専門医でなくてもクリニックを開業して黒字化は可能でしょうか?
専門医でなくてもクリニックを開業して黒字化は可能でしょうか?
クリニック経営の悩み相談Q&A
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内科医として勤務医をしている先生から、「都内で内科クリニックを開業したい」とのご相談をいただきました。その先生は、「専門医でなくてもクリニックを開業して、クリニック経営をやっていけるか?」という悩みをお持ちでした。
結論から先に述べますと、診療科目が一般内科だけですと、都内での開業は黒字化が難しいことが言えます。
実際に、都内に開業しているクリニックの科目を調べてみると、内科クリニックが一番多いので競合が多い事から、内科クリニックの経営は難しいと言う事になります。
しかし、ご安心ください。
ご相談いただいた先生は、当社の開業支援によって内科クリニックを開業して立派に経営をし、1年ほどで黒字化を達成し、勤務医のときよりも手取り収入を増やしていらっしゃいます。
この記事では、専門医でなくてもクリニックを開業して黒字化は可能かどうか、内科クリニックをどうやって黒字化するのか、クリニック開業コンサルタントとしてのノウハウをご説明いたします。
都内で内科クリニックの開業をお考えの先生は、「東京で内科医院を開業して失敗しないためのポイントと開業準備」も併せてご覧ください。
内科クリニックは黒字化が難しい?

東京で勤務医をしている内科医の先生から、独立開業のご相談を頂いたときに、「内科クリニックでも黒字化は可能でしょうか?」というご質問をいただきました。
それにお答えしたいと思います。
内科クリニックの黒字化はなぜ難しいと感じるのか?
内科クリニックは、皮膚科や産婦人科などの専門性の高いクリニックと比べて特色が少ないため、「開業しても集患ができて、黒字化できるのだろうか?」とお悩みの先生は多いです。
患者さんの立場からすると、例えば「発熱をした」とか「ワクチン接種」となると、内科クリニックですが、「火傷をした」となると内科ではなく皮膚科に受診します。「風邪をひいたかな?」とか「少し熱が出たかな?」という程度の軽い状態では、家でゆっくり寝ている人も多いため、わざわざ内科クリニックに行く人は少ないでしょうから、一般的には「内科クリニックは黒字化が難しい」と言われる事があります。
このように考えたならば、「何か特色を出した方が良いのではないか」と考えるかもしれませんが、皮膚科クリニックを経営している医師からすると、「内科クリニックはうらやましい」と感じることもあります。なぜなら、内科クリニックには皮膚科クリニックには無い、経営に有利な点があるからです。
内科クリニックが持つ経営に有利な点とは、「少ない患者数でも黒字化がしやすい」ということと、「他の診療科目とも組み合わせしやすい」ということです。
内科クリニックは少ない患者数でも黒字化がしやすい理由

「少ない患者数でも黒字化がしやすい」ということについて、先にご説明いたします。
クリニック経営で、ぜひ覚えておいていただきたい数式が出てきますが、難しくありませんから、ついてきてください。
クリニックの売上高は、次の式が成り立ちます。
売上高=診療単価×患者数
診療単価は、内科クリニックの場合は、おおよそ6,000円ほどです。それに、1年間に来院した患者さんの数を掛けると、1年間の売上高が計算できます。
同じ患者さんの数が来院するクリニックであったとしても、診療単価が高い診療科目のクリニックの方が、売上高が高くなるため、それだけ黒字化がしやすくなります。
また、クリニックの最終利益が黒字になるかどうかは、次の式が成り立ちます。
最終利益=売上高-費用
1年間に得られた売上高から、1年間で使った費用を引いたら、決算での最終利益となります。その最終利益がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字ですが、売上高よりも費用の方が小さければ黒字、大きければ赤字になります。
最終利益>売上高-費用 ・・・ 黒字
最終利益<売上高-費用 ・・・ 赤字
この費用は、診療材料費や人件費、テナントの家賃といった費用の合計になります。内科クリニックは、多くの医療機器を導入しなくても開業ができるので、費用を下げることができ、黒字化しやすいと言えます。
東京で内科医院を開業するときは専門診療も加えること

地方であれば、クリニックの数が少ないので、内科クリニックを開業したら、地元の人たちの多くが先生を慕って来院してくださるかもしれませんが、都内であればクリニックの数が多いので、患者さんからすると選択の幅が広がります。
そうすると、都内に住む患者さんは、病やケガの内容に応じて、「専門性の高いクリニックに行きたい」と考えます。そして、「内科クリニックは体調が悪いと感じたときだけ」と考える人も多いです。
そこで、診療科目を「内科」とだけ掲げるのではなく、「皮膚科」や「アレルギー科」、「小児科」といった診療科目を合わせることで集患に効果が上がります。そして、クリニックの名前も、「〇〇内科クリニック」とするだけではなく、「〇〇クリニック、内科・皮膚科・アレルギー科・小児内科」といった具合に、いろいろな診療科目での診察ができるファミリークリニックとしてPRするのです。
そのようにすれば、何かあればご家族全員でいつでも利用してもらえるクリニックになります。
先生によっては、「専門的な診療の経験がない」と思われる方もいらっしゃることでしょう。その場合は、クリニックを開業するまでの準備期間中に、他の専門医の先生から診察のスキルなどを教わっておいてください。
実際にそのように勉強をして、いろいろな専門科目を取り入れている内科クリニックの先生は多いです。
内科クリニックはミニマム開業で黒字化しやすくなる

ミニマム開業という言葉をお聞きになられたことはあるでしょうか?
ミニマム開業とは、小さな規模のクリニックを開業する開業方法のことです。ミニマム開業は、黒字化しやすいので、低リスクなクリニック経営ができます。
また、租税特別措置法(特措法)第26条に記載されている医師優遇税制を活用し、先生の手取り収入を大幅に増やすこともできます。
ミニマム開業だと黒字化しやすい理由
先生によっては、「売上高を増やし、たくさんの患者さんを診療した方が黒字化しやすい」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際は黒字化しやすいクリニックは、経費が小さいクリニックなのです。そのことを、計算式を使って、解りやすくご説明します。
クリニックが黒字か、それとも赤字なのかは、クリニックに残る最終利益がプラスかマイナスかによって決まります。そして、最終利益の数式は、次の式で計算できます。
最終利益=売上高-費用
この式をもう少し細かく説明すると、売上高は「売上高=診療単価×患者数」です。また費用には、大きく分けると固定費と変動費があり、「費用=固定費+変動費」です。
固定費とは、テナントの家賃やスタッフの人件費などの、患者さんを何人診察しても固定でかかる費用のことです。固定経費とも言います。変動費とは、診療材料費や検査の外注委託費など、患者さんの人数に比例してかかる費用のことです。変動経費ともいいます。
変動費は、「患者さん一人当たりにいくらの費用がかかるのか」によって変わるので、診療単価から患者さん一人当たりの費用を引けば、「患者さん一人当たりの利益」になります。
これらの式を解説すると、
最終利益=患者さん一人当たりの利益×患者数-固定費
最終利益を増やすためには、固定費が一定であれば患者数を増やすことです。患者数が一定であれば、固定費を減らすことです。このどちらでも最終利益を増やすことができます。
ミニマム開業とは、小さな規模のクリニックを開業する開業方法でした。規模が小さいと、テナントの家賃が少なくて済み、スタッフの人数も少なくて済むので、固定費を低く抑えることができます。つまり、ミニマム開業は黒字化がしやすくなり、低リスクな経営を実現できるクリニックとなります。
これらの式は、クリニック経営でとても大切ですから、事業計画を立てるときまでに覚えておいていただきたいと思います。
特措法第26条による医師優遇税制で先生の手取りが増える

特措法第26条による医師優遇税制とは、簡単に述べると、「保険診療の売上高が年間5,000万円以下、自費診療の売上高が年間2,000万円以下の両方を満たしていたら、実際にかかった経費が低くても、『売上高の約70%』と計算して税務署に申告しても良い」というものです。
特措法第26条を活用すると、なぜ手取り収入が増えるのか、具体的にご説明いたします。
例えば、クリニックを開業して1年間の売上高が、保険診療のみで5,000万円ちょうどだったとします。また、5,000万円の売上高を得るために、テナントの家賃やスタッフの人件費、水道光熱費などがかかります。その合計金額が2,000万円だったとします。
本来であれば、最終利益は5,000万円から2,000万円を引いた、3,000万円になります。3,000万円に1,000万円ほどの税金などがかかり、先生の手取り収入は2,000万円ほどになります。

特措法第26条を活用すると、「5,000万円の約70%を経費として認める」というものですから、税務署に申告する最終利益は、5,000万円から経費として認められる3,500万円を引いて、1,500万円で申告をします。すると、税金などは半額ほどに減って500万円ですから、申告分の手取り収入は1,000万円です。
さらに、申告した経費は3,500万円ですが、実際にかかった経費は2,000万円ですので、その差額の1,500万円は先生の手取りになります。つまり、税務申告をして残った1,000万円と差額の1,500万円を足した2,500万円が先生の手取り収入となります。このシミュレーションでは、特措法第26条を活用するだけで、先生の手取り年収が500万円も増えました。

ミニマム開業をして、特措法第26条を活用すれば、黒字化しやすく、なおかつ先生の手取り収入を大幅に増やすことができます。
内科クリニックはミニマム開業と相性が良い

ミニマム開業では、なるべく固定費をかけないようなクリニックにすることがポイントでした。内科クリニックは、多くの医療機械を導入しなくても開業ができるので、床面積が小さなテナントでも開業ができます。
床面積が小さなテナントは、テナントの家賃が安くなります。なぜなら、テナント代は、坪単価×床面積で決まるからです。すると、集患がしやすい立地条件の良い場所でテナントを借りても、テナント賃料を割安に抑えられます。
立地条件の良い場所とは、駅前や繁華街などです。通勤や通学などの途中で、内科クリニックを利用してもらいやすくなるので、患者さんの数を増やしやすく、なおかつ固定費が低く抑えられるので黒字化しやすい低リスクな内科クリニックとなります。
以上、内科医の先生が、「内科クリニック」を開業して黒字化は可能かどうかをご説明いたしました。
まとめると、内科クリニックは固定費があまりかからない様にする事で黒字化しやすいことと、ミニマム開業による特措法第26条の活用すること、他の科目を取り入れることによって、さらに黒字化しやすく先生の手取り収入を増やしやすいです。
内科クリニックに限らず、クリニックを開業させるためには、専門のクリニック開業コンサルティングに依頼することになります。もし内科クリニックの開業をお考えの場合は、上記のような知見や開業ノウハウのあるコンサルタントに依頼してください。
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