クリニック開業の事業計画作成支援
事業計画には、クリニックの安定経営を目指すために作成する事業計画と、金融機関から融資を得るための事業計画の2種類があり、この2つを作成することが必要です。また、クリニック開業後の安定経営のためには、資金繰りを明確化する資金繰り表を作成することも大事です。
当社の開業コンサルティングでは、ドクターの夢と現実の経営を考慮して何度も条件を変えてシミュレーションし、これらの事業計画を作成していきます。
いざクリニックの開業を決意すると不安がいっぱい
開業医を目指す医師の不安
勤務医として生活している中で、親御さんやご親戚に開業医がいる場合には、クリニックの開業を考え始めると何となく身近に見てきたことがそのまま開業のイメージになると思います。また、医局の先輩が開業している場合なども、先輩から聞いた体験談が先行して、自分が開業したシチュエーションをイメージすることが多くなると思います。
ところがいざご自身が開業しようとすると、何からどう始めたら良いのかさっぱりわからなかったり、どれくらいのお金がかかるのかもイメージできなかったりするものです。
「開業して売り上げがどのくらいになるのか」「毎月かかる費用がいくらくらいになって、どのくらい集患ができたら赤字にならないで経営していけるのか」などと、独立開業してからの成功の希望よりは、経営者になると言う心配と不安な気持ちが先行してしまう医師がほとんどです。
私共の会社にご相談に見える先生方も、ほとんどの方がそのような不安を抱えています。「開業して自分の思い通りに自由に診療をして、誰にも命令されることなく好きな様に暮らしたい」と言う夢を実現したいという気持ちがあるものの、開業に失敗して借金を背負って、それを返済するだけの辛く味気ない人生になってしまうことへの不安を常に抱えた状態でご相談に来られます。
事業計画を作る意義とは?
そこでまず私が開業コンサルタントとしてお話しすることは、「先生がお考えになっている開業というものを数字で表現してみましょう。」というご提案をしています。それをまとめたものを事業計画と言います。
漠然としてモヤモヤとした開業という事業を、具体的な数字に落とし込んで明確に表現していくことで、開業場所の想定ができて、開業にかかる費用の目安もわかり、売り上げと費用を構成する要素も明確になります。そうすることで、クリニックを開業する前に、失敗の原因と成功の要素を明らかにすることが可能となります。
これが開業の事業計画を作るということの意義です。
そのために、開業の事業計画を検討する場合には、あらゆるパターンを想定して条件設定を変更していきながら、何度も資金計画のシミュレーションを繰り返して納得のいく道筋を明確にしていく事が大切です。
段階的に事業計画を作成
また、事業計画は段階的に行うことが大事です。
- 第一段階=開業コンセプトを固めるために繰り返す開業構想を数字に置き換えたシミュレーション用の事業計画
- 第二段階=開業場所が見つかってから作成する現実の条件を前提とした詳細な事業計画
- 第三段階=融資を受けるための銀行向けの事業計画
以下、クリニックの新規開業を目指す医師向けに、事業計画の作成について分かりやすくご説明いたします。
開業のコンセプトを固めるための事業計画の作成
事業計画作成の第一歩は、先生がお考えの開業の姿をイメージし、そのイメージを具体的な数字に置き換えてシミュレーションを繰り返すことです。
ただし、開業に関わる様々な条件設定のやり方は、先生方には経験がないことから、開業コンサルタントなどの専門家から適切なアドバイスを受けることがとても大切です。
事業計画に入れておきたいことは、例えば、テナントビルで開業する場合の相場観や、契約手続きにまとわる各種の費用などに関してや、内装工事や家具や備品などの予算設定から、看板チラシなどの広告宣伝の方法と費用、職員の採用に関する人件費の設定などです。これらは、勤務医としての生活の中では経験することも勉強する事もないので、開業に関しての基本となる知識を持っていないのが当たり前です。
当社の開業コンサルティングでは、そうした様々な条件設定に関して、どの様な開業を希望するのかをヒアリングしながら条件設定を様々に変更して、資金計画のシミュレーションを繰り返していきます。
ところがこの段階では、まだ具体的な開業場所が決まっていませんので、明確な数字は決まりません。あくまでもドクターご本人の思いを目に見える形で数字に置き換えていくということになります。
逆にいうと、こうしたシミュレーションを繰り返し行うことによって、本当に探すべきテナントビルの条件や、開業成功のために選択するべきあらゆる条件の設定が明確になってくるのです。
開業場所が見つかってから作成する事業計画
クリニックの開業場所探し
さて、前述の様なシミュレーションにより明らかになった開業のコンセプトを前提として、現実にクリニックの開業場所を探すと言うことになります。
現実問題として、開業場所を探すのに効率の良い方法というものはありません。
開業場所として想定するエリアのテナント物件情報をもれなく集めて、ただひたすらに、開業のコンセプトを満足できそうなテナント物件を探し続けることをします。もちろんテナントビルの情報収集は不動産会社を通じて行います。
でも例え良い場所が見つかったとしても、そこですぐに契約できるとは限りません。
テナント契約の成立には建物の大家さんの承諾が必要ですので、テナント契約の手順としてまずは入居申込書を提出する必要があります。
同じ物件に複数の申し込みが重なった場合
複数の不動産会社が同じ様にテナントビルの紹介をしていますので、入居の申し込みをしようと思った時にはすでに他の不動産会社から別の申し込みが出ているという場合もあります。
クリニックとして良い物件というものは、開業場所を探している他のドクターから見ても同様に良い物件ということが多いので、長い間入居者が決まらずに空いていた物件でも、不思議なことに申し込みを出した途端に、別のドクターからの申し込みが入ってくることも何度も経験してきました。
申し込みが複数入った場合には、大家さんは入居申込書を受け取った順番に入居者の審査をしていくことになります。
初めの申し込み者と条件が折り合わなかった場合には、そちらをお断りして次の申込人と入居条件の折衝を始めることになります。
大家さんとしては、自分により有利な条件を提示してくれている相手と契約したいと思うのは当然のことなので、テナント契約を実現したいなら、初めの不動産広告に提示してある賃料や保証金・入居時期などの諸条件に関しては、その通りに受け入れて契約を進めていかないと入居を承諾してくれません。
長い間空いていたテナントの場合
テナントの申し込み者が一人だけで、しかも長い間空いていた様な物件であれば入居者側に有利な条件で色々な交渉を進めることができます。
稀な事ですが、中には開業する月までおよそ6カ月間に亘る開業準備期間中の、家賃の支払いを免除してもらえたという例もありました。
大家さんからしてみれば、長い間入居者が決まらずにいたことで、待ち望んでいた入居の申し込みを受けたい気持ちが強くなっています。また、クリニックという真面目な業態の入居者が入ってくることで、今後も長期間にわたって安定した家賃収入が保証されることを考えた上で、フリーレントという形で入居者に便宜を図ってくれる事があります。
フリーレントとは?
フリーレントとは、家賃が入居契約後すぐにかかるのではなく、一定期間の家賃を無料にしてもらうサービスのことです。
普通は、テナントの申し込みをしてから順調に準備を進めても開院までには6ヶ月ほどの期間がかかりますが、初めの3ヶ月間は内装工事の設計を始め各種の準備を計画していく期間となるのでテナントを使うことはありません。
内装工事に入るまでの準備期間中は、テナント室内を使うことがないのでこの期間は賃料を免除してもらうフリーレント期間として、入居申し込みの際に条件交渉をすることはよく行われることです。
フリーレントの契約ができた場合は、その分だけ開業のための費用を安く抑えることができます。その場合にも、事業計画の修正を行います。
大家さんとの交渉での注意点
ただし、この様な交渉も相手をよく見てから行わないと、予想しない様な反応があって大変に痛い目にあうことがあります。
大家さんが商売人であって、お互いの条件をうまく調整していきながら落とし所を決めていく様なタイプであれば、多少オーバーな条件の提示をしていきながら、徐々に譲歩をしていって最終的には目的とした条件に落ち着かせるという方法もあります。
ただし、大家さんがプライドの高い人であったり、テナントビルを建てた時の借金がたくさん残っていて資金繰りに余裕がなかったりする場合には、交渉ごとが多くなると大家さんの心証を害して嫌われてしまい、結果的に入居を断られてしまう場合もありますので、こうした交渉ごとは相手の性格までよく見ながら慎重に進めていくことをお勧めいたします。
大家さんとしては入居の申し込みを受けて契約したら、契約の翌月から家賃を払ってもらいたいというのが本音ですので、万一同時に他の申し込みが入った場合には、テナント契約を実現する為に、翌月から家賃の支払いを始めて、開院するまでの準備期間である6ヶ月間も丸々家賃を払い続けなくてはなりません。
お家賃の高いテナントであれば、それだけで数百万円を支払う事になる場合もありますので、空家賃の支払いを節約するためには極力開業準備を早めて、スピーディーに開業できる様にしなくてはなりません。
この様に、開業準備の過程の中でプランニングの時期は自分の自由に構想を進めていくことができるのですが、テナントビルの申し込みに始まって、相手がある交渉が進んでくると、自分の都合の良いようにはことは進んでいきません。
開業場所が決まってから作成される事業計画
そうした状況に応じて、開業場所のテナントが見つかってからの事業計画は、状況に応じた変数の調整を繰り返しながら精度を高めていくことが求められてきます。
そして、開業場所が決まったら必要となる経費の想定が明確に決まるので、現実の経営を反映させた事業計画を作成することができるようになります。
現実の経営に反映させていく事業計画は、厳しすぎるくらいに前提条件を設定していくことが大切です。当然開業初期の赤字も想定していきながら黒字経営に転換するまでのプロセスや期間も厳し目に見ていくことで、開業してから初めて経験する苦労も動揺しないで受け入れる覚悟ができてきます。
現実の事業計画とは、開業してから失敗しないように見通しを立てていくための計画なのです。
融資を受けるための事業計画
現実の事業計画と融資を受けるための事業計画の違い
こうした苦労や厳しさが盛り込まれた事業計画は開業するご本人が把握しておけば良いことなので、事業資金の融資を受ける際に銀行に提示する事業計画とは、全く別のものであるということをよく理解しておく必要があります。
世の中の現実の事業というものは、経営者が油断すればあっという間に潰れてしまったり、廃業せざるを得ない状況に陥ってしまうことが当たり前のようにあります。
ところがそうした不安があるということを、開業の資金を融資する銀行に正直に話してしまうと、まず事業資金を借り入れることは出来なくなってしまいます。
金融機関の事情
アベノミクスに始まった日銀の金融緩和はゼロ金利にまで至ったことから、銀行の貸付金利も極端に少なくなってしまいました。
現在の銀行はかつてのように融資した資金の金利で利益を上げられるような状況ではなくなってきています。
例えば1,000万円の事業資金を融資したとしても、貸付金利が年間1%とした場合には一年間の利益は10万円に過ぎません。
もしもこの資金を貸し付けた先が倒産や廃業などという事になって、貸し倒れという状況になった場合には、銀行が貸付して不良債権となった資金を他の融資先の利息で穴埋めしようとした場合には、実に100年かかる事になってしまいます。しかもその100年間は損失の穴埋めをするというだけで、入ってきたお金は利益という事にはなりません。
事ほど左様に現在の銀行経営は厳しい状況にあります。そのような経営状況の厳しい銀行が貸付先を審査する場合には、絶対安心で貸し付けた資金の返済に不安のないことが絶対の条件となります。
銀行の融資決定はマニュアルで判断される
かつての銀行は大学生の就職希望の第一位となる優良企業でした。当然利益率も高くて銀行員の給与も高い水準でしたので就職するには狭き門でした。
時代は変わって、ネットバンクや仮想通貨・キャッシュレスなどといった貨幣経済を支えてきたシステムの激変によって、従来の様な実店舗と現金を扱ってきた銀行の存在意義が薄れてきて、企業としての社会的な地位も低下してきました。
そうなってくると経験豊富なベテランはリストラでいなくなってくるし、若手の優秀な人材は業績の良い企業に転職してしまい、少なからずの銀行で総合力が低下してしまいました。その結果マニュアルに沿った形での業務や融資審査をすることが安全な銀行経営の定番となってしまったのです。
プロパー融資という言葉があります。これは、銀行自身が融資と事業の将来性を精査して自身の責任で事業資金の貸付を行うものです。
ところが今はそうした融資を実行する銀行はほとんどなくなってしまいました。
その結果、信用保証協会の保障をつけてもらったり、保障会社をつけたりして融資する側のりスクをゼロにした上での融資案件が主流となってきました。
銀行から融資を受けるための事業計画
そうした体質をもった現在の銀行から融資を受ける場合には、現実の社会に起きるリスクを加味した厳し目の事業計画を提示しても受け入れてもらうことはできません。
リスクゼロの安心安全な事業計画でないと、銀行の融資を受けることは大変に難しくなってきます。
事業計画の本質は、実施する計画は厳しすぎるくらいにあらゆるリスクを想定することで潰れないクリニックを開業することです。それとは逆に開業資金の融資を受ける場合には、バラ色の幸せになる事業計画を銀行に提示することが資金調達を成功させるためのポイントとなります。
開業した後に行う資金繰り表の作成
資金繰りとは、クリニックの資金や入ってくる現金、出ていく経費を予測することです。それを表にして分かりやすくしたものを資金繰り表と言います。資金繰り表は、経営計画を構成している重要な資料の一つです。
実際に開業すると事業計画と異なることが出てくる
相当に綿密な事業計画を組んだとしても、やはり現実に事業を展開していく中では様々な点で異なる部分が現れてきます。
その様な場合にも基本となる事業計画がしっかりと作られている場合には、実際に行う開業準備の中でも、各種の決定事項を修正しながら進めていくことができます。その後、開業をスタートしてからは、当然毎日違った状況に直面する事になります。
その直面する現実の中で、ドクターが最も気になることが資金繰りです。資金繰りを把握できていないドクターが、経営の不安に襲われるものなのです。
最初の半年は資金が減り続けることを想定
事業計画で想定した資金繰り表の中では、クリニックが開院してからの半年間は手持ちの資金が減り続けるという想定をしていきます。
開業する前の事業計画というペーパー上の計画段階では、論理的に正しいと理解していたと思っていたドクターも、いざ現実に手持ちの資金がどんどん出ていき始めると誰でもが不安になってきます。
初めて経営者になって経験する赤字からの開業スタートですから、このまま赤字が続いて潰れてしまうのではないかという不安が出てくるドクターは多いのですが、それも当然のことでしょう。
実際に開業をスタートしてからは、その先の資金の流れの見通しを立てていくことは大変に重要なことです。
資金繰りの把握で大切なこと
ところが日常の会計帳簿の作成を税理士さんに任せていても、毎月の資金の流れを把握するまでには、税理士さんに提供した資料の整理と入力が完了するまでに相当な時間がかかってしまい、タイムリーにクリニックの資金の流れや先々の見通しを把握することが困難です。
税理士さんは決算の元になる正確な帳簿を作るために、1円単位の資金の流れも正確に入力して結果を報告してくれます。もちろん税務署に申告する決算のためには当然のことなのですが、新規開業したばかりのクリニックの院長としては、今の手持ち資金の状況と来月からの資金の流れを、100万円単位のおおよその数字でタイムリーに把握しておくことがとても大切なことなのです。
いくら正確な資金の流れを把握していたとしても、クリニックの銀行口座に1,000万円近い残金が残っていないと、安定した事業を継続していく資金としては不安が残ります。
資金繰りが簡単に把握できる当社オリジナルの資金繰り表システム
当社に開業コンサルティングをご依頼されたドクターには、新規開業して初月のレセプトが出た後に、院長先生がご自分で簡単に作成できる、当社オリジナルの資金繰り表のシステムをご提供しています。
この資金繰りシステムを使うことで、手持ちの運転資金の把握が容易にできて、先々までの売り上げの予測と毎月支払わなくてはならない経費の把握が簡単にできる様になって、安全な経営を進めていくための頼りになる指針となります。
以上、クリニックを開業する場合の経営計画作成の流れやポイントなどをまとめました。クリニックを安定経営でき、資金調達にも成功する事業計画を作成したいドクターは、ぜひオクスアイにご相談ください。