自分と同じ診療科目のクリニックが存在する場所での開業は可能か?
自分と同じ診療科目のクリニックが存在する場所での開業は可能か?

都心では、クリニックの数が増え、クリニックの数が飽和しているようにも感じます。
山手線のとある駅前では、10年前は心療内科・精神科のクリニックが1つ~2つほどだったものが、今では3倍ほどに増え、激戦区になってきています。そのように、クリニックはどんどん増えてきています。
そのようなことで、クリニックを開業したいと考えたときに、開業したい場所にすでに自分と同じ診療科目のクリニックが存在する場合が良くあります。そうしたときにクリニック経営に関する知識が無ければ、「競合することを嫌って開業する場所を変更しよう」と思われる先生が多いことでしょう。そして、迷っているうちに、別の医師が開業してしまって、「しまった」と思うこともあります。
この記事では、クリニックを開業しようとしたときに、自分と同じ診療科目のクリニックがすでに存在する場合は、そこで開業しても良いのか。開業する場合は、どのようにしたら良いのかを、事例を交えて解説いたします。
クリニック激戦地区でも利益を出す方法は「ミニマム開業」

同じ専門科目のクリニックが多いエリアは、集患のための激戦地区になってしまいます。集患の方法は、ホームページや看板などさまざまありますが、SNSでの口コミも重要です。そのため、先生の優しさやコミュニケーション力だけでなく、スタッフの対応の良いクリニックが人気となっています。
つまり、「当クリニックがいちばん古くからやっている」ということだけではこれからは通用しません。患者さんにとっては、「新しく開業したクリニックは、開業医としての経験は少ないかもしれないけれど、最新の専門知識を持っているかもしれない」と考える人もいます。
また、昔からやっているクリニックは、患者さんが減ったからと言ってもすぐに引っ越しはできませんので、家賃などの固定費は高いままになるでしょう。固定費が高いままですと、新しいクリニックが近所にできて、患者さんの数が減ってしまったら、固定費の高いクリニックはすぐに赤字になってしまいます。
ところが、新しいクリニックでは、ミニマム開業を目指すことで、なるべく固定費を抑えた開業をすると、患者さんの数が少ないうちから黒字化が可能です。
昔からやっているクリニックの先生やスタッフさんたちは、すぐに患者さんの対応やコミュニケーション方法を変えることは難しいですから、患者さんたちが対応の悪さを我慢して通っていたとしたら、新しいクリニックに乗り換えをするでしょう。
クリニックの激戦地区では、そういった厳しい集患競争が繰り広げられることになります。新しいクリニックが出来ることは、クリニックを経営される先生方にとっては大変なことですが、患者さんにとっては、「丁寧な対応をしてもらえる」ということで、喜ばしいことだと思います。
開業予定地にまったく同じ診療科目のクリニックがある場合

先ほど、山手線の駅前で心療内科・精神科クリニックが激戦区になっていることをお伝えしました。そのように、開業予定地に同じ診療科目のクリニックがある場合、次のような心配があると思います。
- 同じ診療科目で開業してもいいのだろうか?
- すでに開業されている先生に認めてもらえるのだろうか?
- 集患はできるのだろうか?
同じ診療科目で開業してもいいのか?
まず、「同じ診療科目で開業してもいいのかどうか?」ということですが、これはケースバイケースです。都心の駅前のように、明らかに需要がある場所では、新しく開業しても良いと思います。その場合でも、患者さんがあまり被らないように、駅の反対側に開業したり、少し離れたところに開業したりと、配慮することも大切です。
「同じテナントビルに入居した」とか、「目の前に開業した」という露骨に競合するような開業場所は当然避けた方が良いです。
都心から少し離れた地域では、まだそれほど激戦区は多くないので、なるべく競争を避けて開業したい先生は、都心から離れることをおすすめする場合もあります。また、すでに開業されている先生と競争にないようにするために、できるだけ他のクリニックと専門領域が重ならないように配慮して開業することが大切です。
すでに開業されている先生に認めてもらえるのだろうか?
すでに開業されている先生と診療科目が被っている場合、例えば皮膚科クリニックを開業しようと計画していて、開業予定地にすでに皮膚科クリニックがあったとしましょう。そうしたときに、そのクリニックの院長先生から認めてもらえるのかどうかですが、それは嫌がられて当然です。
これはコンビニと同じ原理です。幹線道路の交差点の空き地にコンビニを開いたとしましょう。今までは他のコンビニが無いので、売上を独占できていました。ところが、その道路の300m手前に別のコンビニが新規開業してしまったら、どのように感じるでしょうか?
クリニックを開業したときは、近隣のクリニックにご挨拶に伺うことが基本ですが、競合するクリニックの先生からは嫌われて当然です。露骨な嫌がらせはないでしょうが、SNSなどの口コミに悪口を書かれて、クリニック経営に集中できなくなる場合もあります。
集患はできるのだろうか?
集患ができるかどうかは、先ほど説明したように、問題ありません。集患の良し悪しの基本は、開業場所です。昔からあるクリニックよりも、立地条件が良い場所で開業することで、集患がしやすくなります。
そして、先生の患者さんへの対応です。一般社会でも威張っている上司は嫌われます。それは患者さんの立場でも同じです。先生は患者さんに威張ることは無いでしょうが、患者さんに心が伝わるような優しい対応をしている先生と、サバサバして流れ作業のように患者さんに接している先生がいたとして、どちらのクリニックに患者さんが通い続けてくれるか、SNSで良い口コミを書いてくれるかは、明らかなことです。
さらには、クリニックの患者さんの数が少なくても黒字が出るように、立地条件が良いところでミニマム開業をすることで、開業後になるべく早く黒字化ができるようになります。
クリニックが少ない地域で開業する場合

クリニックが少ない地域で開業する場合は、専門性の高い診療科目だけですと、収益性が悪くなる場合があります。そういった場合は、開業前にいくつかの診療を経験しておき、開業してからの集患の幅を広げるために複数の診療科目を掲げることが効果的です。
例えば、内科をご専門としてきた先生がクリニックを開業するときに、皮膚科やアレルギー科、小児科も診療科目として標榜する場合があります。
皮膚科を開いた先生が、皮膚科だけでは収益性が悪いので、美容皮膚科も診療科目としてあげることもあります。
その場合、近くに皮膚科や美容皮膚科がなく、近隣で需要が見込まれるのであれば、診療科目を複数持つことは当然のことと言えます。
複数の診療科目を持つクリニックの近くに開業する場合

反対に、開業予定地に複数の診療科目を掲げているクリニックがすでに存在していることもあります。先ほどの例では、内科クリニックが皮膚科も診療していました。「その近隣に、新しく皮膚科クリニックを専門としてクリニックを開業させたい」というケースもあります。
そういった場合は、近くに競合となるクリニックが存在するわけですから、「近くに開業しない方が良い」と考える先生は多いことでしょう。そして、「近隣で開業させて頂きます」とご挨拶に行ったら、嫌がられることと思います。
需要が見込まれるなら誰かが開業する
その地域の人口が増えていくことが予想され、先生ご自身の診療科目の患者さんも増えていくことが見込まれるのであれば、気にする必要はありません。もし先生が開業なさらないとしても、別の人が開業するでしょう。
この場合も、既存のクリニックよりも立地の良い場所で、なおかつミニマム開業で、固定費を最小限にして開業をすることをお勧めします。
先ほどもご説明しましたが、ミニマム開業では出来るだけ固定費を抑えながら、立地条件の良い場所でクリニックを開業させることです。特措法を活用することで、先生の手取り金額を最大3,000万円くらいにすることも可能です。
ミニマム開業の詳細は、「ミニマム開業とは?メリット・デメリット」をご覧ください。
近隣クリニックへのご挨拶はテナント契約後に

そして、近隣のクリニックにご挨拶をする場合は、テナント契約を済ませてから行うことです。テナント契約をしていないと、競合するクリニックの先生から開業場所を考え直すように言われることがあるからです。テナント契約をしてしまっていたら、すでに契約金を支払った後ですから、金銭的な損害が出るので、「開業場所を考え直して欲しい」とは言われなくなります。
当社のコンサルティング支援ではなく、他社で起きた話なのですが、都内にある内科クリニックで、アレルギー科も力を入れているクリニックがありました。その近くに、ある先生がアレルギー科専門のクリニックを開業しようとしたところ。テナント契約の前に既存の内科クリニックの先生にご挨拶に行った際に、「当院はアレルギー科に力を入れているから困る」と言われ、その地域の医師会からも考え直すように言われて、またテナントを探し直すはめになりました。
当時、その地域はアレルギー科専門のクリニックがない地域だったことと、既存のクリニックは患者さんの数が多くて待ち時間が長いというクレームがあったことから、もし最初の物件を契約してからご挨拶をしていたら、おそらく人気のあるクリニックになっていたことでしょう。
医師会に入り、検診などの業務を受託したい場合

クリニックを開業して医師会に入り、医師会で受託している検診などを行いたい場合があります。
その場合には、近隣のクリニックで同じ医師会に入っている先生からの反対があると開業場所を変えざるを得ない場合があります。
診療科目によって医師会への入会が必須となるような場合があります。例えば、内科や小児科、産婦人科などが主なものです。そういった診療科目であれば、医師会に入り、そこが受託している検診業務などを行うことができます。
医師会に入るメリットは、そうした検診業務などの受託ですから、先生方の専門科目によっては入会するメリットがあまりない場合もあります。例えば、皮膚科や精神科などは医師会に入るメリットがあまりないということで、医師会に入会しない先生が多いです。
以上、クリニックを開業させようとしたときに、自分と同じ診療科目のクリニックがすでに存在する場合は、そこで開業しても良いのか。開業する場合は、どのようにしたら良いのかを、解説いたしました。上記のケースは、あくまでも事例ですから先生の条件と会うかどうかわかりませんが、キチンと手順を踏んで開業準備を進めていけば、何ら問題にならにないことが多いです。
もし、開業したい場所に「すでに同じ診療科目がある」「患者さんが来てくれる場所に開業したい」というご心配があれば、当社にて開催している無料Webセミナー&相談会にご参加いただき、お気軽にご相談ください。実績豊富な開業コンサルタントが、丁寧にご説明いたします。