クリニック開業後初の昇給とボーナスはいくらにすべきか?
クリニック開業後初の昇給とボーナスはいくらにすべきか?
クリニック経営の悩み相談Q&A
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クリニックを開業した直後は、患者さんが少なくて、売上よりも経費の方が多いですから、そういった状態では、スタッフさんたちが頑張ってくれていても、昇給やボーナスは出しにくいと思います。
当社がご支援させていただいたクリニックでは、早ければ半年ほどで黒字になるところが多いですが、それでも売上が損益分岐点を超えたところですから、すぐに昇給というわけにはいきません。
1年ほど経過すると経営が安定してくると思います。
スタッフさんたちは仕事に慣れて、てきぱきと仕事をしてくれて、開業当時よりも生産性の高い仕事をしてくれるようになっています。利益も出てきていますから、そのようなスタッフさんの頑張りに報いて、さらにモチベーションを高めていくためにも、昇給をしてあげたりボーナスを出してあげたりすることが大切です。
この記事では、開業してから初めての昇給やボーナスをどうしたらいいのかを解説いたします。これからクリニックを開業しようとしている先生は、開業後の経営を想定するためにも、ぜひともご参考になさってください。
開業後3ヶ月で黒字化したクリニックの先生からのご相談
当社にて開業支援をさせていただき、2024年春頃にクリニックを開業された先生から、スタッフさんの昇給とボーナスについてのご相談をいただきました。
ご相談は、次のような内容です。
「夏のボーナスは、黒字化したばかりだったので寸志を渡した程度でしたが、冬のボーナスはしっかり出してあげたいと思います。常勤スタッフさんとパートスタッフさんで、ボーナスはどうしたらいいでしょうか?また、スタッフさんの昇給はどうしたら良いのでしょうか?」
開業したばかりの時期は、クリニックの経営は赤字です。しかし、当社が開業支援させていただくときには、先生が開業するときの診療科目や開業場所から、「どれくらいで黒字化するのか?」ということも考慮した事業計画を立てます。
この先生は、開業前に立てさせていただいた事業計画よりも良い方向で、早い時期に黒字になりました。
黒字になるということは、患者さんがたくさん来院している状況ですから、スタッフさんたちも奮闘してくれているはずです。初めての開業で何かと不慣れな先生を手助けしてくれて、忙しい中でも仕事がスムーズに、生産的になるように工夫もしてくれて、患者さんにも喜んでいただけている状態のことと思います。
開業は春でしたが、半年も経過してくるとだいぶ黒字化してきたようで、先生はスタッフさんの冬のボーナスや昇給を考えてあげられる余裕も出てきました。
昇給やボーナスはスタッフのモチベーションになる
今回ご相談いただいた先生はスタッフのために昇給やボーナスをお考えでしたが、中にはあまり昇給やボーナスを出したくないとお考えの先生もいらっしゃいます。お給料やボーナスを出すと、その分だけ利益が減りますから、自分のお給料が増えないという考えです。
そのようなお考えもあるかもしれませんが、実は昇給やボーナスを出してあげた方が、クリニックの売上が増えて、ご自身のお給料も増やせる可能性があります。なぜなら、昇給やボーナスはスタッフのモチベーションになるからです。
スタッフはクリニックに勤めてから、仕事を覚えていき、先生がいちいち指示をしなくても正しく正確に仕事をしてくれるようになります。そうしたことで昇給したりボーナスが出たりすると、自分の仕事が認められたわけですから、仕事にもより熱が入るようになります。
ところが、仕事を覚えていっても昇給しなかったり、ボーナスが何もでなかったりすると、仕事ができるようにならなくても同じお給料なわけですから、仕事を覚えるのも遅くなってしまいます。患者さんへの対応も粗末なものになっていくことでしょう。
働くことで、より多くの収入を得たいと言う気持ちは、誰でも当たり前に持っていることです。
そのように、昇給やボーナスはスタッフさんのモチベーションになり、より良い仕事をしてくれるようになるので、結果的に売上高が増えて、クリニックに利益をもたらしてくれるようになるのです。
昇給やボーナスは高ければ高いほど良いのか?
では、スタッフさんの昇給やボーナスは、「高ければ高いほど良いのか?」と言えば、そうではありません。
相場よりもかなり高いお給料だと欠勤率が高くなる
相場よりも高すぎるお給料が出るクリニックでは、実はスタッフさんはサボりがちになりやすいです。
なぜなら、相場よりもたくさんのお給料が出るわけですから、多少休んでも標準よりもたくさんもらえるので、生活に余裕ができるからです。また、パートスタッフとして働いている方には、扶養控除の範囲内で働く人もいますから、それを超えるとなると出勤してくれなくなってしまいます。
そのように、頻繁に休んでしまうようなスタッフさんにしてしまわないためにも、昇給はある程度で抑えた方が良いのです。
昇給で経営を悪化させる場合もある
お給料は診療での売上から賄われます。そして、その売上は患者さんの来院数で決まります。
患者さんの来院数は毎月一定ではありませんから、患者さんの数が多い繁忙期があり、その反対に閑散期もあります。たまたま繁忙期が続いたので、スタッフさんのお給料を昇給してあげたところ、次の月から閑散期に入って売上高が減少し、昇給によって経営が圧迫されてしまう場合もあります。
ですから、クリニックの経営を考えると、むやみに昇給することを控えることも大事です。
クリニック開業後初めてのボーナスはどうしたらいいのか?
最初にクリニック開業後に初めて支給するボーナスの金額について解説いたします。
ご相談いただいた先生は、開業してから1年未満ですから、このまま順調に売上高が伸びていってくれたら良いと思います。しかし、まだ安心できない時期でもあると思います。
そこで、一般的なクリニックの相場よりも半分程度のボーナスを出してあげたら良いと思います。具体的には、パートスタッフさんは0.5~0.7ヶ月分を、常勤スタッフさんは1~1.5ヶ月分くらいを検討しては如何でしょうか?
この金額はもちろんスタッフさんの勤務状況に応じて査定します。
そして翌年以降は、翌年の夏まで経営状況の推移を見て、そのまま経営状態が良くなっていけば、翌年からの賞与基準は、常勤スタッフさんは夏のボーナスを1ヶ月、冬のボーナスを2ヶ月、パートスタッフさんは夏を0.5ヶ月、冬を1ヶ月程度とし、これを基準として経営状況とスタッフさんご本人の勤務状況に合わせて査定して下さい。
ボーナスの金額は、もちろん地域のクリニックの相場によって変動してきます。
クリニック開業後初めての昇給はどうしたらいいのか?
続いて、昇給の時期や金額について、クリニック開業後初の昇給を解説いたします。
昇給の時期は4月
まず昇給の時期ですが、世間的には昇給は4月になりますから、前年の4月から3月までの勤務状況に応じて、4月に昇給をします。
経費節減を考えて、昇給を7月にするところもあります。7月の昇給ですと、冬のボーナスが昇給前のお給料の金額を考慮して計算されますし、社会保険料は4月~6月の平均給与で計算されるので、社会保険料が多少安く済むと言うこともあります。
そうはいっても、4月が世間一般的な昇給の時期ですから、世間に併せて4月に昇給を考えれば良いと思います。
昇給の金額と回数の制限
そして昇給の金額ですが、5千円から1万円程度の定期昇給にした方が良いと思います。どの程度の昇給かは、クリニックの経営状況やスタッフさんの勤務状況に応じて金額を決めます。
あまり高い金額の昇給を続けていくと、お給料は減らすことができませんから、固定費が大きくなって経営を圧迫していく恐れがあります。経営を圧迫してきたからと言って、次の年にスタッフさんの昇給分を減額してしまうと、モチベーションを維持することが難しくなります。
また、昇給は永遠に続くのではなく、目安としては5年くらいでその職種の上限に達するように考えれば良いかと思います。「昇給は5回まで」という具合です。
なぜ5回までなのかと申しますと、クリニックの場合は通常5年くらいの間で退職するスタッフさんが多いので、スタッフさんの新陳代謝と同時に、支払うお給料が新人の給与基準に戻るので、固定費の上昇を一定の枠内に収めることが出来るようになります。
経営の安定化が大切
昇給の回数に上限があれば、「スタッフさんのモチベーションにつながらないのではないか?」とお考えかもしれませんが、ご安心ください。
クリニックが忙しくなって、売上げが多くなった場合には、月単位で何かしら臨時ボーナスや報償金などの名目で、職員さんの給与に上乗せしてあげれば、成果報酬となって固定費としての人件費を上げないで済むことになり、経営を安定化することが出来ます。
先生お一人のクリニックでは、上げられる売上げには限界があります。お給料を上げすぎてしまって、クリニックの経営が悪化してしまったら、それこそスタッフさんのモチベーションを下げてしまうことでしょう。固定費は一定の水準に保つ事によって利益を安定的に上げることが可能になります。
以上、クリニックを開業して初めての昇給とボーナスについて解説いたしました。
まとめると、まずはスタッフのモチベーションのためには、昇給やボーナスを出した方が良いということです。そして、あまり高い昇給をするとクリニックの経営を圧迫しかねないということをお伝えしました。
当社のクリニック開業支援では、早期の黒字化と安定した経営を目指したクリニックづくりをコンセプトとしています。また、開業後もこのような経営のご相談に対応いたします。クリニックの経営をしていくと、開業後にもいろいろと悩みが出るものですが、そのときにすぐに相談ができる体制を整えています。開業後の経営相談なども無料で対応しております。
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