金を抱えているドクターもいますが、そういった方は銀行融資が難しい場合があります。

節税対策として購入を勧められていますので、賃貸の入居者がいた状態でも赤字になっているのが普通です。ほとんどがワンルームの賃貸マンションなので、新しいうちはともかく古くなってくると入居者が決まらずに空き部屋になってしまう場合もあります。

そうした場合に、入居者が出て行って家賃が入ってこない状況となってしまうと、ローンの支払いの全額を自分の給与から出さなくてはならなくなってしまいます。想定外の支払いが急に発生すると、当然銀行口座の残高が不足するようになりローンの引き落としができなくなって、金融事故として信用情報機関に登録されることになります。

こうした場合には情状酌量の余地なしとして、開業資金の融資を申し込みしたとしても間違いなく却下されてしまうことになります。

開業予定のドクターは投資にご注意

何年か前にとある銀行がシェアハウスの賃貸経営を勧める不動産会社と組んで、不正融資を繰り返した事件がありました。

これは不動産投資物件として手持ち資金のない人にも、シェアハウスを建築して賃貸収入が得られるという触れ込みで、必要な資金の全額を融資して誰でも不動産投資のオーナーになって安定した賃貸収入を得られると宣伝して、家賃収入が入ってくるめどのないままに多くの不正融資を繰り返した事件です。

予定していた家賃収入が入らなかったことで、この不正融資事件が明るみに出て来たのですが、節税対策として多くのドクターにもこうした物件の営業をしていたようです。

予定していた家賃収入が入らないことで、結果的には融資の返済ができずに多くの人が信用情報機関のブラックリストに載ることになってしまいました。

開業資金の融資を受けるための前提条件として、先ずは信用情報に傷がつかないような生活をしていることが大切です。

そのためには、しつこい営業電話が掛かってくると思いますが、決して投資用物件などの購入をしないようにして、まともな金融機関の融資を得られる前提条件を整えて置いてください。

クリニックの開業はどれくらいの資金が必要?

クリニックの開業はどれくらいの資金が必要?

クリニックの開業資金がどれくらいかかるのかというのは、専門の診療科目によっても違いますし、何よりも開業の目的によっても変わってきます。

クリニックの広さや内装工事費によっても、必要となる開業資金の総額が変わってきます。


医療機器等の設備費

診療科目による違いとは設備費の違いで、主に医療機器の取り揃え具合によって変わってきます。

設備費が少なくて済む診療科目

医療機器がほとんど必要ない診療科目の代表が心療内科・精神科です。また比較的医療機器の装備が少ないのが小児科です。どちらも、医療機器の設備が少なくて済むので、小児科では血算・CRPなどの血液検査装置を入れたとしても医療機器の予算としては400から500万円程度の準備ができれば良いでしょう。

設備費が多くなりがちな診療科目

内科ではレントゲン装置の有無にもよりますが、1,000万円から2,000万円程度、耳鼻咽喉科・泌尿器科・産婦人科などでは、装備する医療機器のグレードにもよりますが1,000から1,500万円程度です。美容皮膚科ではレーザー治療機の機種によっては3,000万円前後の医療機器の購入費用が必要となってくる場合もあります。

また、単体の医療機器として高額なのはCTやMRIなどで、脳外科や整形外科の開業医が導入する例もありますが、クリニックの開業ではあまり一般的とは言えません。

電子カルテの導入費用と内装工事費

その他の設備投資として必要となるものは、どの診療科にも共通する費用として、電子カルテの導入費用とクリニックの内装工事費用です。

電子カルテは、現在はクラウド型が主流となったため、導入費用は100から200万円程度とだいぶ下がってきました。

クリニックの内装工事の費用は、コロナ禍のこの数年の間に原油価格の高騰やウッドショックなどの影響を受けて、以前の価格帯から比較すると2割から3割程度の価格上昇が起こりました。

電気料金を始め、あらゆる場面で物価が上昇している現在では、クリニックのスペースを始め、必要とされる機能を積み上げていくときりがありません。開業に必要とされる資金はいくらでも積み重なって上昇してしまいます。費用が積み重なっていけばいくほど、経営を圧迫していきます。

安定経営にするための開業計画と開業資金

経営は入ってくるお金と出ていくお金のバランスです。入ってくるお金は、患者さんから得られるものですので、開業直後からどれだけ患者さんに来てもらえるクリニックにできるかが大事です。

開業と同時に患者さんが来てくれるクリニックにする方法

例えば、糖尿病内科を専門とする医師が、病院で主治医として診ていた患者さんの多くをそのまま引き継いで開業するという場合には、開業する前から多くの患者さんの予約を取ることができて、開業したその日からの売り上げが確定しているようなものなので、経営的な不安がなくなります。

そのための設備投資計画

開業したその日から患者さんに来てもらいたい場合に一番重要なことは、これまで勤務していた病院で行なっていた診療と同じレベルの診療を行うことができて、患者さんの期待を裏切らない診療体制を整えることです。そのためには、必要なスペースに医療機器と人員を配置するための設備投資を計画しなくてはなりません。

必要となる開業資金の総額は?

必要となる開業資金の総額は?

こうした開業計画は、循環器内科や心療内科・精神科などのように治療期間が長期化する診療科目であれば立てやすいです。

この場合に必要となる開業資金の借入額は、概ね7,000から8,000万円程度と高額になりますが、早期に黒字化できる最も安全な開業方法であるとも言えます。

当社の開業コンサルティングでは、できる限りこうした開業前に患者さんを獲得しておく方法による開業計画をおすすめしています。

同様に、一般的な開業の場合にも、近隣に競合するクリニックが無いか少なくて多くの患者さんを獲得できそうな場合には、同じように十分な設備を装備した開業形態が必要となります。

競合が多い場所での開業や時短開業をしたい場合の開業資金

その一方、競合の多い場所で開業する場合や、子育てをしながら時短開業したいという女性医師の開業などの場合には、開業初期は固定費を少なくして少ない患者数でも早期に黒字化できるように準備することが求められます。

先ずはテナントとして賃借するスペースを小さくすることで、クリニックの内装工事費にかかる費用を削減して、医療機器の装備も開院時は最小限に抑えます。そして、患者さんの来院状況を見ながら徐々に必要な医療機器を取り揃えていくという方法を取ることが安全な開業を実現するコツです。

こうした低リスク開業の場合に基準となる資金の借入額は、およそ5,000万円程度と考えておけば安全です。

入念な事業計画のすすめ

このように開業に必要となる資金というのは、必要と思われる資金を積み上げていけばきりがありません。ところが、開業する前の条件と開業する場所によって予想できる売り上げは様々に変わってきます。

開業して早期に黒字経営を実現するためには、予想される売り上げから必要な利益を確保した上での、借入金の返済も含めてランニングコストの予算に収まるような経営管理が必要となります。

このように先ずは、売り上げの見込みをよく検討した上で、そこから逆算して開業に必要な資金を想定する事が可能となります。

従って、クリニックを開業して失敗しないためには、入念な事業計画を立てて、手堅く経営していくことが大事です。そして、銀行から資金調達をする場合には、銀行向けの事業計画を別途作成することも資金調達のポイントです。

当社のクリニック開業コンサルティングでは、開業後も失敗せずに安定経営ができるようにトータルで支援を行っています。

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